パペットの恐竜に感情を与える方法とは? 映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』アニマトロニクス担当者に聞く

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  • author 中川真知子
パペットの恐竜に感情を与える方法とは? 映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』アニマトロニクス担当者に聞く
Image: (c)Universal Pictures

恐竜たちも立派な役者。

公開が待ち遠しい『ジュラシック・ワールド/炎の王国』。今作はネタバレを最小限にしようということでトレイラーに使われた映像は前半約1時間のみ、後半は全く明かされていません。トリロジーの中間話であること、JA・バヨナ監督(『永遠の子供達』すごい怖い‼︎ )作品ということで「暗くなる」「ホラーちっく」と言われている本作ですが、その怖さの演出に一役買っているのが、近景用アニマトロニクスの恐竜たちです。

今回、ギズモードは『ジュラシック・ワールド/炎の王国』で怖さと迫力、真実味の鍵を握るアニマトロニクスを担当したニール・スカンラン氏にお話を伺いました。


『ジュラシック・ワールド/炎の王国』あらすじ


『ジュラシック・ワールド』の事件から3年後が舞台。イスラ・ヌブラル島で火山噴火が起こり、島に残されている恐竜が絶滅の危機に瀕する。元ジュラシック・ワールド運用管理者だったクレアは事件の後、恐竜保護活動を行なっており、再び絶滅の危機にあるイスラ・ヌブラル島の恐竜を保護するため、元恐竜監視員のオーウェンとともに島に向かう。ふたりは無事に恐竜を脱出させた後、恐竜を利用した陰謀が動き出していることを知るーー


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Image: (c)Universal Pictures, (c)Universal Studios and Amblin Entertainment, Inc. and Legendary Pictures Productions, LLC.

──『ジュラシック』シリーズでは、これまでにもアニマトロニクスが使用されていましたが、それはレガシー・エフェクトが担当していました。でも今回、『炎の王国』ではニールさんがすべてのアニマトロニクスを担当しているんですね?

ニール:その通りだ。イエスだよ!

──この映画ではアニマトロニクスが重点的に使用されていると聞きました。CGIの仕事と比べて、どのぐらいのショット、どのぐらいのシーンが、あなたのチームによるものなんでしょう?また『ジュラシック・パーク』と同じように、フルスケールの恐竜は作りましたか?

ニール:この映画には、シリーズ史上最も多くの恐竜が登場する。プラクティカル・エフェクト(カメラの前で実際にやるエフェクト)の視点からいうと、脚本家のコリン・トレボロウはとても有能だ。親しみあるとてもエモーショナルなシーンを書くことにおいてね。彼は脚本を書く際に、プラクティカル・エフェクトについても考えていたんだ。だから僕らの仕事は、役者たちや監督にそういったエモーショナルな瞬間を見せること。映画の中でまだ見たことのない、人間と恐竜の間の繋がりについてね。たとえば、ブルーを抱きかかえるとかね。ブルーは怪我をしていて、どうしても手術が必要なんだけど、その展開を中心としたシークエンスがある。

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Image: (c)Universal Pictures, (c)Giles Keyte

そして彼らが、発送用のコンテナというとても狭い環境で、T-レックスと接触するシークエンスがある。それから、新しい恐竜としてインドラプトルがいる。そして、僕らはそれらの恐竜のための要素を作るんだ。頭、首、手、足というね。プラクティカル・エフェクトというのは、それらの要素をどの場面で使うかということおいて、とても明確だ。だから、ぼくらはいくつかのことをやった。

まず、CGI(のチーム)と話して、全体を通してビジュアル・エフェクトを見ていくこと。そして、「その瞬間でアニマトロニクスを使えば素晴らしいものになる」と相談するんだ。同時に、「もしそのシーンをプラクティカルでやろうとしたら、うまくいかない」と言う話もできる。たとえば、僕らは恐竜を走らせることは出来ない。だから、CGがそれをやるんだ。

この2つのテクノロジー、2つのテクニックは素晴らしい融合関係になっているよ。僕らは技術をシェアするんだ。僕らは何かの恐竜を作りあげると、それをスキャンし、それがCGのチームに行く。そしてCGチームが仕事をし、そのファイルを僕らに再送し、それをもう一度プリントアウトする。僕らの仕事はシークエンスにより関わるものなんだ。3~4つくらいの鍵となるシークエンスに関わった。

その鍵となる部分以外で、20か30くらいのショットも担当した。プラクティカルな要素がある恐竜が関わっているショットでね。

──つまり、ワイドショットの多くではCGIを使い、閉鎖された環境ではプラクティカル(アニマトロニクス)が使われているんですね?

