英語発音だとライズン。
王者インテルに対抗し、AMDが去年の春に満を持してリリースし、日本でもヒットとなったRyzenが、第2世代「Ryzen 5 2600X」になってさらに進化しました! 米Gizmodoのベンチマーク測定で判明した意外な長所とは…?
一斉発売ではなく、まずはデスクトップ用のCPU(ゲーマー、ストリーマー、動画、3Dレンダリング業界人向け)から発売です。モバイル版とAPU(CPUとGPUが統合されたもの)はまた後ほどという、初代と同じ、段階的リリース。
Ryzen 5 2600X
ひとことでまとめると: AMDより新発売の次世代Ryzenデスクトップ用CPU
価格: $200
好きなところ: 安い。速い。
好きじゃないところ: まだGPUなし。別売。
先に発売される第2世代RyzenのRyzen 5 2600Xは、GPUが搭載されていないのがインテルとの違いです。GPUをまだ持っていない人は別売になるので、それを合わせると結構なお値段になりそう。格安で済ませたい人はAPU発売まで待つべし、ですね。もっとも初代AMDのAPUが2カ月前に発売になったばかりなので(グラフィック性能すばらしいです)、ちょっと待ちくたびれてしまうかもですけれど。
まーしかし、もう手元にグラフィックスカードがあるんなら、Ryzen 5 2600Xはかなりお買い得です。200ドル(約2万2000円)もあれば買えてしまえます。それで6コア/12スレッド同時処理の性能(動画編集、ゲームやBlenderの3Dレンダリングに最適)が手に入ってしまうのだから破格のお値段と言えるでしょう。インテルが昨年10月に発売したRyzen 5 2600Xの対抗馬「i5-8600K」は同じ6コアですが、6スレッドで50ドル割高です。そこそこレベルのGPUが統合されていることと動作クロックが高め(3.6GHz)なことが一番の違いです。
だったら、そっちを買えばもうそれでいいんじゃない? と思ってしまいますけど、第2世代Ryzenで注目なのは、そのプロセスルール(チップ内の配線の幅)の小ささです。初代RyzenはZenマイクロアーキテクチャ採用で、インテルの現行のCoffee Lakeアーキテクチャと同じく、14nm(1ナノメートル= 10億分の1メートル )のプロセスルールでした。 第2世代RyzenではZen+アーキテクチャ採用となり、12nmになります。小型になるとデータの移動距離が縮まるので、もっと省電、高速化できるという理論上のメリットがあります。Ryzen 5 2600Xは動作クロックこそインテルに劣りますが、14nmが12nmになったことで、理論上はもっと高速処理が可能になっているはずです。
さっそくRyzen 5 2600Xで、i5-8600K、前世代Ryzen 5 2400Gと同じベンチマークテストを行なってみました。使ったのは全部同じRAM、ストレージ、Nvidia 1080グラフィックスカードです。結果、2600Xは初代2400Gよりも高速で、i5-8600Kよりもおおむね高速であることがわかりましたが、一部の機能はi5-8600Kのほうが高速でした。一番目立ったのはブラウザ処理速度を測るブラウザベースのベンチマークテストWebXPRT 2015で、i5-8600KのほうがRyzen 5 2600Xより20%近くも高速でした。CPU全体と各コアの両方の処理能力を計測できるGeekbench 4でも、シングルコアはi5-8600Kの方が上でした。


マルチコアの処理スコアでやっとAMD製チップが上になるという結果です。

ただ、WebXPRT 2015もGeekbench 4も総合ベンチマークなので、買った人が高速性能を自慢する種には使えますけど、実際の操作環境と完全にイコールとは限りませんし、どっちのCPUを選んでもネットやメールはサクサクでした。
本当に知りたいのは、ほかのタスクのベンチ結果ですよね。ゲームとプロ用ソフトで比べてみました。事前の説明会では「ゲーム性能はインテルにかなり迫ったが、追い越すことは滅多にないっす」とAMDの人から聞いていたのであまり期待はしていなかったんですけど…。



ご覧のように 『Civilization VI』でも『Rise of the Tomb Raider』でもRyzen 5 2600Xのほうがちょこっとずつ上という結果でした! ゲームで劣るといっても、差はほとんどありません。
そして無視できないのが、Ryzen 5 2600Xでプロ用ソフトをつかったときのベンチスコアです。これは疑問を差しはさむ余地もなく、AMDの圧勝でした。



PhotoshopのテストではRAW画像ファイルをJPEGにどんどん変換してスピードを比べてみたんですけど、丸1秒の差がつきました。3つのタスクはすべてRyzen 5 2600Xが上なのに、i5-8600Kより150ドルも安いという驚きのコストパフォーマンス。
安かろう悪かろうではなく、インテルより安価で、しかも高負荷の動画処理や3Dレンダリングとかの領域ではずっと高速で、ゲームで比べてもほぼ互角です。AMDはアップグレードも安くすると公約していて、初代も第2世代も同じAM4ソケットのマザーボードを使っています。米Gizmodoには、今後数世代はこのソケットをそのまま使っていく予定だと言ってました。いまマザーボードを1枚購入すれば、それでもう何年かは安泰です。
初代を買ったみなさまは、200ドルのアップグレードの元は十分とれる感じだし、インテルからAMDに乗り換えを検討中で、GPUを調達済みの方にも見逃せないオプションといえそうです。
一発屋で終わると言われたRyzen。第2章で確実にレベルを上げてきました。インテルの後ろ髪を掴んで、追い越してしまったところもあります。それでいてこのお値段。
デルなどの大手PCメーカーからはAMD搭載マシンも出始めていますけど、現状ではあまり対応するラップトップや廉価版デスクトップがないのが難点で、利用はまだ動画制作や3Dレンダリング用にヘビーユースのマシンを求めるマニアに限られています。しかしこれだけのパフォーマンスであれば、対応機種が増えたらインテルもうかうかしていられなくなるかもしれません。

まとめ
・初代よりレベルアップし、インテルに勝るとも劣らないレベルになりました。
・特に強いのが、負荷の大きな動画のトランスコーディングや3Dレンダリング。
・ゲームは依然インテルの勝ち。でもわかるかわからないかぐらいの僅差です。
・初の商用12nmデスクトッププロセッサでもあります。
・Spectreは10nmプロセッサの登場までお預け。
・GPU非搭載。グラフィックスカードは自前です。
Image: Alex Cranz(Gizmodo US)
Alex Cranz - Gizmodo US [原文]
(satomi)