涙なしには語れない悲恋羽。
今から20年ほど前、ニュージーランドのマナ島にシロカツオドリを呼ぼうと、その形をしたコンクリートが80体設置されました。しかしやって来たのはたったの1羽(2015年)。このオスのシオカツオドリは地元の人たちにナイジェルと名付けられ、以来彼はコンクリートで作られた仲間たちと数年間共に過ごしました。マナ島にシロカツオドリがやって来たのは40年ぶりということもあって、自然保護活動家はナイジェルの存在に大喜び。ところが、ナイジェルのとある行動が次第に人々の心を痛めるように…。
というのもナイジェル、孤独のあまりに鳥の形をしたコンクリートに求愛し始めたのです。鳥の求愛は積極的で情熱的で献身的なものが多いと言われていて、ナイジェルも実りなき恋のために海藻や泥、枝などをせっせとあつめて巣を作ってはコンクリを相手に愛を語りました。しかし、当然ながら反応はありません。決して叶うことのない一方通行の求愛は数年も続きました。そして先日、愛するコンクリートの鳥の横で一匹寂しく息を引き取っていたのです。
冷たくなったナイジェルを最初に発見したニュージーランド自然保護局のクリス・ベル隊員は、The Guardianに次のように語っています。
相当なストレスを感じていたと思います。孤独だったというだけならまだしも、相手からに何をしても全く反応が得られなかったのですから。とても奇妙なやりとりを数年間も経験していたんです。みんなナイジェルに感情移入していると思います。
ナイジェルの悲話には追い打ちをかけるような裏があります。実は、島には新たに3羽のシロカツオドリがやってきていたのです。ところがその鳥たちはコロニーの反対側に住み着いて、ナイジェルと関わることはありませんでした。
この3羽が現れた時、ベル隊員は地元紙プレスリーダーにこう話しています。「彼らにしてみればナイジェルは奇妙に見えるでしょう。コンクリートに求愛するかなり変わった性癖を持っていますからね。本当にかわいそう…。」
自然保護グループのFriends of Mana Island(マナ島の友人たち)はナイジェルの様子を捉えた動画を数年に渡って掲載してきました。
この動画はコンクリートの鳥の周りに偽のフンをペイントしているところです。そんなことをしたらナイジェルが余計に現実が見られなくなってしまう、と思われるかもしれませんが、これは他のシロカツオドリを呼ぼうとしての行動だそうです。
Friends of Mana Islandは、孤独な悲恋鳥ナイジェルの死を忍んでフェイスブックにポエムを掲載しました。
ナイジェルへ
マナアイランドに数年間住み
コンクリートの鳥に恋をした
巣を作り、とても尽くした
でもその島に足を運んだのは人だけ
私たちは草を生やし、塗装し、フンを撒いた
あなたが本物のパートナーを探せればいいと
あの3羽が来た時は、クリスマスの奇跡だと思った
でもあなたは逝ってしまった
安らかに眠って 孤独なナイジェル
島のボランティアはコンクリートの鳥の顔や体に塗装したりといった手入れを定期的に行なっていました。しかし、今回新たに3羽を呼び込んだのは、綺麗な塗装ではなく新しいスピーカーシステムのお陰だろうとのこと。
その新しいスピーカーをもっと早い段階で取り入れていたらこんなに苦しい思いをする鳥なんていなかったのに…。いや、それ以前にコンクリートの鳥なんて設置しなければ…なんて考えてしまいます。しかし、ナイジェルの死は決して単なる悲しい鳥の無駄死にで終わる話ではなく、希望に繋がっているんです。
というのも、シロカツオドリは他のシロカツオドリが以前に巣作りした場所に巣を作ることを好みます。ナイジェルは求愛のためにせっせと巣作りしていたので、今後、新しく来た3羽がマナ島で卵を産み、その雛達が成長したら再び島に戻ってくる可能性があります。
ニュージーランドのニュースアウトレットStuffによるとナイジェルの死体はマッセー大学に送られ、死因が詳しく調べられるそうです。堪え難い孤独や失恋が死因だったなんて結果が出ないといいのですが…。
Image: Gecko Lover/YouTube
Source: The Guardian, PressReader, Stuff
Matt Novak - Gizmodo US[原文]
(中川真知子)