家庭用ゲーム機の未来がストリーミングにあるのなら、まずはネット格差を考えるべき

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  • author そうこ
家庭用ゲーム機の未来がストリーミングにあるのなら、まずはネット格差を考えるべき
Image: Alex Cranz(Gizmodo US)

ギズモードの大好物、商品正式発表前の噂。夢や妄想が膨らみ、あーでもないこーでもないと議論できる楽しいものです。スマートフォンしかり、ラップトップしかり、VRヘッドセットしかり、そしてゲーム機しかり。ソニーやMicrosoftの次世代ゲーム機の噂も幅広く聞こえてきますが、その中でひとつ気になることが…。

次世代ゲーム機では、ストリーミングが主となるらしい」

もし、これが事実ならば、ゲーム業界の近未来は危ういと思います。

次世代ゲームに関する報道を、みてみましょう。まずは、MicrosoftのXbox。Microsoftと、アサシンクリードシリーズなどを手がけるフランスの大手ゲーム開発販売会社ユービーアイソフトが、今後はストリーミングを想定しているとVairietyが報じています。

Microsoftはストリーミングが主流の未来を描く

ユービーアイソフトのイヴ・ギユモCEOの目には、ハッキリとストリーミングの未来が見えており、Varietyの取材にて「時間とともに、より多くのプレーヤーがストリーミングできるようになります。家に大きなハードウェアを置く必要は無くなります」「家庭用ゲーム機はあと1世代、その後はみんなストリーミングでいけますよ」とコメント。MicrosoftのXbox統括フィル・スペンサー氏は、ギユモ氏よりもオブラートな言い方ではあるものの、「Xbox OneでMinecraftをプレイしている人よりも、どんなゲーム機や端末でもとにかくMinecraftをプレイするという人のほうに関心があります」と同記事で発言。スペンサー氏いわく、特定の端末で特定のゲームをプレイするのではなく、好きなゲームを自分の持っている端末でプレイできるというのが重要なのだといいます。

ハードウェアに依存しないゲームというのをMicrosoftが実現するには、いくつか方法があるでしょうが、中央サーバからストリーミングするというのはその最たるもの。これはスペンサー氏も認めており、MicrosoftのE3カンファレンスにて、どんな端末にも家庭用ゲーム機品質のゲームを提供できるようストリーミングサービスを開発中だと発言しています。もちろん、ストリーミングが唯一のゲーム提供方法になるとは限りませんが、Microsoftはこれを主流とした未来を描いていると言えるでしょう。

すでにインフラを構築しているソニー

では、ソニーはどうでしょう。Microsoftと違って、すでにかなりパラフルなストリーミングのインフラができています。PlayStation Nowは、プレイヤーの端末に直接ゲームをストリーミングしていますし、PS Vueはテレビストリーミングもできます。PlayStaion 5は、ストリーミング主流の端末となるか否か、それはまだわかりません。AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)ベースのハードウェアになるという噂もあります。PS4もXbox OneもAMDのCPU&GPUsベースなので、まぁそれはいいとして、問題はその中身。

フォーブスによれば、AMDのPS5用ハードの開発によって、同社のパソコン用GPU開発サイクルが影響を受けているといいます。PS5に注力した新たなGPUアーキテクチャ=Naviは、7nmプロセスを基本としており、これとZen(マイクロアーキテクチャ)ベースのCPUが連携するのだとか。この2つのプロセッサは、チップ内蔵の半カスタマイズシステムか、従来のパソコンのような構造のどちらかになるのでしょう。前者は、AMDが長年家庭用ゲーム機用にやっている方法なので、こちらだとシンプルですね。

新たなGPUアーキテクチャ「Navi」って実際どうなの?