ニール:そうだね。J・A・バヨナ監督は、ブライス・ダラス・ハワード(クレア役)とクリス・プラット(オーウェン役)にプラクティカルを使った撮影機会を与えることに積極的だった。恐竜に反応したり、一緒に演技する上で、とてもリアルな反応を得るためにね。

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Image: (c)Universal Pictures

──スピルバーグ氏が手がけた一作目の『ジュラシック・パーク』から、プラクティカル・エフェクトは使われていました。アニマトロニクスのテクノロジーは、時間の経過と共に、どのように変化していったのでしょう?

ニール:それが不思議なんだ。人々は、その質問への答えとして「技術的にもっと進歩した」と僕らが言うと予想する。でも実際に僕が学んだ知恵としては、ほとんどの場合、シンプルなほうがよいものになるということだよ。

僕のバックグラウンドは、パペッティアリング(人形使いをすること)やパフォーマンス寄りだ。だから、僕にとって最も重要なのは、今自分たちが作っているキャラクターたちを僕らが演じて、彼らに感情を与えること。そして、それらを演出することなんだよ。

だから、僕らのアプローチは、アニマトロニクスから余分なものを取り除き、それを舞台の要素として見せることだった。たとえば、ブルーが手術台の上にいる時、彼女の下には棒やケーブルを持った15人以上のスタッフたちがいる。彼らはコリオグラフ(振り付け)のチームとして参加し、ブルーに命を吹き込むんだ。人の手で動かすことで、エレクトロニクス(電気を使うもの)やハイドローリック(水圧を使うもの)、ニューマチック(空気圧を使うもの)といった装置の心配をする必要がないということを意味している。僕らがやっているのは、人間と仕事をすることなんだ。

僕の考えとしては、そういったテクノロジーでは、人間がやるようになにかを上手に動かすことはできない。生き物を動かす上で、僕ら自身がもっとも優れた、動かす物(人)なんだ。だから、何かを動かしたり、それらに演技をさせたりするのに人を使うというアイデアは、この作品で僕らが進めた哲学だ。そして、その哲学を、僕らは他のプロジェクトでもやっているよ。


パペットを使う利点と苦労

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Image: (c)Universal Pictures

──前作の『ジュラシック・ワールド』ではレガシー・エフェクトが手がけた感情のある死ぬ間際のアパトサウルスが登場します。この感情を表現するために相当な努力をしたようですが、本作の「ひときわ苦労した点」はなんでしょうか。

ニール:すべてが異なる理由をもつチャレンジだったよ。僕らは、監督が恐竜たちにそういった感情を与えたがっていることをとてもよく理解していた。だから、僕らが恐竜をデザインする時には、目の動き方、顔の動き、首に動きが必要だとか、空気袋を使うとか、そういったことを思案し、そして、演技についても一生懸命考えた。だから、それらがすべてチャレンジだったんだ。

(役者たちと)共同で行なう演技に人間のスタッフを使うことの素晴らしさは、僕らみんなが監督の考えを聞くことができて、そこに自分たち自身の感情も持ち込めるんだ。ブルーの頭を操っているパペティア(人形使い)の一人であるロビンに、僕や誰かが「もう少し悲しそうにやって欲しい」と言う。そしてロビンは、「悲しそう」というものがなにか理解していく。彼と「悲しそうに」の間にテクノロジーは存在しないんだ。

そういった演技をする前に、僕らはそのシーンのリハーサルを何度もする。そして、監督にビデオを見せるんだ。そうすれば、僕らがやろうとしていることを彼は確認することができる。そして最終的に、現場で彼は恐竜たちをもう一人の役者として見るんだ。スペシャル・エフェクトではなくね。監督がブライスに「こういう演技をすることはできる?」と言った時、彼はブルーに向かっても「君はこれができる?」と言うことができる。監督は「ロボットに話している」と考えずに済むんだ。

──それはとても自然なプロセスですね。では、パペティア(人形使い)が、その指示をどう解釈するかによるわけですね。

ニール:そうだね。僕は、「戦火の馬」の舞台劇にとても刺激を受けたんだ。パペティアの素晴らしい仕事ぶりを見て、その演技に観客がどんな反応するかを知ることができた。だから、その通りだと思うよ。


