ホラーやサスペンス要素が高くなると繰り返し強調されている『ジュラシック・ワールド/炎の王国』。その言葉におそらく偽りはないでしょう。なにせ監督は長編デビュー作『永遠の子供たち』で観客を怖がらせ陰鬱な気分にさせたJ.A.バヨナなんですから!
監督の名前と過去作を知ると、これまでの『ジュラシック』シリーズとは別物路線になるだろうことがうかがい知れる本作。では、肝心のバヨナ監督はどんな気持ちで作品に挑んだのでしょう。ギズモードがインタビューしましたよ!
シリーズのファンとしてファンを意識した作品を

──監督も『ジュラシック』シリーズのファンだと思いますが、この仕事をもらった時、どのような心境でしたか?
J・A・バヨナ(以下、J):もちろん、とてもエキサイティングだったよ! また、大きな責任を感じた。なぜなら、とても巨大なシリーズだからね。僕らはみんな『ジュラシック』シリーズを見て育ったんだ。同時に、自分がその映画を監督することになったと分かった瞬間から、とても興奮したよ。
──本作も過去作へのオマージュなどで『ジュラシック』ファンを喜ばせる内容になっていると思いますが、同時に、これまでとは違う要素はなんでしょうか?
J:初期の段階で、僕はコリン(・トレボロウ)とかなり話しあった。僕らがこの作品でどんなものを見たいかというイメージについてね。彼は前作で、恐竜がスクリーンに現れ観客を驚かせた(1作目の)驚嘆を再現する上で素晴らしい仕事をした。僕らは互いに、『ジュラシック・パーク』のドキドキ感と恐ろしさを再び取り戻したかったんだ。僕らはその事についてずいぶん話しあった。

僕が彼に本作のストーリーについて話を聞いた最初の瞬間から、「このストーリーは島を離れた後、どこに向かっていくのだろう」と、とても興奮したよ。島で起きる出来事が物語の中盤あたりまでになるのだけれど、その後、とても特別な展開へと向かっていく。“ジュラシック・サーガ”にとって、新たな展開にね。
ダークにすることは最初から決まっていた

──この第2章は、少しダークな方向に向かうように見えますが…。
J:そうだね。
──もっとサスペンスの要素を入れ込もうとしたわけですね。ダークな方向に展開されるというのは、最初から狙っていたのでしょうか?
J:そうだね。また、コリンの当初からの狙いでもあった。恐竜を室内で扱うことが出来るのはとてもエキサイティングだよ。そして、ゴシックの要素もある。壁に映る影で遊んだりできるんだ。長い廊下とかね。僕自身が非常に心地よさを感じる、こういった色んな要素が含まれているよ。
──つまり、セットやカメラのショットの構図をイメージする時、こういった要素を盛り込むことについて、先に考えていたんですね。
J:まさにそうだ。僕が『ジュラシック』シリーズについて考える時、大抵の場合、“映画”として考えていない。“シーン”と“セット・ピース”(シチュエーション)として見ているんだ。僕はそれらのシチュエーションを、どのショットも慎重に構成し、たくさんの労力を注ぐ。それはかなり楽しい作業だよ。僕は、観客のみんなと映画を観るのが待ちきれない。そのほうがずっと楽しいからね。

──昔の作品で、あなたのお気に入りのシチュエーションはありますか?
J:本当にたくさんあるよ。中でも『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』のものを選ぶかな。トラックが崖からぶら下がり、ジュリアン・ムーアがその窓ガラスの上にいる。そして、そのガラスが割れるんだ。その瞬間は大好きだよ。『ジュラシック』シリーズの中で僕が最も気に入っているシーンだと思う。
『ジュラシック』シリーズは今日に通じている

──予告映像を観て、みなさんがあるメッセージを伝えようとしているのを感じました。おそらく、ペット産業の問題や、動物実験について。この作品では社会的なメッセージを伝えようとしているのですか?
J:僕はいつも、スティーヴン・スピルバーグがエンターテイメント的要素を気にかけながら、同時に重要なアイデアを作品に含ませていることに感謝を覚えていた。
『ジュラシック』シリーズを見るのは楽しい。でも、それらでは多くの重要な題材も扱っている。特に、自然に対する人間の役目は何かという考えについてね。また、科学に対してもだ。そういう意味で、『ジュラシック』シリーズはとても今日に通じるものがある。これらの作品は、僕らが今住んでいるこの世界について語っていて、メタファーになるんだ。新しい『ジュラシック・ワールド』ではそういった要素が顕著で、この世界を非常に具体的な方法で語っている作品だよ。とても明白な方法でね。
素晴らしい俳優陣との仕事
──コリンが監督した前作『ジュラシック・ワールド』は、どんな点が好きでしたか?
J:僕は、恐竜が(自分たちの)傍にいる状況の素晴らしさを、コリンが見事に捉えていたことに感謝している。パークのオープンが見られたり、自分たちの前に恐竜たちがいるというアイデアは、とても見事だ。そして、メインのキャラクターたちがとても好きだよ。オーウェンとクレアはナイスなキャラクターで、相性がぴったりだ。演じるクリスとブライスはとても素晴らしい仕事をした。彼らなしに新たな『ジュラシック』シリーズをやることはありえないよ。
──クリスとブライスの話が出ましたが、彼らとの仕事はいかがでしたか?
J:彼らとの仕事は純粋に喜ばしいよ! 僕にとって、続編作品をやるのは今回が初めてだ。仕事が始まると、キャラクターたちの間に関係がすでに作られていることに気づく。なぜなら、すでにその関係が生まれた作品があるんだからね。だから、あまり何度もリハーサルをする必要はない。なぜなら、彼らは完璧にお互いのことを知っているから。
クリスとブライスは一緒に仕事をするのがとても上手だ。彼らを初めて見た瞬間から、(ふたりの間に)大きなスクリーンからも伝わる自然な相性があるのがわかったんだよ。
──クリスやブライスからアイデアや提案はありましたか?
J:イエスだ。現場で多くのアイデアをくれて、とてもエキサイティングだった。特にクリスはね。彼はとても楽しい人だ。音楽の演奏者みたいなんだよ。すべてのテイクを違うようにやるんだ。それは、演奏者にパーティーの場を与えるようなものだよ。そして、毎テイク良くなっていく。だから素晴らしい。先ほど言ったように、彼らと仕事をするのは、素晴らしい喜びだよ。
シリーズ監督の関わり、シリーズへの思い

