不死を買うのはどんな人たち? NetflixオリジナルSFドラマ『オルタード・カーボン』の世界を掘り下げる
Image: Netflix

不死を買うのはどんな人たち? NetflixオリジナルSFドラマ『オルタード・カーボン』の世界を掘り下げる

富豪たちの行ないは、暇を持て余した神々の遊びみたいなものです。

リチャード・モーガン原作の小説で、フィリップ・K・ディック賞を受賞した『オルタード・カーボン』。こちらが2月2日より、Netflixにて全10話のオリジナル・シリーズとして配信されます。

“『ブレードランナー』を超えるフューチャー・ノワールの傑作”と名高い本作ですが、そもそも『ブレードランナー』が近未来SF世界に多大な影響を与えたので、似ていても特に驚くことでもなかったりします。ですがこうした世界観が好きな人にはバチっとハマるでしょうね。

『オルタード・カーボン』はアンドロイドが電気羊の夢を見るのではなく、乗り換え可能な人体「スリーヴ」に、心や経験を記録したチップ「コーティカル・スタック」を移植し生き長らえる世界が描かれています。一見すると似た作品ですが、中身はけっこう別物なのです。

ということで、io9が『オルタード・カーボン』について詳しく掘り下げた考察を見てみましょう。以下ネタバレ注意でどうぞ。




io9のElderkinさんは、Netflixと制作会社のスカイダンス・プロダクションズを見学する機会に恵まれたそうです。

そこには日の目を見ない貧困層の吹き溜まりである、巨大なスラム街のセットが建造されていました。同じく超高層ビルの最上階にある、Psychasec(サイカセック)本社も造られており、それらのセットは複雑で、衣装は目的を持ち、デザイン性だけに特化しているわけではなく物語を象徴していたといいます。

それは「人間は永遠に生きるよう作られておらず、不死の生命は災いをもたらす」というメッセージを放つものだったそうな。


ストーリー


数世紀ぶりに目覚めた元特命外交部隊のタケシ・コヴァッチ(演:ウィル・ユン・リー)は、犯罪に加担し250年の間眠らされてきた男。ですが地上最も裕福な男ローレンス・バンクロフト(演:ジェームズ・ピュアフォイ)の恩赦により新たな肉体(演:ヨエル・キナマン)を与えられ、「自分の数日前の肉体」を殺害した人物を見つけるよう依頼されます。しかし捜査を進めるうち、コヴァッチはローレンスの過去を知ることとなるのです。

『オルタード・カーボン』は、バンクロフトのように財力を持った人々がどんどん次の肉体へとメモリーを入れ替え、不死の心を手に入れる世界が舞台。お金がなければバックアップしたメモリーだけが残り、それすら失うと真の死が訪れるのです。宗教上の理由でスタックにデータを保存することを拒む人々もいますが、ほとんどの人は生き長らえることを希望しています。


いくつかの疑問と説明

ac2
Image: Netflix

そうしたストーリーから、人類は不死という扉を開いても良いのか? 身体が劣化しなければ精神に何が起こるのか? 身体が仮のもので心がスタックとなると、もはや人間と呼べるのか? などの疑問が生じてきます。

脚本家のレータ・カログリディスは、以下のように説明してくれました。


デジタル的な不死は完全な人間ではなく、人工知能でもありません。それは人類の進化であり、人類を越えた段階に到達するのです。


意識をデジタル製品に閉じ込めるのは、心と身体を引き離すことになり、心のデジタル化は我々が理解している人類ではなくなります。生存のため身体に宿った先天的な本能を骨抜きにされてしまうのです。永遠に生きられる財力を持つ人々は、日々の生活の中でもがき苦しむことがないため、そんなことは気にしません。いくらかの人たちは、生存本能がどんな感覚だったのか、忘れているかもしれませんね。


これは一定の技術革新を越えた時、人類が何に成るのか、進化についてのヒントを語るものです。劇中で私たちは、我々自身を違うものとして描いています。何故なら生物学上、わたし達が誰なのかは、身体を乗り換えられる設定に激しく揺さぶられているからなのです。


