演出や登場キャラクターのファン・サービスがたまらない:映画『ハン・ソロ』レビュー【ネタバレあり】

  • 19,666

  • author 傭兵ペンギン
演出や登場キャラクターのファン・サービスがたまらない:映画『ハン・ソロ』レビュー【ネタバレあり】
Image: (C)2018 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

ファン大喜びの楽しい作品。

海外公開から遅れること約1ヶ月、待ちに待った『スター・ウォーズ』のスピンオフシリーズ最新作『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』。

監督交代騒動があり海外の評価が二分したことでも話題になってしまった作品ですが、実際どうだったのかという大事なところを語っておきたい。しかし、やっぱりネタバレせずには話がまったくもって始まらない。

というわけで、今回も『最後のジェダイ』に引き続きガッツリとネタバレありでレビューをしていきます。それに合わせて『スター・ウォーズ』のファン向けサービスシーンの小ネタのシーンの簡単に解説をしていきます。まずは本編をご覧になってからお読みください。

繰り返しになりますがネタバレがある内容ですので、まだ見ていないという人はすぐさまこのページを閉じ、できる限り早く映画をご覧くださいね!


さて、結論から言うと……安心しましたね。

『スター・ウォーズ』のならず者たちが大好きな私としては、最高にかっこいい密輸業者のハン・ソロの映画なんだからつまらないわけないはずがない……のですが、正直言って観終えるまでは一抹の不安がありました

『スター・ウォーズ』の有名キャラクターたちがメインでは登場しないにもかかわらず、内容的にも興行的にも大成功を収めた『ローグ・ワン』に続き、若きハン・ソロの映画が作られると知ったときはそりゃもうワクワクしましたよ。しかも監督は傑作『LEGOムービー』のフィル・ロードとクリス・ミラーという最強の二人組。一体彼らがどんなものを作りあげてくるのか、楽しみでしかたありませんでした。

それからずいぶんたって、ハン・ソロを『ヘイル、シーザー!』のオールデン・エアエンライクが演じることが明らかに。最初はちょっと「ハン・ソロには見えないな」と思いながらも、チューバッカを含む豪華なキャスト陣が監督と共に写っている楽しげな撮影現場の写真も公開され、期待は高まり続けていきました。

ところが、「クリエイティブ的な方向性の違い」から監督コンビは降板。監督コンビが脚本とはかけ離れたシーンを撮るスタイルや、今作をコメディ映画にしようとしたところをルーカス・フィルムが好まずクビになったという噂話もありますが、真相は不明。

とにかく優秀であることは折り紙付きの監督が撮影途中で降板というかなりヤバそうな雰囲気に、いくら監督の後任がベテランのロン・ハワードに決まったとは言え、不安を抱かざるを得なかった。

しかし、蓋を開けてみると、かなり手堅い作りの安心できる作品であり、やけに『スター・ウォーズ』ファン向けのサービスシーンの多い作品でした。

旧作リスペクトに溢れた、ファン好みの演出

ストーリーはならず者の自由な生き様に憧れた青年ハン・ソロが本物のならず者たちと出会って親友も得て、身を立てようとする中で裏社会の現実を思い知らされるというほろ苦い成長と冒険の物語。

しかし、決して暗い話ではなく、列車強盗やならず者同士の騙し合いなどなど西部劇っぽいシーンが一杯で、昔の娯楽映画らしい懐かしさを感じながら安心しながら気楽に楽しめる作品になっていたと思います。

そんな古き良き明朗で楽しいストーリーも、見る人によっては新鮮味に欠けるありがちで退屈な物語であり、そこが評価が分かれた原因なのかもしれません。

今までとは大きく違うことを次々やった『最後のジェダイ』と比べると、デトネーターを手に交渉するところなどなど旧作のセリフ&シーン再現/オマージュが目白押しで、(ファンとしては嬉しいけど)かなり見たことのある気がする『スター・ウォーズ』だったのは確か。しかし、私はそういう『スター・ウォーズ』も良いんじゃないかと思います。

そしてなんと言っても最高のレース映画『ラッシュ/プライドと友情』を撮ったロン・ハワードの作品ということで、冒頭のスピーダーでのカーチェイスや、スウープ・バイクと輸送機の戦いなど乗り物を使ったスピード感のあるカッコいいシーンがいっぱい見れて特に楽しかった! 『最後のジェダイ』以上にかなり乗り物のおもちゃが欲しくなりましたね!