さて、PCGamesNは、新たなGPUアーキテクチャNaviは、パワフルではあるものの、今のVegaやNvidiaの10シリーズほどではないと報じています。言わば、Naviのパワーは中堅どころだと。さらに、馬力で劣るだけでなく、Zenのような能力も持ち合わせていないとか。Zen CPUは、AMDのInfinity Fabricと呼ばれるテクノロジーを使い、複数のCPUを一緒にAMDとペアリングし、これを1つの超馬力なプロセッサと認識しソフトウェアを走らせるというもの。Naviもこれができて当然と思われていましたが、AMDのDavid Wang氏が、PCGamesNの取材にて「」と回答。これを踏まえると、2020年にリリースされるだろうPS5は、今現在2018年時点で存在するゲームPCと同じパワーは持ち得ない可能性があります。

…困りますね。だって、Varietyいわく、次世代ゲームはトップクラスのパソコンシステムを必要とするって話ですもの。たとえゲーム機ができる限りのパフォーマンスをいれたとしても、たとえゲーム開発者が特定端末のみを想定してデザインしたゲームをコーディングしたとしても、それでも今日のゲーム機よりもパワーがないのだとしたら、ゲームを作る側は困ってしまいます。ただ、もしソニーがゲームストリーミング主流の世界を描いているのなら、このハードの問題は大したことではありません。馬力がいるゲームはストリーミングすればいいんだもん。

良質なストリーミングには、良質なネット環境が必要

次世代ゲーム業界は、ゲームストリーミングを想定していると思わざるをえない報道が多いです。だとすれば、やっぱり問題がありますよ。Nvidiaは、すでに自社のゲーム機Shieldへのストリーミングを行なっていますが、その使い勝手は満足できるとは言い難いもの。だって、ストリーミングでヌルヌルスムーズにゲームしようと思えば、良質なネット環境が必要です。4K、HDR、60fps以上のクオリティでゲームしようと思えば、広い帯域幅が必須と言えるでしょう。ただ、残念なことに、今の米国では多くのゲーマーが、スムーズにゲームできるレベルのインターネット環境にないのです。

たとえば、前述のNvidiaのストリーミングゲームサービスだと、720P/60fpsには15Mbps、1080p/60fpsには25Mbpsのネット環境が最低必要となります。これ以上のクオリティのゲームならば、ネット環境もより高度なものが求めら得ます。現在のPS4 ProやXbox One Xのゲームクオリティならば、優に30から40Mbpsは必要でしょう。

一方で、Akamaiのレポートによれば、米国における一般的なネットスピードは18.7Mbps。25Mbpsのネット環境があるのは、わずか5分の1のみ。5家庭のうち1家庭だけが、ゲームストリーミングを楽しめるわけです。ただ、これ以上ゲームのクオリティがあがれば、それも怪しい。

インターネットのコストを考えると、これまた頭がいたい。あるレポートでは、米国はインターネット料金が最も高い国の1つだと言われています。アメリカは25Mbpsで月平均66.17ドルで安いほうから114位。もちろん、アメリカ国内でも住んでいる場所によって、スピードや料金は異なります。ちなみに、同レポートで、日本は月平均50.26ドルで82位です。

ネット環境が向上(コストダウン含む)すれば、ゲームストリーミングもいいでしょう。ただ、ゲームストリーミング時代が先か、ネット環境が向上するのが先か…。米国連邦通信委員会は、昨年、ブロードバンドの価格を抑えるためのプログラムを行ない、地方のネット環境向上のための20億ドル予算の計画をうちだしたものの、まだ計画は計画のまま実行されず。

ストリーミング化を次世代ゲームの主流に位置付けるならば、それは、より美しいグラフィック、より豊かなゲーム体験ではなくなってしまうでしょう。そして全ゲーマーが公平にプレイできるモノでもなくなってしまう可能性があります。ゲームストリーミングをメインとしたゲーム機は、まだ時期尚早。将来的にそこに向かうのはわかりますよ、ただ次モデルでそれを実現するのはまだ早いよ、不安だよ。


Image: Alex Cranz(Gizmodo US)

Alex Cranz - Gizmodo US[原文
(そうこ)

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