物語がデジタル的な不死について、身体的、哲学的に板挟みな状態をどこまで掘り下げるかはまだわかりません。ですが、もし人間が死なずにいられたら、どのようになるのかが試される内容となるのでしょう。ひとつ判明しているのは、1890年の研究でまとめられたように人の性格は30歳を超えると変えられなくなるということ。以降、多くの研究もこの結果を支持しています。

カログリディスは、「数百年経ってもほとんどの人たちは同じ性格のままでしょう、とてつもなく寿命が延びても、古い習慣はなかなか失われないものです」と話しています。彼らはただいつもの生活を長々と続けていくだけなのです。一方バンクロフトのような大富豪は、ますます財力を蓄え、強大な力を保持し、好きなことをなんでもできるのです。彼女はこれについて、「生命の方舟であるあなたの身体は浮き沈みがあり、最後は死にます。ですが富豪たちの人生は上昇あるのみです」と話します。


大富豪たちが持つ選民意識


原作の中で、ベイ・シティー警察の警部補クリスティン・オルテガ(演:マルサ・ヒガレダ)のセリフで、このようなものがあります。


もしあなたが長く生きていたら、身の回りにはさまざまな物事が起こっていくわ。自分自身に感動しすぎるのよ。そして、ついには自分のことをだと考えるようになる。突然小さな人々、30〜40歳くらいかしらね、彼らなんてどうでも良くなるの。あなたは社会の隆盛をいくつも目の当たりにして、それらの外側に立っているかのような気分によるのよ。そしてすべてのことが、本当にどうでも良くなってしまうの。


彼ら(富豪たち)は別格。彼らは人間ではないわ。彼らは私たちが虫を扱うように、我々を扱うの。


作中では、富と不死は高レベルの階級主義を象徴しています。権力を持っているほど、下々の者たちなんて気にかけなくなるのです。実際彼らは人間を使い捨てのオモチャ程度にしか思っておらず、肉体的、感情的、性的な拷問をする存在としてお金で取引する商品として扱っています。痛みと快感は同意義だと思っている者もいます。これが『オルタード・カーボン』の核になっている部分でもあります。華美に飾り立てた富豪たちの裏側は、こうした醜い部分が隠れています。不死について、人間は何をして良いのか理解していないのです。

カログリディスはこれについて、「富豪たちは自らの肉体のみに価値を見出し、他人なんて気にもしないのです」と締めくくります。

ac3
Image: Netflix

富豪たちが生き続け、神のように人々の上に立ち続けたいという欲望が本作の骨格でもあります。白くて流れるような着物は神のようですが、実際にスラム街の遥か頂上にある雲の上に住んでいるのです。

プロダクション・デザイナーのキャリー・メイヤーいわく、「富豪たちには豪華な衣装を着せ、その他の人々とハッキリ違う2種類の衣装を仕立てた」とのこと。それに、Psychasecの本社は2010年代の一般的なSF映画のようにガラスとコンクリートで、バンクロフトの自宅はアール・デコ調にするなど、部分的に『ブレードランナー』のタイレル社を意識しているそうです。ですが富豪たちが魅せられるのは、「現代でも受け入れられる古くて豪華な時代のデザインなんですよ」とのこと。

バンクロフトの家にはが泳ぐ池があります。ですが、実は鯉には奴隷となった人間の意識が埋め込まれており、単なるお飾りとして泳いでいます。永遠に高次元の存在(飼い主)からの慈悲を懇願しながら、水の中をさまよい続けるという裏設定があるのだそうです。

かなりブッ飛んでいますが、劇中の富豪たちはこういうクレイジーな人種であるということを念頭に見るのが、『オルタード・カーボン』の楽しみ方となっているようです。

Netflixオリジナル・シリーズ『オルタード・カーボン』は、2月2日より配信予定。ぜひとも本記事で理解を深めてからご覧ください。



Image: Netflix
Source: INDEPENDENT

Beth Elderkin - Gizmodo io9[原文
岡本玄介

こちらもおすすめ