フェイクニュースはなくしたいけど、どうしようもないかもしれない...

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  • author そうこ
フェイクニュースはなくしたいけど、どうしようもないかもしれない...
Image: Chelsea Beck

人間だもの。

フェイクニュース。それは、現代で大きな力を持つSNS企業が抱える悩みのタネ。だけじゃくて、今や社会全体の不安のタネ。これまでは「ちょっとした問題」レベルだと思ってたけど、あっと言う間に手がつけられなくなり、今ではそれでお金を稼ぐ人もいる今日この頃。

だからといってフェイクニュースを見ぬこう、排除しよう、といくら頑張ってみても、限界がありますよね…。

そんな状況を打開、とまではいかずとも、少なくとも理解しようと立ち上がったのが、マサチューセッツ工科大学メディアラボ研究チーム。「フェイクニュースの存在の裏にある悪は誰なのか」を調べたところ、残念なことにどうにもならない壁にぶち当たりました。フェイクニュースは人間のサガの産物だったのです。

Twitter上でフェイクニュースを大規模リサーチ

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Image: Shutterstock

3月にメディアラボが公開した研究論文は、ネット上に広まるフェイクニュースを長期間にわたって追ったかなり大規模なもの。これまでは、ソーシャルネットワークでの個々の噂やフェイクニュースの広がりかたを研究したものはあれど、多岐にわたるジャンルにおいて、フェイクニュースと本当のニュースの広まりかたに違いはあるのか、そしてあるならばどう違うのか、という研究をしたものはほとんどありませんでした。

そこで、Soroush Vosoughi氏率いる研究チームは、300万人によって450万回以上ツイートされた12万6000件の噂を調査し、ニュースの拡散の仕方を深く掘り下げて調べました。

なお、研究チームは「フェイクニュース」ではなく、True(真実)の対義語であるFalse(誤った)という意味の「フォルスニュース」という言葉を使っています。米Gizmodoの取材にて、その理由を「フェイクニュースという言葉は、人によって異なる意味で捉えられるから」と回答しました。というわけで、以下、フォルスニュースとします。

チームはTwitterで拡散された噂の中から、ファクトチェックされたものを、数学的モデルなどの様々なアプローチから分析しました。プラットフォームとしてTwitterを選んだことに対して、論文共同著者であるDeb Roy氏は、Facebookと異なり、公にデータが公開されていること、MITラボと数年にわたって良好な関係にあることを挙げています。

研究ではそれぞれの噂を仕分けていて、その分類はたとえばこんな感じです。

ユーザーが、あるトピックについて〇〇であると断言したツイート(テキスト、写真、ネット記事へのリンクなど含む)を投稿したとしましょう。これを「噂」とします。

噂Aは、10人の個別のユーザーがそれぞれツイートしましたが、どれもリツイートはされませんでした。この場合、噂Aは10の「カスケード」*を発生させたと扱います。各カスケードのサイズは1です。

一方、噂Bは、2人のユーザーがそれぞれツイートして、両ツイートとも100回リツートされました。この場合、噂Bは2つの「カスケード」で、それぞれのサイズは100。

*編集部:カスケードは人口の小さな滝の意味。階段を流れる水のように、ニュースが源流からたくさんの人へ伝わっていく様子をイメージしたネーミングと思われます。

よろしいですか?

うすうす感じているとおり...嘘のほうが拡散される

政治ネタはよく拡散される
Image: Shutterstock

さて、検証した噂はどれも事実確認(ファクトチェック)がされました。これは6つの団体(Snopes, Politifact, Factcheck, Truth or Fiction, Hoax-Slayer, Urban Legends)に依頼し、噂を事実/フォルスニュース/その両方(ミックス)に分類します。

そして6団体すべてが95%から98%事実だと判断した噂の、各カスケードをチェックし、どれほど広がったのかを4つのカテゴリーにわけて分析します。ここから、小難しい数学的アプローチがあれこれあるのですが、そこをさくっと端折ってわかりやすい文章にしたのがこちら。

フォルスニュースは本当のニュースとくらべて、より速く、より広く、より深く、そしてより遠くまで伝わるということがわかりました。また、今回の研究で判明した特筆すべきなのは、噂のジャンルによって広まり方が違うという点。カスケード数と広がるスピードで圧倒的だったのは、政治ネタでした。

いや、ちょっとまって。フォルスニュースが拡散されるのはボットのせいでしょ。って思ってますよね。なにせロシアのハッカーがボットを使ってフォルスニュースを広めたりしているというのは、政界でも今年トップの話題ですから。しかし、MITメディアラボの見解は違います。研究を通してわかったのは、ボットの存在は、フォルスニュースの拡散において、そう大きな違いを生んでいないということ。

