Facebookの新しい顔認識って怖いの?便利なの?

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  • author 福田ミホ
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Facebookの新しい顔認識って怖いの?便利なの?
Image: Gizmodo US

友だちがポストした写真にタグが付いてなくても、自分を認識…っていいんだか悪いんだか。

Facebookが新機能を出したと聞くと、つい次はどのプライバシーが脅かされるのか…と脊髄反射で不安になる人もいるかと思います。が、最近Facebookから来た通知は、良いニュースだか悪いニュースだか一見するとよくわかりません。

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Image: Facebook

Facebookはこの機能を2017年12月に発表し、それ以降徐々に各ユーザーに適用しています。上記の新しい顔認識機能にオプトイン(編注:個人情報などの提供を許諾すること)すると、自分が写っている写真を他人がFacebookにポストしたとき、自分がタグ付けされていなくても通知があります。これまでは、あくまで自分がタグ付けされているときにのみ通知が来てました。

顔認識機能の仕組みの詳細についてFacebookに直接説明を求めてみたところ、ふたつのブログポストを見るように言われました。ひとつは顔認識機能の発表のポスト、もうひとつは顔認識に関するプライバシーについてのポスト日本語版)です。ここにはいろんなことが詳細に書かれていますが、まだわからないこともたくさんあります。たとえば、Facebookは我々の顔を具体的にどうしようとしてるのか、みたいなことです。

顔認識の仕組み

Facebookに写真をアップロードすると、機械学習システムがそこに写った顔を検知・測定します。人間の顔はみんな違うので、たとえば鼻梁、まぶた、唇の幅といったものもそれぞれみんな違います。簡単に言うと、これらのサイズのデータをみんな一緒にすると、指紋ならぬ「顔紋」とでも言うべきものができます。そしてみんな違うので、顔紋は人物の特定に使えます。

なのでFacebookに写真をアップロードすると、Facebookはそこに写った人物の顔のパーツを測定し、データベースに入っている人物の顔紋と照合して友だちを検知し、その人をタグ付けするかどうか聞いてきます。Facebookユーザーは20億人もいるので、顔紋もたくさん登録されています。

我々にどんなメリットがあるの?

Facebookはユーザーの合意の元、ユーザーがタグ付けされていなかった写真に自動でタグ付けが可能です。また、仮に赤の他人が自分の顔をプロフィールとしてアップロードした場合、なりすましとして警告してくれたりもします。また目の不自由な人には、顔認識機能と代替テキストツールを併用することで、Facebookの写真に誰が写っているのかを教えてくれます。そんなわけで顔認識には、たしかに個人の認識とかなりすまし防止といったメリットがあります。

便利そう。どうすれば使えるの?

顔認識機能はまだ全ユーザーには適用されてなくて、まだ対応していない地域もありますが、まずは自分が使えるのかどうかをチェックする方法があります。Facebookの右上の▼のドロップダウンメニューから「設定」を選ぶと、「顔認識機能」のセクションが出てくるので、そこをクリックして「Facebookで写真や動画による顔認識を行いますか?」に対し「はい」を選べばOKです。

気持ち悪いから使いたくない。どうやってオフにするの?

Facebookはユーザーに対し、この顔認識がデフォルトではオンになってはいないことを繰り返し念押ししています。また仮にオンにしたとしても、いつでもオプトアウト(編注:個人情報の提供をやめること)できます。オプトアウトのやり方は、この上に書いたのと同じ手順で「はい」を「いいえ」にするだけです。

ただこのあたりから、はっきりしないことが出てきます。というのは、顔認識機能からオプトアウトすることはできるんですが、そもそも顔を測定されてデータとしてサーバに残すこと自体からオプトアウトできるかどうかははっきりしていないんです。

Facebookによれば、顔認識機能がオフにされたとき、顔の「テンプレートは削除」されるそうです。でもFacebookの内部で顔紋のデータは保持されるのかとか、ユーザーに通知しないだけで実際はその人が写っている写真を認識し続けるのか、といったことはわかりません。

細かいことのように見えるかもしれませんが、これらはFacebookに関して大きな課題となってきました。2012年にはEUで、Facebookがユーザーに対し友だちが写っている写真に友だちをタグ付けするよう提案する機能が問題視されました。その結果Facebookは、ヨーロッパではユーザーの顔テンプレートを使わないことに合意しています。また米国イリノイ州では、この「タグ提案」が同州の生体認証に関わる法律「Biometric Information Privacy Act」(BIPA)を侵害しているとする訴訟が起こされています。Facebookはその訴えが無効だと主張していたんですが、今週裁判所はFacebookの主張を否定し、訴訟は継続となりました。

我々が理解する限りでは、ユーザーが顔認識機能にオプトインしない場合でも、Facebookは顔紋を持ち続け、タグ付けプロセスの中で使い続けます。このことを裏付けるように、Facebookの新機能は「現在顔認識技術を提供していない」カナダやヨーロッパでは使えなくなっています。

Facebookはどこまでできる?

こういう細かいことが大事なのは、Facebookは何億という人を写真から特定する能力を持っていて、それはユーザー側が予期していない場合まで対象とするからです。米GizmodoのKashmir Hill記者が懸念したように、偶然誰かの写真の背景に写り込んでしまった場合でも特定されてしまうんでしょうか? または一緒にいる人に基いて、個人を推測するんでしょうか? Facebookは、そんな形では顔認識技術を使わないと言ってますが、我々は彼らが「やろうと思えばできる」ってことは意識しておいた方がいいと思います。

顔をめぐる

生体データはこれからますます重要になり、より多くの人がそれを保護しようと動いています。上に書いたように、Facebookはイリノイ州の生体情報プライバシー法(BIPA)を侵害したとして訴えられています。原告の主張は、Facebookが顔紋データを幅広く集めていること自体がBIPA違反だというものです。Facebookは顔のデータをたくさん集めていることは認めつつ、それ自体は誰にも損害を与えていないとしています。Facebookはこの主張を根拠に原告の主張の無効を求めましたが、その訴えは退けられました。この裁判でFacebookが敗訴した場合、Facebookは原告ひとりあたり最大5000ドル(約53万円)を支払わされる可能性があります。

イリノイ州がBIPAを成立させた2008年以降、他のいくつかの州も続いていて、テキサス州やワシントン州では同様の法律が成立しています。今後ユーザーが自分の顔を守れる場所は、こういう州や、他のデジタルプライバシーに関する法律のある国だけになるのかもしれません。

顔データの収集はFacebook以外のところでも広がっていき、空港での本人確認ハンバーガーショップのポイントプログラムといったあらゆることに使われていきます。Adam Harveyはこう指摘していました。

この状況のあやうさについて、画像や映像に関するプライバシー問題を提起するアーティストのAdam Harveyは「どんな情報でもセキュリティ目的に使うようになると、その情報を他人と共有することの安全性は低下します」と指摘しています。「たとえば母親の旧姓をオンラインで共有するのは、良い考えではありません。同様にFacebookの顔認識機能によって、オンラインで顔を共有することは、今まで以上にセキュリティ上問題になってしまいます」



Image: Gizmodo US, Facebook
Source: Facebook (1, 2, 3, 4, 5), New York Times, Illionois General Assembly

Sidney Fussell - Gizmodo US[原文
(福田ミホ)