新旧キャラクターを演じる役者陣もすごかった

そんな素敵な乗り物アクションを魅せてくれたオールデン・エアエンライクの若きハン・ソロは、実際に映画を見る前まではどうしても違和感がありましたが、ハリソン・フォードの演技の相当な研究と練習をしたようで、なかなかなハン・ソロに仕上がっていたと思います。

ハン・ソロは『スター・ウォーズ』第一作の『新たなる希望』には自己中心的で皮肉屋のならず者だけど最後はなんだかんだでルークを助けてくれるカッコいい男として登場した都合上、今作の中でハンを成長させつつも完全な善人としても悪人としても描ききることはできないという前日譚ならではの難しい制約の中で、ストーリーの中でちゃんと理由を作って最後は『新たなる希望』前夜のハン・ソロになる仕上がりになっていましたね。

後半で自分の師ともいうべき悪党ベケットを容赦なく撃ち殺すシーンは、そういったハンのキャラ性の表現であり、『新たなる希望』でハン・ソロがグリードを先に撃って殺すシーンにも繋がるものでした。

実はそのグリードの射殺シーンは『新たなる希望』の特別編でハン・ソロはグリードが撃ってから撃ったという加工がされたためハンの冷酷さは抑えられてしまいファンの間で物議を醸しに醸したのですが、今回のシーンは「ハンは本来最初に撃つ男」なんだという主張もあったのかもしれません。

そんな具合で主人公も上出来だったのですが、個人的に最高だったのはランド・カルリジアン。残念ながらこの映画のタイトルは『ランド』じゃなくて『ハン・ソロ』なので、ハンに比べるとどうしても登場する時間は少ないですが、同じくらいかそれ以上に目立っていました。

ランドを演じたドナルド・グローヴァーは映画『スパイダーマン:ホームカミング』やドラマ『アトランタ』、『コミカレ』などで知られる俳優であると同時に、チャイルディッシュ・ガンビーノ名義でラッパーとしても活躍しグラミー賞の獲得経験を持ち、さらにはスタンダップコメディアンもやる超多彩な人物。

最近はラッパーとしてのチャイルディッシュ・ガンビーノ名義でリリースした衝撃的なMV「This Is America」でも凄まじい話題となり、今かなり来ている男でもあります。そんな彼が演じる若きランドは、後の姿と同じく全身から自信とセクシーさが溢れ出していると同時に、『帝国の逆襲』の頃とは違う未熟さ・若さも兼ね備えていて、オリジナルのランドにも負けない素晴らしいキャラクターになっていました。

ドナルド・グローヴァーは、オリジナルのランド役のビリー・ディー・ウィリアムズに顔立ちがそんなに似ているわけじゃないのに、喋り方から立ち振舞、表情に至るまでかなりランドだったし、本当にこのランドの単独作が見たくてしかたがない(L3の活躍ももっと見たい)。以前のインタビューでプロデューサーのキャスリーン・ケネディも単独作について言及していたのでもしかすると、実現するかも……?

海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』に登場する女王、デナーリス役でおなじみのエミリア・クラークが演じたキーラは、『スター・ウォーズ』伝統の強い女性でとにかく美しかったですが、生き延びるために手段を選ばないという強烈なキャラクターでもあり、その後の人生が気になりすぎる! 映画は無理でも小説、コミックでもいいので、彼女がどうなってしまうのか教えて欲しい。

ファンが待ちに待った小ネタもどっさり

そんなキーラが使っていた格闘術テラス・カシは、1996年の『スター・ウォーズ』のスピンオフ小説『スター・ウォーズ 帝国の影』に初登場し、1997年の格闘ゲーム『スター・ウォーズ マスターズ オブ テラス・カシ』でより広く名前が知られるようになったもの。日本語版もあったので知っているという人も少なくないはず。

テラス・カシはファンにはおなじみのものではありながら、今まで映像作品には登場してこなかったので名前が出てくるだけで驚きです。残念ながら具体的にどんな動きなのかはわかりませんでしたが、それでも嬉しい!

