色気や恐怖で国民を煽ります。
第一次世界大戦にアメリカが関わったのは20カ月ほど。緊張感の漂う戦時下で、国はさまざまな方法を用いて国民を鼓舞したのでした。
その中のひとつがアートによるもの。当時はいくつものプロパガンダ用ポスターが制作されていたのですが…今の感覚からするとクレイジーなものばかりなのです。
コネチカット州グリニッジにある、ブルース美術館にて展示されているポスターをいくつか見てみましょう。

展覧会の名称は「Patriotic Persuasion: American Posters of the First World War」。訳すと「愛国的な信念:最初の世界大戦でのアメリカのポスター」になります。これらを寄贈したのは、ビヴァリーとジョン・W・ワトリング三世ご夫婦です。
ポスターのおもな主張は「国民なら戦うか軍事公債を買ってアメリカ軍を応援しよう」。これで軍事費を国民から借り、あとで利子を付けて返しますよという内容の事業だったのです。

学芸員のスミスさんとグルンバーグさんは「当時これらのポスターは、愛国心とアメリカ合衆国の広告を合わせたものだったのだと思います。いろんな意味で、当時の政治的宣伝活動だったのでしょうね」と話しています。そして「今日のメディア環境を考えると、これらは恐ろしいほど関連しています」とも。

強い口調だったり、美しい女性が軍服を着ていたりと、さまざまな心理テクニックを使っているようです。


その当時、公債を買わない人々は「非国民」と指さされ、戦争に参加しない男性は「男にあらず」と蔑まされたのでした。

こちらは自由の女神像が首チョンパにされ、頭部が地に転がっています。空にはドイツ軍の複葉機が描かれ、国民の恐怖を煽ったのでした。下の一枚も恐怖を煽るポスターです。

どれも古風なポスターですが、ものによっては強烈なメッセージを打ち出していますよね。恐怖で心情を揺さぶるような広告は現在も多く見られ、スミスさんは「特にネット世界で意図的に人々をミスガイドしようとしたり、フェイク・ニュースで槍玉に挙げたりする様子に共通性が見られる」と話しています。

これらのポスターは、展示のホンの一部です。展覧会は6月3日までですが、5月20日まではソビエト時代の冷戦時に作られたアートも公開されます。もしも近くにご用があれば、ぜひとも立ち寄ってみてください。
Image: Bruce Museum
Source: Bruce Museum
George Dvorsky - Gizmodo US[原文]
(岡本玄介)