諭吉さん vs. LINE Pay。
LINE(ライン)の事業戦略が発表されるイベント「LINE CONFERENCE 2018」が今年も開催され、去年と同じようにClova(クローバ)の新たなプロダクトが発表されました。でも今年の本当の目玉はそこではなく……「日本改造計画」とも呼べそうなLINE Pay普及策でした……。なんのこっちゃ?
よ、そんな感じの勢いで、今年のLINEはもうふたつスケールの大きい発表をしていました。チケットの転売をなくすための電子チケットサービスと、ユーザーとサービスをブロックチェーンで結ぶ構想です。なんだかこれまでのLINEのイメージより、ちょっと大人びた印象を受けますよね。
でも遊び心もしっかり残っていて、特にClovaのキャラクター化を推進する音声合成技術のデモはとんでもコメディでした。さらにほかにも発表されたことが沢山あって、たとえば画像認識でショッピングできるようになったり、ニュースが日本一になっていたり、エンタメ各種が強化されていたり、Clovaが便利になってたり、トラベルに進出したり、フィンテックが拡充されていたりと……モリモリです。
めちゃくちゃ多かったので、ここで一緒にさらっとおさらいしておきましょう!
1. 新プロダクトは「ミニオンズ」と画面付きのClova

映画『怪盗グルー』シリーズでおなじみのキャラクターである「ミニオン」が、Clova FriendsとClova Friends miniとして今年の秋からラインナップに参加する予定です。音声アシスタントに「キャラクター」を与えようというアプローチは意外にもマイナーらしく、Clovaはその先陣を切っているみたい。頑張れミニオン! 頑張れドラえもん!
でも発表会で披露されたキャラはもうひとつありました。それは、LINE株式会社取締役CSMOの「桝田淳」さんその人。こちらがその様子。
実演デモ! やってることはスゴイのに、コメディ感が強い内容でした。だって「ますだClovaを起動して」って自分の声がするClova話し始めるんですよ? #LINECONFpic.twitter.com/mrBxnBdGjh
— ギズモード・ジャパン (@gizmodojapan) 2018年6月28日
音声アシスタントにキャラクターを与えたいのなら、見た目だけじゃなくて声も大事だよね、とLINEが最新のAI技術を使って作り上げた音声合成技術をデモしているわけなんですが…、キャラ選が斜め上も上。てっきりダミ声が出ると思っていたので思わず笑ってしまいました。サイコーです。
そしてもうひとつのプロダクトはスマートディスプレイの「Clova Desk」。トレンドにのっていますね。発売予定は今年の冬。お楽しみに。
2. LINE Payが日本のキャッシュレス化を大プッシュ
いま中国などで普及しているキャッシュレス化の方法のひとつに、QRコードを読み取る・読み取ってもらうことで決済できる「コード決済」がありますよね。スマホやタブレットがレジやお財布代わりになるので、レジレス・ウォレットレス化も一気に進んでいます。
あれを日本でも普及させよう、というのが今回の発表なのですが、本気度がスゴかったです。なんと日本では数の多い中小規模の事業に対して、初期費用ゼロ円と3年間の決済手数料ゼロ円を約束しました。ワオ。
この策がヒットしたら私たちのお金の使い方はもちろん、お金に対する考え方も変わりそうですよね。レジの列は短くなり、お釣りという概念は消え、ポケットからお財布がなくなる。今度こそ日本もキャッシュレス化できることに期待しながら、LINE Payのロゴを探してみようかな。
あとこれは主にAndroidユーザーに向けたものですが、LINE PayがQUICPayに対応しました。便利!
3. 画像で商品を探せる「ショッピングレンズ」
「LINE ショッピング」で使えるGoogle Lens的な機能「ショッピングレンズ」が使えるようになりました。画像や写真から欲しいものを探してくれるので、「いま目の前にあるけど商品名が分からない」といった状況でとっても役立ちそう。でもたぶん一番多い使い方は、お店に行って「これLINE ショッピングで安く売ってないかな」という価格比較な気がします。なにか対策がないとキャッシュレスどころかショップレスになるかも?
4. No More転売。電子チケットサービス「LINE チケット」
コンサートやスポーツ観戦にいくと必ず見かけるチケット転売屋。最近ではネット通販やフリマアプリでも見かけますよね。純粋なファンの気持ちを踏みにじるその悪質な行為は、物理的なチケットには止められないのかもしれません。そこで「LINE チケット」の登場です。
チケットの検索・購入・入場までがすべてLINEプラットフォーム内で完結しているため、転売する行為が非常に難しくなっています。なにせ転売したければ、おそらくLINEアカウントごとやスマホ自体ごと受け渡す必要がありますからね。
5. 音楽・ゲームなど、エンタメがさらに強化
まず発表されたのが、「トークルームBGM」というトークルームのBGMが設定できる機能です。誰が設定できるのか、誰でも設定できるのか、設定合戦になってしまうのか。ちょっとそこらへんの詳細も気になりますが、使い方を誤らなければとっても盛り上がりそう。あれ? いま誰かリックロールかけようとしました?