ストーリーも、1997年から始まったハン・ソロの若き日々を描く小説シリーズ「ハン・ソロ三部作」の元帝国軍のパイロット候補生でならず者のハンがチューバッカやランドと知り合いながら冒険し、ランドとの賭けに勝って船を手に入れ、行方をくらましたかつての恋人に裏切られるという展開がネタ元になっているのかもしれません(とはいえ、ソロ家が名家だったりディテールは全然違い、あくまで全体の雰囲気が似ているくらい)。

第一次世界大戦的な戦線が繰り広げられていた惑星ミンバンや、ランドが言及するシャールー(種族)もレジェンズ作品に登場していた名前だったりといろんなネタが取り入れられていました。

さらにレジェンズが初出ではないものの、今までずっと言及はされつつも映画には一切登場してこなかったハン・ソロの故郷コレリアカードゲームのサバックがついに映画に登場したのもファンとしては(出てくるのはわかっていたものの)かなり嬉しいところでした。

というように『スター・ウォーズ』ファン、特にしばらく前から『スター・ウォーズ』を熱心に追っかけてきたタイプのファンに向けてのサービス要素が多い作品で、まさに狙い撃ちされたような感じ。

しかし、そんなファンとしてかなり驚かされたのが、最後の最後に登場するモール(ダース・モール)でしたね。

あいつは『ファントム・メナス』でオビ=ワンにぶった切られて死んだと思っている人も少なくないかもしれませんが、実は派生作品の中で生きていることが描かれ、今でも正史扱いのアニメシリーズ『クローン大戦』にも登場。

そこで下半身が蜘蛛型ドロイドになったりとかいろいろ紆余曲折を経て生き延びて、オビ=ワン・ケノービに復讐を果たすべく裏社会を影から牛耳りでその力を蓄え惑星マンダロア(ジャンゴ・フェットの故郷)の征服を目論むなど、『ファントム・メナス』以降も凄まじいストーリーが展開されている熱いキャラクターでした(詳しくは『クローン大戦』とその続編である『反乱者たち』をご覧ください。モールのエピソードを追うだけでもめちゃくちゃ面白いですよ!)。

なので、彼のストーリーと見事にマッチする登場の仕方で最高だった一方で、あまりに突然で多くの観客を置いてきぼりにしちゃったんじゃないかとやや心配になりました。とにかくロン・ハワード監督の名チョイスが光っていましたね。

評価が分かれた理由は、ベテラン監督ゆえの確実さから

監督が途中交代という危機的な状況で、ロン・ハワード監督は全体的にいい仕事をしていて、『ハン・ソロ』をちゃんと完成させてくれてありがとうとしか言いようがありません。

ただ、あまりにベテランの確かな仕事すぎてかなり無難な作りになっている感じは否めず、繰り返しになりますが、ここが評価の分かれるポイントだったのだと思います。

にもかかわらず、随所にフィル・ロードとクリス・ミラーっぽいコミカルなシーンが挟まっていて、明らかにトーンが違う部分が見え隠れする瞬間もあります(監督交代劇を知っているからそう見えるのかもしれませんが)。それがいびつに感じられたという人もいるでしょう。

ファンとして、フィル・ロードとクリス・ミラーが作った(作ろうとした)『ハン・ソロ』がどんなものだったのか見てみたいというのも正直な所。どうにかソフト版の特典とかでそのヒントが見られないものでしょうか……(こういうケースの交代ではかなり難しそう)。

とにかく『スター・ウォーズ』史上最高の傑作ではないにせよ(ランドとL3がもっと見たいところを除けば)かなり満足な作品でした。劇場で何度も観たいタイプの作品。映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は、現在全国で公開中です。


Image: (C)2018 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.
Source: 映画『ハン・ソロ』公式サイト, ABC7, YouTube

傭兵ペンギン

あわせて読みたい

powered by