【ネタバレ注意】近未来VR映画『レディ・プレイヤー1』レビュー! 原作とアレコレ比較するとどうなの?
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【ネタバレ注意】近未来VR映画『レディ・プレイヤー1』レビュー! 原作とアレコレ比較するとどうなの?

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映画を見たなら小説もぜひ!

2011年に登場したアーネスト・クラインによる小説『ゲームウォーズ』が、2018年にスティーヴン・スピルバーグの手により『レディ・プレイヤー1』として映画化されました。原作は80年代の映画やドラマ、テレビゲームなどのポップ・カルチャーがふんだんに採り入れられ、複雑な権利問題から映像化なんて不可能では?と誰しもが思う作品でした。

にもかかわらず、劇中には『バック・トゥ・ザ・フューチャーII』版デロリアンや『アキラ』金田のバイク、『アイアン・ジャイアント』、『ストリートファイターII』、『オーバーウォッチ』や『Halo』、『ハローキティ』に『機動戦士ガンダム』、『チャイルド・プレイ』、『エルム街の悪夢』、さらには古典ホラーの名作『シャイニング』などなど、ホントに枚挙に暇がないほどのイースター・エッグやらオマージュやらが所狭しと散りばめられることとなりました。これはひとえに、生きる伝説スピルバーグ監督だからこそ業界がこぞって協力してくれたおかげなのです。

ただし、やはり原作からの映画化にあたりアレコレと大人の事情が絡んでおり、重要なお助けアイテム「ベーターカプセル」を起動して変身する『ウルトラマン』が出演できず、『スター・ウォーズ』もNGだったといいます(とはいえ実はいくつか隠し要素が登場しています)。

すでにいくつもネタバレしてしまいましたが、これより先は原作と比較しつつ、さらに突っ込んでレビューしてみたいと思います。


キャラクター・デザイン

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まずなんといってもメインキャラ5人がVR世界「OASIS」で纏うアバターのデザイン! 原作は活字なので、その姿は100%読者の想像に委ねられます。ですが映画では妙にリアリスティックで、妙にキモいのです。たとえば劇中内のカメオ出演で見られる『ストII』や『オーバーウォッチ』のように、完成されたゲームキャラが持つ洗練さが感じられず、トゥーンレンダリング的な描画でもないのでサッパリ馴染めません。日本人目線で見る、洋ゲーのバタ臭いテイストとでもいうのでしょうか……?

主人公パーシヴァルの親友エイチは、モンスター型なので100歩譲るとしても……侍や忍者っぽいダイトウとショウ(原作ではショウトウ)も“いかにも外国人が考える侍と忍者”ですし、ヒロインのアルテミスはデカ目でハリネズミみたいな髪の毛で、なんだかエイリアンのよう。主人公たちを苦しめる巨大企業IOIで主任を務める、悪者ソレントのアバターのほうがよっぽどアメコミっぽくて親しめるデザインでした。


登場できなかったカメオ出演

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原作でパーシヴァルは冒険の途中、東映版特撮ドラマ『スパイダーマン』の巨大ロボット「レオパルドン」を入手します。これはスパイダーブレスレットにわざわざ叫んで、飛行形態マーベラーに変形するスグレモノであり、クラインの日本サブカル文化リスペクトが最大限に爆発したオマージュでした。パーシヴァルは100種類以上の選択肢から、「一番強くて、一番装備のいいロボットを選びたい」と考えていたのに、レオパルドンを見つけた瞬間強さなんてどうでもよくなり「一番強くなくたってかまわない」と迷わずゲットしたロボットなのです。でも映画には登場せず……。

原作で最後のバトルに向けて出発したのはレオパルドンだけではなく、アルテミスは『マジンガーZ』のミネルバXで乗り込み、エイチはアイアン・ジャイアントではなく『機動戦士ガンダム』のRX-78を駆り、ショウトウは『勇者ライディーン』でした。敵であるIOI側にも『ボルトロン(百獣王ゴライオン)』に『ロボテック』(『超時空要塞マクロス』、『超時空騎団サザンクロス』、『機甲創世記モスピーダ』の再編集版)、『新世紀エヴァンゲリオン』といった作者のオタクっぷりが大炸裂。

どれもリアルCGで見たかったのですが、それは叶わず仕舞いとなってしまいました。


ストーリー

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上下巻ある原作を、たった2時間強の映画に濃縮するのは大変な仕事だっただろうと思います。なので3本の鍵を見つける工程は大幅に削られ、主要な登場人物像に迫ることもほとんどありませんでした。

本作の主軸は、OASIS創設者ジェームズ・ハリデーの、莫大な遺産を探し出す壮大なゲームをプレイをすることです。原作では、そのためには映画『ウォー・ゲーム』や『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』の世界に入り込んで主役を完璧に演じきらないといけない「ムービーシンク」と呼ばれる試練があったり、いくつもの懐ゲーで勝利したり、隠し要素を見つけたりするのですが……そこへ辿り着くまでの謎解きや、仲間たちとの助け合いも大切なポイントでした。特に主人公パーシヴァルことウェイドは極貧生活を送る学生なので、OASIS内でお金を使って自由に宝探しができないのです。それでも彼は知恵を振り絞り、灯台下暗しだった謎を見つけました。(そしてそこで出逢った人は……!?)

