マーベルの映画シリーズは、はじまりから10週年を迎えました。そして今回公開される最新作は、これまでの作品で起こった出来事の多くを影から操ってきたサノスが、ついにヒーローたちの前に姿を現す『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』です。
そこで今回は、かつて『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』や『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』を手がけ、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のメガホンを取ったルッソ兄弟の兄、アンソニー・ルッソ監督にインタビューしてきました!
ハリウッド長編映画では初となる全編IMAXでの撮影や、マーベルの他シリーズ監督との関係など、たくさん聞いてきましたよ。
──サノスがインフィニティ・ストーンを集める『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(以下、インフィニティ・ウォー)』の壮大な展開は、かなり前から計画されていたのでしょうか?
アンソニー・ルッソ(以下、ルッソ):プロデューサーのケヴィン・ファイギは、あらかじめ今回の『インフィニティ・ウォー』の形を決めていたのではないと思います。おそらく彼はいくつかの展開を考えていて、それぞれの映画で少しずつ物語を進めていきながら今の形に至ったのでしょう。
──そんな『インフィニティ・ウォー』の監督をオファーされたのはいつ頃ですか?
ルッソ:私たちが監督した『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(以下、シビル・ウォー)』の仕上げをしている頃です。ある程度できあがったバージョンをマーベル側が見て、今回の作品も私たちに任せることにしたようです。
まず映画の出来が気に入ったというのもあると思いますが、なにより『シビル・ウォー』の展開がトニー・スタークとスティーブ・ロジャースが仲違いしてアベンジャーズが解散するという、『インフィニティ・ウォー』への伏線となる話が多い映画だったので、つづけて私たちに任せるというのが自然と考えたのもあるでしょう。
私たちも『シビル・ウォー』が完成する頃には、『インフィニティ・ウォー』の展開のイメージが浮かんでいたので、今回のオファーはちょうどよい流れだったと思います。

──つまり、最近のいくつかのマーベルの映画の完成版を観る前に『インフィニティ・ウォー』を撮り始めたということですね。複数のキャラクターを未確認のまま映画制作を進めるのは大変じゃありませんでしたか?
ルッソ:この映画は、これまでの作品で起こったことが盛り込まれています。なんといっても、ファンはしっかり今までのストーリーを理解していますしね。
しかし、撮影中に完成していないほかの映画を把握することはできません。今回の場合、『マイティ・ソー/ラグナロク』と『ブラックパンサー』の完成版は観ることなく作り始めることになりました。
なので、この2作品を撮っていたタイカ・ワイティティ監督やライアン・クーグラー監督とは、お互いの映画に関して密に連絡を取りながら映画を作っていきましたね。あと、『インフィニティ・ウォー』の次の映画である『アントマン&ワスプ』のペイトン・リード監督とも同じようにやりとりしました。
各映画の繋がりを保っていくのはたしかに難しいものでしたが、楽しくもありました。普通の制作現場で、こんな風にほかの映画の監督と頻繁にやり取りすることはありませんから。監督同士で映画のアイディアを交換することができるのも、マーベルの映画制作の面白いところです。
──撮影現場には、マーベルの映画を手がけてきた何人かの監督が直接来たそうですね。彼らはどういった形で今回の映画に参加したのですか?
ルッソ:私たち監督は、ほかの監督のセットを訪れることがありますが、それは何が起こっているかを確認し、自分の映画でどう扱うかを考えるために行なっていることです。
マーベルは個別の映画をそれぞれ尊重しています。たとえ繋がりがあっても、ひとつの映画が別作品の展開を左右しすぎないようにするという素晴らしい方針があるため、それぞれの映画で好きなことができるんです。
もちろん、作品をまたいだストーリーの繋がりは大事ですが、単独の映画としての独自性も大切なので、非常にデリケートなバランスを保っています。それらを重視しているからこそ、マーベルの映画は常に新鮮なのだと思います。
──じゃあ、たとえばスコット・デリクソン監督が撮影を見に来て「俺のドクター・ストレンジはそんなこと言わないぞ!」みたいな文句が飛んでくるみたいなことはないのですか?
ルッソ:みんなお互いをリスペクトしているので、そんなことは起きませんよ(笑)。
──今作はハリウッド長編映画としては初の全編IMAXカメラ撮影での作品となりましたが、撮影はいかがでしたか?
ルッソ:私たちはカメラを手持ちするなど、とにかくよく動かして撮影します。ですが、これまでのIMAXのカメラは巨大で重いものだったので、そんなスタイルでの撮影は困難でした。しかし、今のIMAXカメラはかなり進化して、取り回しの面で普通のカメラとあまり変わらなくなったので、思い通りの撮影ができるようになりました。
また今回の映画は、企画自体はもちろん、映像面のスケールがとにかく大きいものでした。そのすべてを通常よりも大きいIMAXのフレームに収められるというのは、観客の没入感も向上できるので魅力的でしたね。
今回は巨大なヴィランであるサノスがトニー・スタークのような普通の人間サイズのキャラクターと並ぶシーンがたくさんあるので、その面でもスクリーンが縦に大きいというのはプラスでしたよ(笑)。

──兄弟で監督をすることになったきっかけは何だったのでしょうか?
ルッソ:よく「自分も兄弟と仕事ができたらなぁ」とか「兄弟で仕事なんて絶対にムリ」みたいなことを言われるんですが、自分にとっては非常に自然な流れでした。ふたりとも映画やコミックが大好きで、映画を「観る」から「作る」に変わったときも、チームとしてやることにしたというだけなんです。
──兄弟で『ブル〜ス一家は大暴走!』や『コミ・カレ!!』といった人気のコメディドラマを手がけてきていますが、今までの作品で培ったことは、『インフィニティ・ウォー』でどのように活かされていますか?
ルッソ:そもそも私たちはインディペンデント映画でこの業界に入りました。そのときは、ほんの数人で映画を作ったので、完成までに3年もかかったんです。撮影や脚本はもちろん、編集などいろんなことを自分たちでやらなければならず、結果として映画作りの技のすべてを学ぶことができました。
私たちは、映画作りとは木工のような工芸だととらえています。木工職人が机をたくさん作ってその腕を磨くように、映画もたくさん作れば作るほどうまくなっていくのです。そんな具合に、低予算で映画を作ることでたくさんの技術を学ぶことができたのは、かなりいい経験でした。
そこから私たちはTVドラマ制作に移りました。ドラマはシリーズ構成なので、何シーズンもお話を続けたり、たくさんのキャラクターを登場させる必要がありました。そういった経験が、まさにキャラクターがたくさん登場してストーリーが続いていくマーベルの映画制作で役立ちましたね。

大規模な映画を作るうえで、監督にとって一番役に立ったのが低予算映画とTVドラマだったとは…。映画の規模が大きくなると、そのぶんいろいろ難しいことも増えるのかもしれませんが、どうやって話を作り、持てるリソースからどのように見せていくかを考えるという点では、同じ映画作りであることに変わりはないのです。
コメディドラマでの経験がそのような形で活きているというのは面白いし、なによりそういった経歴を持つ監督に『ウィンター・ソルジャー』を任せて大成功に導いたマーベルもすごい。
はたしてルッソ兄弟が今後の『アベンジャーズ4(仮題)』以降でマーベルに関わっていくかは、まだわかりませんが、とにかくこれからの作品が楽しみですね……!
映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、2018年4月27日(金)公開です。
Image: ©Marvel Studios 2018 All rights reserved.
Source: 映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』公式サイト
(傭兵ペンギン)