ありがとう。手話のできるゴリラ、Kokoが亡くなる

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ありがとう。手話のできるゴリラ、Kokoが亡くなる
Image: © 2018 THE GORILLA FOUNDATION via the Gorilla Foundation

人と心を通わせるだけでなく、手話で会話していたゴリラのココが、46歳眠ったまま息を引き取ったと、ゴリラ保護の非営利組織である米ゴリラ財団が発表しました。

ゴリラの感情と認知能力を学ぶ上で、彼女の存在は計り知れない

50年も生きるゴリラは滅多におらず、46歳は立派な大往生なんだそうです。

1971年7月4日、メスのローランドゴリラが生まれ、「花火子(はなびこ)」と名付けられました。

のちに「ココ」という愛称で呼ばれるこのゴリラは、心理学者のペニー・パターソンさんの論文プロジェクトの一環で幼い頃に手話を教えられました。時間をかけて1,000種以上の手話を理解し、その内の600種類を日常的に使っていたそう。もともとパターソンさんのプロジェクトはサンフランシスコ動物園で行なわれており、現在、世界で最も長く実行されている猿言語研究とされています。

ココはナショナル・ジオグラフィックの表紙を2度も飾りました。どちらもユニークで、1978年には鏡に写り込んだ自分を撮影したもの、1985年にはペットの猫を可愛がる様子をとらえたものでした。

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「Good」の手話で猫をもらった喜びを伝えるココ

研究者によると、ココは『Three Little Kittens』や『長靴をはいた猫』といった絵本を楽しみ、1983年にはペットの猫をほしがったそうです。ぬいぐるみの猫を渡されると、拒否して「悲しい」というサインを送ってきたんだとか。最終的に猫をプレゼントされ、「オールボール」という名前をつけました。

ココは子猫と何時間にもわたって遊んでいましたが、かまい過ぎて猫が嫌がったそぶりを見せたときには「不快な」「猫」といったサインを見せました。この関係は書籍にもなるほどでしたが、残念なことにオールボールは車に轢かれて死んでしまいます。オールボールの死を知ったココはひどく悲しみ、「猫」「泣く」「さようなら」と「ココ 愛」と伝えました。

また、ココはベティ・ホワイト、フレッド・ロジャーサンド、ロビン・ウィリアムスといった有名人と交流があったことでも知られています。

Video: iain menzies/YouTube

2012年にはリコーダーを学び、これまで人間以外の霊長類にはできないと思われていた呼吸コントロールがゴリラにも可能であることが証明されました。

手話プロジェクトを進めるなかで、語学者のノーム・チョムスキーさんや認知学者のスティーブン・ピンカーさんなどから、「ココは自分が出しているサインの内容を理解しているのではなく研究者の手の動きを真似しているだけ」もしくは「ご褒美をもらいたくてやっているだけ」といった懐疑的な意見も出ました。しかし霊長類の知能とコミュニケーションスキルの高さが明らかになるにつれ、こうした意見は少数派になっていきました。

近年、研究者はチンパンジーボノボオランウータンにも手話を教えています。その結果、彼らが言葉を理解し伝えることができるいっぽうで、構文や適切な文法を使うことはできないことがわかっています。

人間以外の霊長類は人間のような声帯を持っていないので私たちと同じように喋ることはできません。しかしグラフィックベースの象徴的な言語を通してなら感情を表現することができます。ココは生涯を通じて私たちに霊長類のもつ高い能力を教えてくれました。

その昔、研究者がココに「動物は死んだらどこに行くの?」と聞いたことがあります。ココは「心地いい穴の中」と答えたのだそう。きっと、今頃ココは心地いい穴の中にいるのでしょう。


Image: © 2018 THE GORILLA FOUNDATION via the Gorilla Foundation
Source: Technology, Twitter(1, 2), YouTube

George Dvorsky - Gizmodo US[原文
中川真知子