Intel i7-8809Gレビュー: ライバル同士が作りあげた美しいコラボレーション

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Intel i7-8809Gレビュー: ライバル同士が作りあげた美しいコラボレーション
Image: Alex Cranz/Gizmodo US

Intel(インテル)とAMDといえば、長年切磋琢磨してきたライバル企業。長いことIntelがほぼあらゆる面で圧勝してきましたが、Ryzenの登場によってAMDが盛り返し、CPU競争がさらに面白くなってきたところですよね。

そんな2社が、まさか共同のプロセッサを作っていたとは! しかもどうやらこのプロセッサはモバイル用で、AMDがグラフィックスを担当し、ラップトップ界でGPUを支配しているNvidiaにも対抗しうるとか。敵の敵は味方、ということなんでしょうか? 米GizmodoのAlex Cranzさんがレビューしてくれました。


ここ数ヶ月悪いニュースがつづいたIntelと、良いニュースがつづいたAMDを見ていると、新しいチップのために2社が協力するというのはちょっとビックリです。Ryzen CPUVega GPUの成功で乗りに乗っているAMDにはいいでしょうが、Intelにとっては、致命的な脆弱性Meltdown(メルトダウン)とSpectre(スペクター)が発覚したことで大批判を受けていました。それまでIntelの製造していたCPU、米ギズモードでレビューしたものも含め、すべてパッチなしでは脆弱性を突かれてしまいます。でも、AMD Vegaグラフィックスチップを内蔵した新しい第8世代のIntel CPUは、その速さゆえにパッチしなければいけないことも思わず許してしまいそう。

i7-8809G

・これは何?:AMD製の内蔵グラフィックスチップを持った、Intelのモバイル用CPU

・価格:NUC8i7HVKに搭載されたバージョンが1,000ドル(約10万6000円)

・好きなところ:私の巨大なデスクトップPCとほぼ同じ速さ

・好きじゃないところ:高い電力を要求されるので、スリムなラップトップには使えない

この新しいオンボードグラフィックスチップを持ったCPUの速さに驚いたのは嘘ではありません。過去8年間、Intelは自身のCPUにグラフィックスプロセッサを内蔵してきましたが、一応それなりの性能ではあるものの、決して優れたものではありませんでした。GwentやHearthstone(ハースストーン)をちょっとプレイするには問題ありませんが、Rise of the Tomb Raider(ライズ・オブ・ザ・トゥーム・レイダー)など複雑なレンダリングを要求されるものには苦戦していました。それ以前に、そこまでパワーを要求しないOverwatch(オーバーウォッチ)やCivilization VI(シヴィライゼーション)ですら手こずったのです。しかし、「第8世代Intel Coreモバイルプロセッサ with Radeon RX Vega M」なら話は別。

公式名はあまりにも長いので、単純にi7-8809Gと呼びましょう。i7-8809Gは、AMDグラフィックスプロセッサを搭載した2種類のIntelプロセッサのひとつです。このGシリーズはAMDプロセッサが必ずついてくるので、それ以下の性能のものは存在しません。どちらも第8世代で、Kaby Lake Rマイクロアーキテクチャがベースになっています。どちらのプロセッサもモバイルデバイス用を念頭に作られているので、買ったからといって簡単にデスクトップPCに装着できるわけではありません。

いっぽう、やや劣るバージョンがi7-8705Gです。その理由は、オーバークロックができないため、箱から出したとき以上の性能を出せないところ。ちなみにi7-8809Gはオーバークロック可能です。

大抵の人はハードウェアへのダメージを考慮して、オーバークロックは行ないません。しかし気をつけられる人、あるいはいじるのが好きな人はオーバークロックさせて、より大きな電力と発熱の代わりにさらなる処理スピードを得たりもしますよね。i7-8809Gの場合、オーバークロックに対する唯一の障害はCPUの温度くらいなもの。

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CPUとGPUは小さくまとまっています。CPUが左でGPUとメモリが右
Photo: Gizmodo US

このCPUは、そもそもがモバイルデバイス用なので、ラップトップを冷凍庫数十台のファンの下で使わない限り、そこまでオーバークロックすることはできません。i7-8705Gが65ワットを必要とするのに対し、i7-8809Gは100ワットと、かなりの電力が必要になります。どちらもいろいろなラップトップに組み込まれることになるでしょうが、薄くて軽量なものには入らないでしょう。一応i7-8705Gは、4.7ポンド(約2.1kg)のDell XPF 15 2-in-1に使用される予定ですが、軽さではそれくらいが限界です。よりパワーを必要とするi7-8809Gに関しては、もっと大きくて分厚い、ゲーミングラップトップなどに使われるでしょう。

