謎につつまれたイーロン・マスクの「テレパシー技術」スタートアップ、動物実験開始か

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  • author 塚本 紺
謎につつまれたイーロン・マスクの「テレパシー技術」スタートアップ、動物実験開始か
Image: Chelsea Beck/Gizmodo US

ネズミの脳にシリコン粒子がふりかけられる...。

ちょうど1年ほど前にイーロン・マスクが発表した新しいスタートアップ「ニューラリンク」を覚えてますでしょうか。コンピューターと脳をつなげる、というなんともマスクらしい飛び抜けた発想なのですが、ローンチ以来彼はあまりこのスタートアップについて語っていません。

2017年4月のインタビューにおいては、脳の疾患を治療することや、次の10年以内には神経インプラントを用いてテレパシーを可能にするという構想について語っています。しかし米Gizmodoが入手した情報によると、ニューラリンクは動物実験を開始した、もしくは開始する段階まで進んでいるようです。これについてニューラリンクからはコメントを得られず、マスク氏も米Gizmodoからの取材リクエストには応えてはもらえませんでした。

PRを避けている、動物実験を行なうプロジェクトはニューラリンクだけではありません。同じくFacebook のマーク・ザッカーバーグ氏も脳とコンピューターをつなぐプロジェクトに関わっていますが、それについてほとんど語っていません。動物実験はどこの国でも議論を呼びますから、まだプロジェクトの成果を見せられない段階で静かに身を潜めるのは戦略的なものでしょう。

脳とコンピュータをつなぐ技術開発には常に動物実験が含まれてきました。1970年初頭にはイェール大学の研究員であるJose Delgado氏が、猫、猿、そして人間に脳のインプラントを埋め込む実験を行なっています。1980年後半から1990年初頭には脳とコンピューターのインターフェースという研究分野はより広範に研究されるようになりました。人間の脳とコンピュータをつなぐことが目標なのであれば、その安全性を動物で実験して確かめることは必要不可欠です

ニューラリンクのデニム色のオフィスビルは、サンフランシスコのミッション地区に位置しており、イーロン・マスク関連の別のベンチャー、OpenAIもこの建物にオフィスを構えています。駐車場には当然のように、テスラ車がたくさん駐車されています。

この建物のふたつのフロアが、ニューラリンクの研究スペースになるという計画でした。2017年2月、まだ会社が公式にローンチする前にサンフランシスコ都市計画課に研究スペースのリノベーションの計画が提出されています。米Gizmodoによって入手された、都市計画課宛の文章によるとニューラリンクの CEO・CFOであるJared Birchall氏がリノベーションの詳細を次のように記しています。

テナントは二階部分を電子、化学、機械・素材エンジニアリング、コンピューター科学といった複数のフィールドにまたがる開発部門の作業所として使う予定です。そこには小さな機械作業所も付属します。それを使って生体機械のデバイスや3Dプリント、CNC(コンピューター数値制御)フライス盤などの修正などを行ないます。この機械作業所は付属的な目的となります。


テナントは三階部分を神経インターフェースの実験と開発のための生物学リサーチ研究所として使う予定です。これに付属してテナントは微細加工デバイス集積のためのクリーンルーム、生体内検査のための小型手術室、そしてげっ歯類を保管するための小さな部屋を必要とします。これは CNC/NIH動物生体セーフティ研究所レベル1に準拠します。げっ歯類の使用は動物保護法の対象外となります。クリーンルーム、手術室、げっ歯類保管はこの研究所の補助的な目的となります。

ここからわかるのはニューラリンクはインプラントを機械作業場で開発し、それを三階で保管されるげっ歯類でテストするというイメージです。ニューラリンクは現在市場に出回っているインプラントよりも脳に対するダメージが低いものを開発しようとしているようです。これまで出てきている(少ない)情報によると、彼らが検討しているオプションのひとつには、ニューラルダストと呼ばれるものがあるようです。これは小さなシリコンの粒子が脳の上に散布され、超音波を使ってモニタリングをし、脳の中で何が起きているか、情報を得るという仕組みです。

2017年4月にはニューラリンクは研究用の動物を保管・使用する許可をカリフォルニア州の公衆衛生局に申請しました。げっ歯類を使った実験は連邦規模では規制がされていませんが、カリフォルニア州では許可を得る必要があります。

カリフォルニア公衆衛生課の広報担当者によると、その年の5月にニューラリンクにこの許可証が送られたとのこと。公衆衛生課が必要だと判断した場合は研究施設に立ち入って検査をすることもできますが、ニューラリンクに関しては申請書だけに基づいて許可が与えられたようです。

ニューラリンクに与えられた許可は今年4月に期限が切れるそうですが、3月の段階ではまだ当局は更新の申請書を受け取っていないとのこと。米Gizmodoが入手したEメールによると、ニューラリンクと契約していた建築家はサンフランシスコ市外の別の場所にこの施設を作ることを検討していると都市計画課に伝えています。

カリフォルニア州の公衆衛生課によるとニューラリンク、CEO・CFOのBirchall、どちらにも動物実験の許可を与えていないということですので、既にニューラリンクがサンフランシスコの外に新しい研究施設の場所を見つけたとしても、カリフォルニア州内ではないということになります。国レベルではげっ歯類、鳥類もしくは冷血動物を使った動物実験に関してはモニタリングを行なっていません。これよりも大きい温血動物における動物実験の許可を受けている組織・団体のリストは米国農務省によっ管理されていますが、ニューラリンクは載っていません。

ニューラリンクの共同ファウンダーたちの経歴には動物実験を必要とする分野が並んでおり、彼らが動物実験を行なっていることはほぼ確実でしょう。

8月には、アメリカの人材登録サイトであるLinkedIn上で、ひとりの女性がニューラリンクのサンフランシスコ・オフィスにおいて外科手術技術士として雇用された、とアップデートしていることが発見されました。彼女は胃腸の外科手術をネズミ、ウサギ、猫、そして豚といった動物モデルに行なった経験があることがプロフィールに書かれていました。「現在イーロン・マスクによるスタートアップ、ニューラリンクで外科手術の技術士として勤務中」と明記されていたのですが、後にニューラリンクとの関連性は削除されています。また米Gizmodoは彼女にコメントを求めましたが反応はありませんでした。

ニューラリンクが2017年11月に出した求人募集も内部を推測できる情報が含まれています。サンフランシスコにおける建築プロジェクトのエンジニア、そして研究施設マネージャーの仕事です。上記の文章に書かれていたクリーンルームや機械作業場を管理することなどが業務内容に含まれていました。

ただでさえ地価の高いサンフランシスコにこのような研究施設を建築する点にニューラリンクの資本の大きさが想像できます。特に情報の流出を防ぐためには研究者やマネージャーはもちろん、施設などに第三者を使えません。そうなると全て自社で用意することになります。さらなるコスト増です。

まだまだしばらくは秘密のベールに覆われた状態が続きそうですが、どこかの段階で豚や羊といったさらに大きな動物を使っての実験に移行する必要が出てくるのは必至です。そうなると食品医薬局(FDA)の承認も必要となるため、少しずつ情報は外に出てくるものと思われます。



Image: Gizmodo US

Kate Conger - Gizmodo US[原文
(塚本 紺)

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