ちなみに、ニュースを拡散しているアカウントがボットか否か、の判断に研究チームが使ったのはBotometer(旧名:Bot or Not)と呼ばれるアルゴリズムです。Botometerを利用した理由は、アカウントがボットか否かを白黒で判断するのではなく、パーセンテージ(0と1の間)でボットの可能性を算出するため。もしBotometerが、あるアカウントのボット可能性を50%以上(0.5以上)だと判断したら、1というカテゴリに(カテゴリはボットと人間の2つ)。結果、どちらの場合でも、フォルスニュースのシェア度は大差なかったというわけ。

ボットの存在が、フォルスニュース拡散の一因ではないと言っているわけではありません。ただ、フォルスニュースと本当のニュースの拡散のされ方の違いに、ボットは関係ないと言っているだけです。

Vosoughi氏は、細かいことを言えば、本当のニュースよりフォルスニュースの拡散に多少ボットが関係すると、一応、触れてはいますが、それも本当にわずかで着目すべき違いではないといいます。考えてみれば、ボットを作るのは人間ですから。人間っぽく動くようにプログラムされているわけですから。

「驚き」がニュースを広げる原動力となる

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Image: Shutterstock

また、本当のニュースとフォルスニュースでは、拡散の幅やスピードだけでなく、ユーザーからのコメントにも違いがあることがわかりました。フォルスニュースにつくコメントは、恐怖や嫌悪感、驚きに関するもの。本当のニュースでは、予想や悲しみ、嬉しさや信頼といった感情に基づくコメントが見られました。

ここで注目すべきは、驚きという感情。Vosoughi氏は、この驚きがフォルスニュースへのリアクションで最も大きく、新しいもの、珍しいものに惹かれてしまう人間の性質がうまく利用されていると解説。Roy氏も、逸話的にもコミュニケーション学的にも、ネガティブなニュースほど人はシェアしたがるというのは当然だと指摘しています。

フォルスニュースが広がるのは、人々がそれに驚くから。これを、驚くということは、心のどこかでそのニュースを否定的に感じる基盤がある、とポジティブに捉えることもできるでしょう。ただ、研究チームは、そう楽観的に考えていません。自分の知識とかけ離れて否定するエクストリームなフォルスニュースほど驚きが大きく、つまりフォルス度が高ければ高いほどより広まってしまうという可能性があるからです。また、政治がらみのネタになると、何が真実かのベースが難しく、事実にそぐわなくても、人を簡単に驚かせることができてしまうと懸念点をあげています。

フォルスニュースの広がりを抑えるために、今回のリサーチはどう役立つのでしょう。Vosoughi氏は、そのためには、人間の行動についてもっと研究を重ねる必要があるといいます。ユーザーやニュースにスコア付けするという手もありますが、これはすでにあるアイデアなうえに、なかなかうまくいっていないのが現実。

本研究では、フォロワー数の多いユーザーや(認定の青いマークありの)公式アカウントなどは、本当のニュースをシェアすることが多く、フォロワー数の少ないユーザーがフォルスニュースをシェアしがちということもわかりました。ということは、ある程度は自分が見たツイーツのソースを確認することができるわけで、それでもフォルスニュースが広がるのならば、新たにユーザーやメディアにスコア付しても、正直どこまで役立つのかという気がしますけど。

Roy氏はこれを踏まえた上で、ニューヨーク市のレストランの話を例に挙げています。ニューヨークのレストランは、メニューにカロリーを記入せねばならないという規制があります。まぁ、残念なことに、この取り組みは市民のヘルシーな食事には思ったほどの効果をあげていないそうですけれど。カロリーと価格を見比べ、(安くてカロリーをたくさん摂取できる)コスパの高い食事をしようとする人がいるというのがその理由。しかし、店側は低カロリーのメニューを増やす傾向がでてきたというので、取り組み失敗とはいえないでしょう。

なんにせよ、Roy氏が言いたいのは、数字のもつインパクトの強さです。周りの評価によって、人・モノへの見方って変わりますからね。それも人間らしい振る舞いでしょう。

ただ、フォルスニュース拡散の基礎に、驚くことを広げたがるという人間の本質が関係しているならば、そりゃ淘汰するのは難しいってことですよ。


Image: Chelsea Beck , Shutterstock
Source: Science

Rhett Jones - Gizmodo US[原文
(そうこ)

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