悪魔がかった全力疾走がインパクト大!
湯浅政明監督により、現代的かつスタイリッシュに生まれ変わった『デビルマン』ことNetflixオリジナル・シリーズ『DEVILMAN crybaby』。
1月5日より全世界配信が始まり、早速イッキ見してきたので一ファンとして感じたことを徒然なるままにレビューしたいと思います。
まずは特別映像『トラウマ的衝撃篇』をどうぞ。
原作の永井豪タッチで描かれる劇画調はほとんどありませんが、ストーリー展開はほぼオリジナルの通り。そこにスマートフォンやインターネットなど現代の科学技術を使用する登場人物らがおり、ちょこっと設定が変わった主役陣と、大幅に変わった脇役陣+新たな脇役キャラが何人かでてきます。
雑感+良いところ
明と美樹、そして本作でまったく違うキャラとなったミーコは陸上部に所属しています。人間が“走る”ということ、そして命のバトンを繋ごうと必死になるあたりに陸上のエッセンスが巧みに採り入れられています。根底にこれがテーマとして流れていることもあり、青春群像劇として新たな付加価値がついたように思いました(後に原作のミーコらしきデビルマンもチラっと登場)。
残虐なシーンもエロティックなシーンもありますが、絵のタッチが軽妙なのでサラっと見られます。ただし牧村美樹の弟、太郎(タレではない)の変わり果てた姿を見た父ノエルの葛藤シーンは、心を強く締め付けるものがありました。特に牧村家は敬虔なクリスチャンで博愛主義なので、いくら銃を手にしても、いくら悪魔が神の敵であっても、いざそれが息子となると悲しさと混乱、苦しみで正しい決断ができないのです。太郎自身も悪魔の本能に抗えず、申し訳なさで涙を浮かべるのがまたなんとも……。
1話毎に副題がありますが、主題にもある「crybaby」が最終話に付きます。これは明が自分ではなく他人のために泣く心の優しさを度々描写してきてからで、crybaby(泣き虫)とは明自身のことだった演出もニクいなと思います。
デビルマン軍団を集めたのは、ネット上でインフルエンサーでもある美樹が世界に発信した言葉だったのが現代的で自然でした。『デビルマン』初見の現代っ子でも、この辺はスンナリ受け入れられそうです。
またサイコジェニー、シレーヌとカイムが人間の姿で登場することで、主要な悪魔たちも予め人間界に潜入していたと自然に思わせる点も、原作を補完する感じで良かったかなと思います。ある意味、擬人化された体で楽しめたりもしますし?
女王蜂のアヴちゃんが歌う『デビルマンのうた』が流れるシーンがあり、また漫画とアニメ版『デビルマン』のヴィジュアルもちょこちょこ登場。リスペクトとしてオリジナルをちゃんと扱う姿勢も、オッサン世代に嬉しいところです。
了が乗る光岡オロチ、ミーコが住む河原町団地、彼女が育てるキンギョソウにもホラーな一面があることなど、知る人ぞ知る小ネタもグーでした。9話目には民衆11の役が湯浅政明監督で、12が音楽担当の牛尾憲輔さん、さらに永井豪ご本人が民衆13の役で声優に挑戦されているところにも注目ですが……ドレが誰だか当てるのは難しそうです。
もったいなかったところ
了が明をサバトに引き入れるシーンは軽かった! 原作では飛鳥博士が遺した石像が見せたヴィジョンで、明が地獄に付き合うと決心した大事な場面なのですが、現代版だとてそこがバッサリなくなっていたのは説得力に欠けました。
また原作ではジンメンの登場は恐怖と悲しみのシーンでしたが、今回のアレンジはさらに重くしようとしたために裏目に出たように感じました。ゲルマーもまた、牧村家の悲鳴が戦いのゴングだったのに、なくなっていたのは結構な期待ハズレでした。特に原作では明とシレーヌ双方がそれをジリジリと待つ印象的な場面だったから尚更です。
最終話でサタンとデビルマンの対決シーンが描かれた点も、原作を補完する形で良かったのですが……サタンが人間を滅ぼさんとする動機が端折られたのは非常にもったいなかったです。かつて神々と戦ったサタンが、自ら神と同じ穴のムジナになったことに気付き、反省する大事ところなんですけどね。
以上、原作を知っているだけに思ってしまうことが多々ありますが、アニメ版だってあの実写版だって、原作と全く同じではありませんもんね。気になる方は、ぜひともチェックしてみてください!
Image: (c) Go Nagai-Devilman Crybaby Project, (c) Netflix. All Rights Reserved. via YouTube
Source: YouTube(1, 2), DEVILMAN crybaby
(岡本玄介)