そしてなにげにポテンシャルが高そうだったのが、LINEアプリ上からゲームが起動できるという「LINE QUICK GAME」。HTML5で書かれた軽量なゲーム専用のサービスで、第一弾には『たまごっち』や『ナンプレ』といった懐かしタイトルが予定されています。
ほかにもたくさんのタイトルがさまざまなジャンルから用意されそうですが、個人的にはこれ、会話がメインのゲームに最適だなと思いました。たとえば人狼ゲームとかTRPGとかですね。LINEのSNSというアイデンティティにも合っていますし、友達といつでも気軽にプレイできたら楽しそう。
6. Clovaがクルマにのったり、スキルを受け入れたり
Clovaがいよいよ「Clova Auto」としてクルマにもやってくるみたいです! そしてそのパートナーは、先日コネクティッドカーを発表したばかりのトヨタ。なるほど。こりゃピッタリですね。
すでにクルマとLINEメッセージは交わせましたが、今年の冬から販売される予定のClova Auto搭載車は車内から音声で色々コントロールできそうです。そして完璧な自動運転車が出る頃には、クルマはエンタメやサービスの空間になっているのでしょうね。どうですかみなさん。いつかダミ声を発するクルマに出迎えられてみたくありませんか?
あと、Clovaがサードパーティーのスキルを受け入れられるようになりましたよ。挙げられていた具体例で一番いいなと思ったのはフライヤー株式会社が提供するらしい「本の要約を読み上げてくれる」スキルです。絶対に便利。あとできればこれもダミ声でお願いします。
7. 雨が降っても楽しめるはずさ「LINE トラベル」
航空チケットや旅のプランを比較・検索できるサービスはいくらでもありますが、「LINE トラベル」は旅の途中もフレキシブルに対応してくれる機能が画期的だなと思いました。たとえば旅先に着いてふいの雨が振り始たら、雨の中でも楽しめるプランをサジェストしてくれるのです。旅先でググる時間が減るのはいいですよね。
8. Bitcoin!? と思ったら使えるのはKAKEIBO
LINEは今年もフィンテックの導入を進めていくようで、FOLIO・NOMURA・SOMPOと資産運用・証券取引・保険などに対応します。たしかにスゴいラインナップだなとは思うんですが、一番心を揺さぶったのはLINEが「BITBOX」という仮想通貨取引所をオープンするという発表でした。なにせ「おぉ!」と高ぶった後に「日本では使えない」という補足が目に入ったので。
でも日本で使える、実際に使いそうなフィンテックもありましたよ。その名も「LINE 家計簿」。機能的にはほかの家計簿アプリとほぼ変わりなさそうですが、LINE Payを多用するならこれが一番便利なのでしょう。
9. LINE×ブロックチェーン「LINE トークンエコノミー」
「LINE トークンエコノミー」が目指すところは恐らく、サービスの利用者にその貢献度に対してトークンで支払うと共に、そのトークンの管理や応用をブロックチェーンを通じたDApp(分散型アプリ)でできるようにすることです。
…え? なんのこっちゃ…。ですよね。というわけで、ちょっとほかのサービスと比べながら調べてみましたよ。で、その結果たどりついたのが「SteemitとEtheriumを掛け合わせたような感じ…かな?」でした。
というのも、LINEはその「トークンエコノミー」という名の通り、独自のトークンによる経済圏を作りたいのだと思います。そしてこのトークンはユーザー同士でやりとりできるサービス内通貨のようなもので、新たに発行してもらうにはサービスに貢献しなければなりません。この「貢献」がなにを意味するかはまだ分かりませんが、たとえばSteemitというブロックチェーンを使ったソーシャルニュースサービスでは良いコンテンツを作ることが貢献とみなされていて、ほかのユーザーからの評価が高ければ高いほどより多くのSteam Dollarが対価として発行・支払われます。
LINE トークンエコノミーも恐らくこれに似たような仕組みになるのではと思います。
ただこれだけだとまんまSteamitのパクリなので、LINE トークンエコノミーはこの仕組みにDAppと呼ばれる仕組みを組み合わせようとしています。これはEtheriumという仮想通貨に組み込まれた仕組みとして話題になったモノで、たとえば「止められないアプリ」を走らせたり「不履行できない契約」が結べます。なので、多分ですがトークンのやりとりを管理するシステムはDAppとして機能するのでしょう。そうすれば並大抵の事件が起きてもトークンのやりとり帳簿は無傷ですからね。賢い!
と、いうわけで今年のLINE CONFERENCEはモリモリで超面白かったです。ただそのおかげでまとめ記事を書くのに予想以上に手間取ってしまいました。いやぁ、遅れに遅れてすみませんです!
ではでは、また来年!
Photo: ギズモード・ジャパン編集部
Source: LINE
(西谷茂リチャード)