業界を離れたことでわかったCGとアニマトロニクスの理想


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Image: (c)Universal Pictures


──『ジュラシック・パーク』以降、人々はCGIのビジュアル・エフェクトを積極的に使っていましたが、今はプラクィカル・エフェクトやアニマトロニクスの良さが再認識されています。あなたは2011年に1度スタジオを閉めて映画業界から離れていますが、その間に映画業界のVFXの変化をどう見ていましたか。

ニール:そうだね。僕は少しの間この業界をリタイアしていた。僕は会社を20年近く運営していて、ある日、周囲を見渡して、「デジタル・エフェクトは見事だ。とても素晴らしい。おそらく(この仕事を辞める)時期だ。僕は素晴らしい経験をしたし、人生でずっと大好きだった仕事をやることができた。それになんの文句があるんだ?」と思った。

でも何が起きたかというと、CGIはとても素晴らしくてリアルに見えるけれど、観客の僕らとしては、それを受け入れるのが難しくなってきたんだと思う。

なぜなら、(CGIの技術は)「あなたたちは、これがリアルなものだと信じますよね」と言っているけれど、観客は実際、それが本物じゃないのを知っている。でも、ビジュアル的に非常にリアルなものを見せられることで、僕らはそれが本物だと受け入れることに対して格闘してしまう。


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Image: (c)Universal Pictures


でも、プラクティカル・エフェクトは僕らを少し納得させる。僕らに「オッケー、これは本物だ」と思わせる、なぜなら、実際にリアルなものだからね。「登場人物達が触れるのを見ることができる。それが本物だとわかる。僕の目は騙されないよ」と感じさせるんだ。それが僕の理論だよ。なぜ人々がもっとプラクティカル・エフェクトを見たいと思うかについてのね。

観客たちはまず、キャラクターたちとの繋がりを感じたがっている。そしてそれからCGに驚かされたいんだ。それこそが映画を観に行くという経験のすべてだ。ある時期はプラクティカル・エフェクトがその唯一の解決法だった。でも今はビジュアル・エフェクトを一緒に繋ぎ合わせるのを助けるためのビジュアル・メディアの役割を果たしているね。


デザイン面での関わり方


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Image: (c)Universal Pictures

──『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』では監督と相談しながらクリーチャーのデザインをしたそうですね。『ジュラシック・ワールド/炎の王国』には新種の恐竜が出てきますが、これはあなたと監督が相談しながらデザインしたのでしょうか?

ニール:そうだね。その通りだよ。監督がILMのアーティストたちと考えていた初期のデザインがあったから、僕らのチームのスカルプター(彫刻家)たちが模型を作ったんだ。小さいバージョンのね。それは監督を手助けできたと思う。なぜなら、彼はカメラを通してそれを見て、どんなイメージになるかを確認することができる。彼は自分が思い描いているものを具体的にチェックして、「もう少し背が高いといいね」とか、「首がちょっと長いね」とか、「腕が細いね」と言えるんだ。僕らはそうやって彼と仕事をした。

それから、フルスケールのものも彫刻した。彼はそれを見て、同じ作業をすることができた。「もう少し大きさが欲しい」とか、「もう少しシワがあるといいね」と伝える。そして、僕らはその要素を加えるんだ。とても自然で、協力的なやり方だよ。僕らができる限り多くの情報を監督に渡して、彼に僕らを導く上でね。

──最後に、あなたのお気に入りの恐竜はなんですか?

ニール:僕は相変わらず、T-レックスが大好きだよ!


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Image: (c)Yoshifumi Hosoya



本作はアニマトロニクスに焦点を置いたトレイラーも公開されています。特にTレックスの頭部との絡みは迫力満点。みているこちらもハラハラするほど。

CGの歴史を作って来た『ジュラシック』シリーズが原点に戻ってアニマトロニクス満載で挑む『ジュラシック・ワールド/炎の王国』は7月13日(金)ロードショー。


Image: (c)Universal Pictures, (c)Universal Studios and Amblin Entertainment, Inc. and Legendary Pictures Productions, LLC., (c)Giles Keyte, (c)Yoshifumi Hosoya
Source: 映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』公式サイト

中川真知子