Azureを「社会のOS」に?
Microsoft(マイクロソフト)が毎年開いている開発者向けイベント「Build」が今年2018年も開催されました。去年あたりから強調されていた「クラウドファースト」は、とうとうイベント初日のキーノートからWindowsを追いやってしまうほどに。え、どこに向かっているの? それは「コンピューターとAIがユビキタスに社会に織り込まれていくためのプラットフォーム」になること。

サクッと説明します。要は、マイクロソフトは社会を支えるコンピューターになりたいのです。社会のあらゆる場面・場所・物にコンピューターが埋め込まれている未来を見据え、それらを支えるプラットフォームとして存在したい。そのためにはまず、そういったコンピューターや、そこに走るサービスを作る開発者に採用してもらわなきゃいけませんよね。
なので、マイクロソフトは開発者らに向けて、クラウド・AI・IoTのツールを売り込んでいるのです。人々の生活や仕事を支えるサービスを作るのは大変なので、それが楽になるツールが大量に用意されていたら思わず使っちゃいますよね。しかも作ったサービスの管理・展開までサポートしてくれたらどうでしょうか。そういった便利なプラットフォームになることを、まずは狙っているのです。

Kinectセンサーの捉えた世界
「感じ取れる」カスタムAIサービスが簡単に作れる「Azure AI」
Azure(アジュール)といえば、マイクロソフトの提供するクラウドサービスです。その中でも特にAIの開発に特化したのが、「Azure AI」。そこでは35種類以上の認知機能(テキストや画像から情報を認知)を自由に組み合わせ、自分の用意したデータを読み込ませることでカスタムAIが作れます(ちなみに、KinectがAzure用センサーとしてカムバックしました)。

こうしてさまざまな機能を持ったAIが作れるわけですが、なかでもプッシュされていたのが、「会話形AI=ボット」です。マイクロソフトCEOサティア・ナデラは、「ボットが次の“アプリ”だ。全ての会社が自社ブランドのボット、エージェントを作るだろう」と豪語。他のエージェント(Cortana・Alexa・Google Assistant・Siriなど)を通じて、顧客さんと“直接”会話するだろうとのこと。
作ったAIをモノに乗っける「Azure IoT Edge」
最近増えましたよね、IoT監視カメラ。人が写りこんだら写真やライブ映像をスマホに送ってくれたり、アプリを通じて写っている人に話しかけたりできます。でも、機能的にはせいぜいその程度でした。結局、最終的に映像を見てどうするか判断するのは我々人間なんです。

しかし、Azure IoT Edgeにかかれば、カメラ自体に賢いカスタムAIを搭載できます。たとえば、「AさんがB物を持ってC行動を取っているから、DアラートをEスマホに送る」といった機能をカメラ自身に持たせることができるのです。Azureで開発したAIを、あらゆるIoTデバイスに直接走らせることができる。エッジコンピューティングにAIを組み合わせたわけです。
搭載したAIはAzureを通じてアップデート可能ですし、セキュリティーはマイクロソフト任せにできます。企業側にとって顧客サポートが楽になれば、顧客側もサポートが受けやすくなるのでいいですよね。Azure IoT Edge対応のIoT製品、増えそうな気がします。
Microsoft 365が進化。MR機能・議事録AI・Alexaが登場

まずそもそもMicrosoft 365ってなんぞという方、これはビジネス向けのWindows+Officeのパッケージサービスです(マイクロソフトのG Suite的な存在)。そこになんと、マイクロソフト肝いりのMR(複合現実)が統合されることに。これにより、MRで現場の機材の配置をシミュレートしたり、上画像のような未来感ある会議が可能になります。

真ん中に文字起こし、右にToDoのメモ、左に翻訳ウィンドウが開いています
また、会議の音声をその場で自動的に文字に起こしくれる議事録AIも登場しました。発言者の認識はもちろん、リアルタイムの翻訳も可能です。それどころか会議中に発生したToDoを自動的に認識し、タスク化することも。これはもう、どう考えても便利すぎます。今すぐ欲しい…。

そしてAlexa(アレクサ)。とうとう公式でCortana(コルタナ)から呼び出せるようになります(逆も然り)。仕事周りを管理してくれるコルタナと、生活周りが得意なアレクサ。このふたつがひとつのデバイスから自由に使い分けられるようになるのです。
ユーザー:アレクサ、牛乳をお買い物リストに追加して呼び出して。
アレクサ:ミルクをお買い物リストに追加しました。
ユーザー:アレクサ、コルタナを開いて。
コルタナ:コルタナです、いかがしましょう?
ユーザー:今日の予定どうなってる?
コルタナ:まず17:30からトムとのお食事があります。そのあと20:00にマディーを迎えに行きます。いかがしましょう?
ユーザー:トムにメールを…
といったふうに適材適所できちゃいます。
PCとスマホ間で作業を引き継げる機能をWindowsとiPhone&Androidで
MacとiPhoneとの間で作業を引継げる「ハンドオフ」機能はとても便利ですよね。でもWindowsとAndroidのユーザーはそのような便利機能を実現しようとしたら、それはもう大変な努力と時間がいりました。でももう大丈夫。WindowsタイムラインがiOSとAndroid OSに対応します。
これはハンドオフの機能のWindows版みたいなものなのですが、PCでの作業を引き継ぐのはWindows Phoneではなくアプリを入れたiPhoneやAndroidです。しかも、30日分の作業の履歴を保存しておいてくれるという太っ腹。イェス。こういうクロスプラットフォームは大歓迎。
Azureワールド
Microsoft Azureがそこかしこに織り込まれた世界が実現したら、現実・デジタル・プラットフォーム同士の境界が薄まりそうですよね。なにせAzureで作ったものならとりあえずどこにでも展開できちゃいそうですもん。でもだからこそ、プラットフォーマーとしての責任は重いと思います。
サティア・ナデラ氏自身が発言したように、マイクロソフトには「プライバシー」「サイバーセキュリティー」「倫理的AI」に注力して欲しいです。