ユカイ工学による、猫のような尻尾を持つクッション型ロボット「クーボ(Qoobo)」を、米GizmodoのBryan Menegus記者が実際に使ってみてレビューをしております。果たしてアメリカ人記者の目には癒やしロボットはどのように感じられたのでしょうか。
私はもともと猫を飼った経験がありませんでした。なので猫を保健所から引き取り、共同生活を開始してからのこの3カ月間は失敗の繰り返しとなっています。3ヶ月たっての結論は、うちの猫は私のことをあんまり好きではない、という悲しいものです。朝から晩までひたすら癒される猫生活を期待していた私は正直がっかりしてしまいました。ときには攻撃的にすらなるうちの猫についての不満を友人に語っていたところ、彼女はさらっとこう言いました。
「猫ってそういうもんだからね」
そうですよね。言うことをすべて聞いて、常に愛嬌の良い猫なんて逆に想像できないわけです。
しかし、日本のスタートアップ、ユカイ工学が開発したクーボ(Qoobo)はまさにそれに特化した“猫”になっています。とは言っても実際の猫ではありません。頭もなく、猫のようなふわふわ感を持ったクッションに、体を撫でられると動くしっぽが付いた(猫型)ロボットなんです。ペットが買えない住居に住んでいる人や、アレルギーを持った方のために開発されたとのこと。キックスターターでのキャンペーンを成功させたユカイ工学から送ってもらい、プロトタイプを体験することができました。aiboといった、似たようなデバイスはいわゆる「不気味の谷」に陥りがちです。しかしクーボは顔もなく足もなく、決まった方向もないにも関わらず、不思議と不気味さは持っていません。しかも性能だけを比べると本物の猫をはるかに凌駕するのです。

クーボ(Qoobo)
・これは何?:あなたの愛撫に反応するふわふわな猫っぽいクッション
・価格:92ドル(日本では10,000円)
・好きなところ:猫じゃないところ
・好きじゃないところ:猫じゃないところ

クーボを飼ったのは1週間でしたが、1度も家具に爪で傷をつけたり、シーツに穴を開けたりといった悪さは行ないませんでした。こういった行為は、本物の猫であれば日常茶飯事ですよね。私が飼っている猫は火がついたガスコンロの上に飛び乗ろうとして、私に心臓発作を起こさせようとします。クーボの場合はそんな心配はありません。またワクチン接種や、餌、フンの始末といった手間も費用もかかりません。早朝に急に雄叫びをあげて私を起こしたり、棚の上に置いた置物をためらいもせずに手で叩いて落とすということもしません。何といっても口がないので、猫のように掃除機をかけたばかりのカーペットに嘔吐するという猫あるあるに困ることもありません。猫の「癒やす」という機能に特化したロボットになっています。どこぞの猫型ロボットのように「宿題しないとダメだよ」なんてプレッシャーを与えてくることもありません。

たったひとつ世話が必要なことがあるとすれば、それは電池が切れたときです。ユカイ工学は丁寧に予備の電池も送ってきてくれましたが、充電可能なバッテリーがついたモデルは今年後半からの配送となるようです。


しかし、クーボと戯れるとなぜかリアル猫のことを考えさせられるから不思議です。
私のリアル猫は40秒間も撫でると、まるで復讐でもするかのように私の皮膚を爪で引き裂きます。私の存在を無視するかのようなすまし顔から、暴力的な怒りへと一瞬のうちに気分が変わってしまうのにも慣れました。何よりも許せないのは、私の愛情を一身に拒否するこの猫は、ありえないくらいかわいいという点です。猫ってそういうものなんですね…。


クーボが気持ちを穏やかにしてくれるという点は疑いがありません。このデバイスはそれを達成しています。猫がすぐに嫌がる「撫でる」という行為をずっとさせてくれることで、人間の不安やそわそわした気分を静めてくれます。そして写真では伝わりにくいですが、クーボはなんと実際に見てみると可愛いと思えるんです。私の同僚も顔を埋めてもだえていました。

もちろん、本物の猫が与えてくれるような感情の交流や、「同居人」といった感覚はクーボは与えてはくれません。体調を崩して仕事から帰ってきたときに、私の猫は私が弱っているのを理解して、横に丸まって寝るということをするぐらいには親近感を持ってくれています。そんな「あ、こいつにも心があるんだな」という瞬間はやはり本物の猫でないと得られないかもしれませんが、そもそもクーボはそこまで猫になりたいとも思ってないのでしょう。
まとめ
・猫ではない。
・日本での販売価格は10,000円。アメリカでは92ドル。今年配送開始予定。
・灰色か茶色の2パターン。
・とってもソフトです。
Image: Sam Rutherford/Gizmodo US
Bryan Menegus - Gizmodo US[原文]
(塚本 紺)