──撮影する前に、スティーヴン・スピルバーグとコリン・トレボロウとは、どういったことを話し合いましたか?
J:コリンとスティーヴンと一緒に、僕らはストーリーについて長いこと話し合った。スティーヴンと同じ席で、ショットやセット・ピースの構成について話すのは大きな喜びだったよ! 僕にとって、これらのアイデアについて彼の反応を見るのはとても特別なことだった。
──スピルバーグ氏は本作の仕上がりに満足されていますか?
J:彼はとてもハッピーだよ!
──今年は、シリーズ1作目の『ジュラシック・パーク』が公開されてから25周年目になります。あなたのお気に入りの作品はなんですか?
J:僕のお気に入り? それは最初の『ジュラシック・パーク』だ。なぜなら、あれは恐竜映画のジャンルを変えた作品だから。僕のお気に入りのシーンは、『ロスト・ワールド』の中のものだ。さっき話したシーンだね。でも、1本の映画としてお気に入りを選ぶとしたら、『ジュラシック・パーク』だと思う。
──1作目の『ジュラシック・パーク』を見た時はどのように感じましたか?
J:それはとても明確で、自分が映画史を変える瞬間を見ていることが分かった。なぜなら、その瞬間から、自分が想像出来ることが現実的な方法でスクリーンに映し出すことが可能になったんだ。それは重要な瞬間だった。映画にとってね。僕にとってじゃなく。映画にとってね。
──今回のトリロジーの最終章は、2021年に公開されます。監督はそれにも関わるのでしょうか?
J:僕はまずこの作品を仕上げないといけない。それから次の作品について考えるよ。まずはこの作品を完成させる必要がある。
アニマトロニクスの積極的な採用

──先ほどアニマトロニクスを担当したニール・スカンランと話しましたが、素晴らしかったです。このシリーズではずっとアニマトロニクスを採用しています。監督とニールの仕事について話してもらえますか?
J:恐竜をスクリーンに蘇らせるのは、インダストリアル・ライト&マジック(ILM)、ニール・スカンラン、プロダクション・デザイナー、撮影監督の間で行なわれる共同作業によるものなんだ。だから、僕らはみんな一緒に密接な仕事をした。その成功の秘密はそれぞれのテクニックを混ぜ合わせることだ。
アニマトロニクスとCGIをミックスする。何がリアルで、何がそうじゃないかを(観客が)想像できる瞬間がないようにしながらね。もしいつもCGIばかりなら、飽きてくるのはとても簡単なこと。アニマトロニクスは多くのリアリティをもたらす。特に現場の役者たちにとってはね。でもアニマトロニクスにも限界があるから、時にはある決まったショットのためだけに構成を考えて、両方の技術をブレンドし、同じシーンの中でそれらをミックスするんだ。
──最初から、これはCGIでやって、これはアニマトロニクスでやるというのが分かっていないといけないのですか?
J:間違いなくそうだね。こういったシーンは撮影を始めるその前に長い間練られていて、撮影前に構成が描かれているんだ。セットに行く前に、僕たちは深く話し合っているんだよ。
──では最後に、日本のファンへ伝えたいことはありますか?
J:僕らは、出来る限り最高の『ジュラシック』シリーズを作るために一生懸命働き、そして、多くの愛を注いだよ。とてもエモーショナルなストーリーだ。自分たちが作り出したものへの自分たちの役割と関係が描かれている。同時に、『ジュラシック・パーク』で僕らみんなが大好きだった恐怖感を復活させている。だから多くの楽しさを味わう準備をするように警告するよ! それから、少し怖がる準備をすることもね!
『ジュラシック・パーク』を見たときのワクワクと隣り合わせに存在する恐怖を楽しめる予感がする『ジュラシック・ワールド/炎の王国』は7月13日からロードショー。
Image: (c)Universal Pictures, (c)Giles Keyte, (c)Universal Studios and Amblin Entertainment, Inc. and Legendary Pictures Productions, LLC.
Source: 映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』公式サイト
(中川真知子)