しかし映画では、3本の鍵を得るために、あまりオタク知識を総動員してクリアする必要がなくなっています。ここは偏りすぎると一般層にウケが悪いであろうことからか、「マリオカート」や「ドンキーコング」的な味付けにしたり、ムービーシンクが『シャイニング』を使った謎解きに代わっていました。唯一原作と同じなのが、最後の試練である、アタリ2600用ゲーム「アドベンチャー」をプレイしてゲーム史上初めて採用されたイースター・エッグに辿り着くこと。ともあれ、あまりに違ったことが多いので、原作ファンは「?」と思ったんじゃないでしょうか? とはいえこれは甲乙つける話ではなく、映画と小説は別物として考えると、2度おいしいのではないかと思います。

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原作ではアルテミスことサマンサとウェイドは、ラストシーンまでご対面できずジラされるのがまたニクい演出でした。ですが映画だとふたりは早々に出逢ってしまいます。はやり美少女のヒロインを最後まで出さないというは、映画的にちょっと……ということだったのでしょうね。エイチとダイトウとショウも、映画では早い段階でウェイドとご対面を果たします。ついでにオフ会で中の人と初対面を果たしたような気まずさは、サラっとやり過ごす感じで描かれていました。

原作では物語の醍醐味はVR世界だけにあらず。後半、ウェイドはOASISを一旦離れ、わざと現実世界でIOIに捕まりハッキングで内部をゴニョゴニョしてきます。そのおかげで仲間たちがリアルに身の危険に晒されていることが発覚したり、OASIS内でIOIを劣勢に追いやったり、ソレントを窮地に追いやったりと一石で何鳥も落とす活躍をしてくるのです。ですが劇場版でそれはサマンサの役目となり、強いヒロイン像が描かれることになっているのです。

女性の活躍といえばもうひとり。ソレントの手先となって暗躍する美人部下フナーレがいます。彼女は原作にはいないキャラクターです。ソレントは幹部なので、現場でのダーティー・ワークは似合いません。なので彼女がいたことで、ふたりの役割がハッキリした点は良かったと思います。さらにはソレントが、実はハリデーと相棒オグの所で働いていたという過去が描かれたのも、なぜOASIS掌握に執念を燃やすのかがわかる良い演出でした。


映画化までのVRの進化

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VR元年」と呼ばれた2017年がつい去年のこと。なので私たちはVRについて多くを知り、また経験してしまいました。

原作が出た2011年はそのたった6年前でしたが、あの時はまだまだVRは手の届かない技術で、この物語も斬新に感じることができました。その最新テクノロジーの中で、70~80年代のポップ・カルチャーを懐古するというギャップが面白かった点でもありました。しかし2018年にこれを見ることが、果たして時代遅れなのか? それともVRを採り入れた斬新な映画なのか? 受け取り方次第で答えるのはちょっと難しそうな気がします。


振り返ってみて

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つい原作を知っていると、比較せずにはいられず、圧倒的なボリュームの薄さにガッカリしてしまうことと思います(それだけ原作のオマージュが多岐に渡り、内容が濃密なのです)。映画の脚本には、原作者のアーネスト・クラインご自身も名を連ねています。なので「映画化が原作をダメにした」と考えず、クラインによる別バージョンをあのスピルバーグが監督した! と考えると腑に落ちるかと思います。もちろん映画を先に見てギーク要素が面白かったと感じたら、絶対に原作を読むべきです。

厳しいことも言わずにはいられませんでしたが、いちファンとしてそれだけ思い入れがあったことをご了承いただければ幸いです。


クラインは現在、続編を執筆中とのこと。今度も奇想天外なオマージュをブチ込みまくるのか? それとも映画化を見据えて現実的なラインナップにするのか? OASISの全権を手に入れたウェイドはどうなったのか? 今作でパーシヴァルとくっついたアルテミス、次回作のタイトルは彼女がメインで『レディ・プレイヤー2』になるのか?

映画『レディ・プレイヤー1』は劇場公開中です。映画を見て興味をもった方は、書店にも足を運んでみましょう!


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岡本玄介

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