【ネタバレ注意】Netflixドラマ『オルタード・カーボン』で描かれるSF世界の愛の形

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  • author 岡本玄介
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【ネタバレ注意】Netflixドラマ『オルタード・カーボン』で描かれるSF世界の愛の形
Image: Netflix/YouTube

男女間の恋愛、兄妹愛、家族愛。でもその姿形はさまざまです。

2月2日より配信が始まった、Netflixドラマ『オルタード・カーボン』。2384年のSF世界を舞台にしたミステリーで、ネット配信なだけあってバイオレンスもヌードもいっぱい登場します。

当然ヌードといえばベッドシーンもあるのですが、この作品で描かれる愛は単純に男女の関係というだけではなく、精神や記憶がデジタル保存された「コーティカル・スタック」の人格とどう愛し合うのか? はたまた使い捨てが可能な身体「スリーヴ」とどう愛し合うのか? など、SF世界ならではの特殊な愛が描かれています。

Video: Netflix/YouTube

『オルタード・カーボン』の主な登場人物:

・タケシ:本作の主人公
・オルテガ:女刑事
・ライカー:オルテガの元恋人
・クウェル:タケシが過去に恋をした相手
・レイリーン:タケシの妹
・ローレンス:タケシに依頼をした大富豪
・ミリアム:ローレンスの妻
・ヴァーノン:タケシの協力者



この映像で語られているのは、主に刑事のオルテガが主人公タケシ・コヴァッチの傷を手当する流れで彼に身体を許すシーン。ですがタケシは中身の人格(スタック)ことで、その身体(スリーヴ)はというとオルテガの元恋人、イライアス・ライカーのもの…。そのような、これまで見られなかった三角関係が生まれる決定的な場面なのです。

これまでタケシをテロリスト扱いしていたオルテガですが、接しているのはタケシなのかライカーなのか? 常に心の葛藤があったことと思います。本作を見終わって2周目でオルテガの視線や態度を改めて見ると、随所にライカーを想う乙女心が垣間見られるような…?

タケシは生まれ持ったスリーヴの時、反乱軍エンヴォイを率いるクウェルと恋に落ちました。スリーヴを入れ替えられるこの世界で、人種はほとんど意味を成さないものの、日系人のタケシと黒人のクウェルが結ばれる辺りにダイバーシティーを感じます。

しかしこの裏で、タケシの妹レイリーンは兄妹愛からクウェルに激しい嫉妬心を抱きます。兄妹は幼い頃に生き別れとなり、後に政府軍のタケシvs.ヤクザの手下レイリーンという敵対関係で衝撃の再会を果たしたのち、双方の味方を皆殺しにしてふたりで逃げ延びてきた強い絆があります。だからこそ、レイリーンはクウェルに兄を奪われ、また生き別れになることに恐怖したのです。

一方、この世界で人類を牛耳るメト(大富豪)たちもまた、さまざまな愛を表現するシーンがあります。まずタケシに自分自身の殺人事件捜査を依頼したローレンス。彼は何百年も連れ添った愛妻ミリアムとは身体の関係はなくなってしまい、売春婦らを合意の上で殴り殺すことで性的快楽を得る倒錯的な愛を求めるようになりました。ちなみに殺された売春婦らは、より良いスリーヴが与えられて蘇ることを条件に、殺されることを了承しています。

ミリアムはというと最上級のカスタム・スリーヴを持っており、身体から出る特殊なフェロモンで相手と自分が感じる快楽を共有できるようになっています。彼女は夫も知らない孤島を保有しており、タケシに「私の何体ものクローンたちとずっと快楽を貪って暮らさないか?」と提案。彼女は愛より快楽の海に溺れるのが好きなのです。

しかし、ローレンスとミリアム夫妻は子供たちに向ける愛情も持ち合わせています。それはもう目に入れても痛くないほどの溺愛ようですよ。また、息子のひとりはおそらく同性愛者で、娘はのひとりはたびたび母のクローン・スリーヴを拝借して自宅のパーティーに招かれた男性と事に及んでいたりと、ダイバーシティーが前面に押し出されています。

家族愛のユニークな描写もあります。亡きオルテガの祖母のスタックが祝日に凶悪犯罪者(この俳優さんは全部で3人の人格を熱演する怪優!)のスリーヴに入れられ一時的に家族たちと楽しい一夜を過ごすのですが、子供達は無垢に祖母との再会を喜ぶ一方、信心深いオルテガの祖母はこの「生き返り」行為は宗教の理念に反していると批判。祖母はこののち「来年は再生して欲しくない」とオルテガに告白し、彼女のスタックはオルテガによってお守りよろしく大事に保管されることになります。

一方タケシの捜査を手助けすることになるヴァーノン・エリオットの家族にはさらに複雑な状況が。彼の一人娘、リジーは売春婦となり、無残に殺されていました。彼女は殺された時の恐怖の瞬間から抜け出せないまま、スタックだけが残されていたのですが、いろいろあって人工スリーヴの体を手に入れます。そしてヴァーノンの妻エヴァは、凄腕ハッカーだったことで警察に30年の刑を食らっていましたが、のちに中年の白人男性のスリーヴに入れられて釈放されます。こうして奇妙のスリーヴの親子で3人は再会。ですが見た目は関係なく、家族の絆とタケシへの恩で捜査を一丸とサポートしていました。


ということで、『オルタード・カーボン』ならではの多種多様な愛の表現が出てきますよ。人を愛することとは何なのか? 今一度問いかけてくる側面もまた、本作の魅力なのだと思います。

「『ブレードランナー』をも超えるフューチャー・ノワールの傑作」と名高い『オルタード・カーボン』は現在Netflixで配信中です。ぜひともご覧ください!


Image: Netflix/YouTube
Source: Netflix/YouTube

岡本玄介