分かってますとも、ご冥福は祈りません。でもご挨拶だけさせてください。
本日2018年3月14日、スティーブン・ホーキング博士が亡くなりました。多くの苦難を乗り越えながら目的のために突き進むその姿勢は、多く人を鼓舞しました。
今日はそんな彼の生涯を振り返りながら、彼がもたらしてくれたことを思い出しましょう。
死を意識してなお前向きに生きる姿は、彼の残してくれた心の遺産
ホーキングは大学院時代に筋萎縮性側索硬化症(ALS)の診断を受けました。ALSは身体中の筋肉が萎縮し死に至ってしまう恐ろしい難病で、いまだに有効な治療法が確立していません。当時大学で天才として知られていた彼でも、余命2年の宣告を受け鬱に…。
しかしその後この余命宣告は誤っていたことが判明し、ホーキングは50年以上生き続けました。存命中、彼は数々の名言を残しています。
・私は未来に雲がかかっていることを知ってから、不思議と以前より「生」を謳歌していました。研究が進み始めたんです
・死は怖くないが、死に急いでもいない。まだまだやっておきたいことがたくさんあるんだ
・私はラッキーだ。なぜなら脳は筋肉で出来ていないから
ホーキングの、障害を負いながらも「ラッキー」と言ってのける強さとユーモアは多くの人に響いたと思います。死後の世界を信じていない彼でしたが、彼の精神には死後も万人に受け継がれて生き続けて欲しいです。そのために、彼の生き様をここに記しました。
賢者の使命を全力で実行した偉人。重要な情報を一般に
ホーキング博士が偉大な科学者だということは誰もが認めるところです。特異点定理、量子重力理論とホーキング放射、時間順序保護仮説と、科学界に多大なる貢献を果たしています。しかし、彼を本当に偉人たらしめるのはその素晴らしい知見を一般向けに発信し続けたところです。
ホーキングの人気著書の一つに、『ホーキング、宇宙を語る』があります。ここには現代の理論的宇宙論が一般人にもわかるようにまとめられていて、20年間で1,000万部以上手にされています。彼は肺炎で瀕死の状態だったにも関わらず、この本を執筆しました。その理由をこう述べています。
科学者、中でも宇宙論に携わる者は、自分の研究を説明することが重要だと信じています。なぜなら、これはかつて宗教が答えていた問いの多くに、解を提示できるからです。
宇宙論が人の宗教観をゆるがす発見をしていたなんて、彼のこの本がなければそうそう一般に浸透していなかったでしょう。これは勝手な推測でしかありませんが、彼は注目の浴びやすい「車椅子の天才物理学者」というポジションを最大限に活かしていたのだと思います。
ホーキングは他にもスーパーAIや宇宙人接触に対する警鐘や、太陽系外探査の支援を行なっています。ヒーローのセリフに「大きな力には大きな責任が伴う」といったものがありますが、ホーキングはそれを知力で実行していたのです。
ホーキングさん。死後の世界を信じていないあなたに、ご冥福を祈ることも、話しかけることも失礼にあたるのでしょう。でも最後に、一言だけご挨拶させてください。ありがとう、そしてさようなら!
Image: Sion Touhig/Getty
Source: Wikipedia (1, 2, 3), The Guardian
(西谷茂リチャード)