また、どちらのバージョンもIntel NUCに搭載されたものを購入できます。これは、モニターの裏に取りつけて自家製の一体型PCを作ったり、自作用途でコンピュータを利用したい人たちのための、超小型デスクトップPCにモバイルCPUを詰め込んだラインナップです。ストレージやメモリなどは自分で用意しなければなりませんが、過去のNUCシリーズは500ドル(約5万3千円)以下で買えるため、ROMなどをプレイする小型マシンやテレビに繋げるメディアセンター、サーバー、あるいは可愛い小型デスクトップPCとしてお手軽でした。しかし、大きく進化したグラフィックス機能とともに価格も上昇します。i7-8705Gバージョンは800ドル(約8万5千円)で、我々のテストしたi7-8809Gバージョン、NUC8i7HVKは1,000ドル(約10万6千円)です。

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NUCは高めかもしれませんが、たくさんのポートがついています。正面だけでもSDカードスロット、複数のUSBポート、3.5オーディオジャックにHDMIがついています
Photo: Gizmodo US

メモリやストレージでさらに数百ドルは使わないといけないコンピュータの割には高い気もしますが、そもそもこれがラップトップのためのプロセッサだというのを忘れないでください。たとえばDell XPS 15 2-in-1などはさらに高く(i7-8705G搭載のXPS 15 2-in-1は2,550ドル、日本円で約2万7千円)なります。しかも、今度のNUCはゲームなどにも強くなりますよ。

i7-8809G搭載のNUCでウェブブラウジングベンチマークのWebXPRT 2015、Geekbench 4、そして私たち独自のPhotoshopテスト(複数のRAWファイルをリサイズしてJPEGに変換する)を行なったところ、ほかの第8世代Intelモバイルプロセッサを搭載したHuawai Matebook X ProDell XPS 13LG Gram 15と比較しても互角でした。しかし、Radeon Vega GPUをそれらに搭載されたIntel Irisと比較したところ、これを完全に圧倒。Civilization VIのフレームのレンダリングに関してはMatebook X Proの4倍速く、Overwatchの1080P、High設定では7倍以上を叩き出しました。

また、もっとGPUのパワーを要求するゲームでも優秀でした。Rise of the Tomb RaiderをHigh設定、1080Pでプレイしたところ53fpsを実現し、Far Cry 5を1080PのUltra設定でも47fpsでした。Matebook X Proだとこれらのゲームは起動すらできません。一応比較のために、第8世代i7とNvidia 1080を積んだ私の自宅のデスクトップマシンとも比べてみました。こちらはTomb Raiderで116fps、Far Cry 5で98fpsでしたが、このPCは倍の値段したうえに、大きさも4、5倍あります。もっと言えば、Nvidia GPUだけでIntel NUC一個分の大きさがあるのです。

では、これがIntelにとってどういう意味があるのかというと、ラップトップ界の優良GPUとしてトップを独走するNvidiaと競える内蔵グラフィックスチップをついに手に入れたということです。Razer、Alienware、MSIなどのメジャーなゲーミングラップトップにはほぼ必ずNvidiaカードが採用されます。ほかにも、Microsoft Surface Book 2などの作業用ラップトップも同様です。現在はNvidiaが王者といえますが、ついに挑戦者が現れたのです。Intel Gシリーズは、超ハイエンドなゲーミングラップトップに搭載されたNvidia 1080 GPUのような、あなたを仰天させるようなパワーはありません。しかし、より低価格なゲーミングデスクトップやポータブルなワークステーションに搭載されたNvidiaには十分対抗できます。ただ、より激化する競争で価格が安くなることを祈るばかりです。ハイエンドゲームをプレイできて、バックパックに入るサイズなのにVRも可能なNUCとはいえ、1,000ドル(約10万6000円)はちょっと高すぎますからね。

まとめ

・CPUのパフォーマンスは平均的だが、GPUのパフォーマンスはハイエンドのNvidia GPU並

・i7-8809Gは100ワット必要なので、かなりの電力が必要。極薄ラップトップなどに載ることは期待しないように

・i8-8809G搭載のIntel NUC8i7HVKは速いが、ストレージやメモリも買わないといけないのに1,000ドル(約10万6000円)は高い


Image: Alex Cranz/Gizmodo US

Alex Cranz - Gizmodo US [原文
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