ネットから解放されたい人へ:バードウォッチングのススメ

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  • author 岩田リョウコ
ネットから解放されたい人へ:バードウォッチングのススメ
Image: Ryan F. Mandelbaum/Gizmodo US

ネットから離れたければ、鳥!

つい先日、大雨の日にイギリスに住む友人と久しぶりにSkypeで近況報告をしていたときのこと。その日のイギリス・オックスフォードはとても天気のいい朝で、友人は外でコーヒーを飲みながら私とSkypeをしていたのですが、彼の頭の上をたくさん(うるさいくらい)の鳥が飛んでいたんですね。

最初は「鳥、うるさいな、もう!聞こえないよ」とふたりで笑っていたんですが、だんだん「スマホもネットも放ったらかしにして、鳥でも眺めてたいね」から結構真剣に「その鳥の名前、何だろう?」って調べたりもしました。皮肉にもSkypeとGoogleというツールを使いながらなんですけど。

ネットに密に関わる仕事をしていると、どうしても「あーWi-Fiも電波も届かないところに行きたい!」なんて無性に思う瞬間があるんですが、米GizmodoのRyan F. Mandelbaumがものすごくタイムリーなことに「僕はバードウォッチングのおかげでSNSから離れ外へ出るようになった」という記事を書いていたので、ご紹介したいと思います。たまたま私も友人も、ニューヨーク在住のMandelbaumも、なぜだか鳥に気が向いちゃったんですが、みなさんはどうでしょうか?



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Image: Ryan F. Mandelbaum/Gizmodo US
プロジェクト中に見つけたオオアオサギ

ニューヨークで目覚める朝はまるでサファリのよう。アラームが鳴ってすぐにスマホを手に取るなんてことをしなくても、ただ耳を澄まして聞いていればいいだけなんです。なぜなら僕のベッドからは、5種類の鳥の声が聞こえてくるから。スズメ、アオカケス、ナゲキバト、ショウジョウコウカンチョウ、アメリカコガラといったところです。

毎日常に溢れるニュースにちょっと疲れている、なのにネットから離れる気も、離れることもできずにいる。仕事関係だったり、ただネットにとらわれ過ぎているからか、週末も休みの日だって同じ状態。今これを読んでいて、アナタがバードウォッチャーではないのなら、こんな風に感じているのではないでしょうか。僕は鳥に出会ったことで、やっとネットから離れる方法を見つけられました。もちろん便利なアプリやサイトは使うけれど。僕のバードウォッチャーとしてのレベルアップの様子は、このミームがよく表しています。

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海外のミーム。欲がエスカレートするジョークを語るときにこのテンプレを使う。英語は執筆者が入れたもの。日本語は訳者が入れたもの。

でもずっと鳥が好きだったというわけではないんです。子供の頃、孵化したての幼鳥が道で亡くなっているのを見て以来、もう生きている鳥さえ見たくないと思いました。道にハトがいれば思いっきり避けてきました(ハトのことを「羽のついたネズミ」だと呼んだこともあった)。ずっとバードウォッチングはダサいと思ってきたし、鳥に関することは全部シャットアウトして生きてきました。そんなことをしていると鳥が怖くなってきて、鳥とは一切関わらないというルールを忠実に守ってきたんです。2年前までは。さっきのバードウォッチャーレベルの図でいうならレベル1。

こんな僕がレベル2に上がるキッカケになったのは、こんなプロジェクトの話を聞いたことでした。それは、野鳥保護団体であるニューヨークシティ・オーデュボン協会が渡り鳥を集めるために、ニューヨークの島にプラスチック製のフラミンゴをたくさん置くというもの。これについて記事を書くことになり、スタテン島に青サギの写真を撮りに行ったりもしました。なんだかレアなポケモンを集めに行くような気分でした。それで気づいてしまったのです。どうして人々は鳥を見るのかということを。

僕のパートナーがニューヨークへ引っ越して来てから、僕のバードウォッチャー度が加速しました。バードウォッチングは、僕らカップルが一緒にできるアクティビティとしてちょうどいいかなと思ったからです。ちゃんとした双眼鏡とバードウォッチングの入門書も買って、バードウォッチングのガイドツアーにも参加しました。しっかりバードウォッチングアプリも2つダウンロード済み。

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Image: Ryan F. Mandelbaum/Gizmodo US
ニューヨーク・プロスペクト公園のネコマネドリ

それでも僕のバードウォッチャーレベルは2のままでした。たまにムクドリやクロムクドリモドキの写真を「めちゃめちゃ美しい虹色の生き物はこちらです」なんて友達にメッセージしたりはしてましたけど。そうこうしている間に、渡り鳥が移動する春がやってきました。ここで僕のバードウォッチャーレベルが3にあがったのです。

信じられないかもしれませんが、ニューヨークは鳥のパラダイスなんです。実はニューヨークは渡り鳥のルートで、新鮮な水もあり、生息地もあり、食べ物も、山だってあります。春になると街の公園はたくさんの種類の鳥で溢れかえります。なにかで読んだことだけはあるような鳥たち、ムシクイ、ヤマシギ、カッコウなども見られるし、ジャマイカ・ベイ野生動物保護区(ニューヨーク・クイーンズ区)まで行けば、1日で何十種類もの鳥を見ることができます。セントラル・パークでは1本の木で13種類のムシクイを見たことも。絶滅危惧種のカートランド・アメリカムシクイが飛んできたことだってあります。移動のシーズンになると、毎日朝早く起きて公園に行って見たことない種類の鳥を見たいなぁなんて考え始めるようになりました。

こうしてネットから離れる時間と外へ出かける時間に新しい目的ができました。行ったことのない街や生物群系には新しい鳥たちはいるのかを考えたり、 どんなレアな鳥がeBirdに載っているかチェックしたり、他のバードウォッチャーたちは記録をどこのサイトでつけているのか、なんてことが気になりだしました。ここまで来たらもうレベル4。どこへ行くにも新しい鳥がいないか探すようになって、最近はプエルトリコとメキシコまで鳥を見に行ったりもしました。

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Image: Ryan F. Mandelbaum/Gizmodo US
ニューヨーク・ワシントン・スクエア公園のオスのイエスズメ

でもいつも旅行に行けるわけではないですし、渡り鳥の移動だって終わってしまう。鳥たちは巣に落ち着いてしまって、残っている鳥たちは深く茂った葉の間に隠れてしまい、見つけるのが難しくなります。もちろんバードウォッチングを諦めることだってできました。でも僕はバードウォッチングレベルを上げるべく、気持ちを切り替えたのです。「すべての鳥はオモシロい」と。コマドリもスズメも、そうハトだって。ハトを見て興奮するところまでくると、バードウォッチャーレベルも最終形態ですよこれは。

渡り鳥はもちろんワクワクするけれど、ハトをちゃんと見たことってありますか? やつらはなかなか魅力的なんです。ハト(正式にはカワラバト)は、玉虫色の羽と素晴らしい飛行本能を兼ねそなえた一夫一妻制の鳥。厳しい人間環境に入り込んで住むハトたちの頑張りは、動物の偉業として尊敬されるべきだと思っています。そしてコマドリはどこにでもいるかもしれないけれど、どこにでもいるからこそ、コマドリが巣を作って親鳥が赤ちゃんにエサをあげているのを歩道からだって見ることができるわけです。アオカケスはタカの鳴き声を真似するし、ショウジョウコウカンチョウは木のこずえからバラエティに富んだ鳴き声を聞かせてくれます。ある夏の日、コウモリかだと思って見ていた鳥が実はエントツアマツバメだったり、遠くのほうでたくさんのカモメ、アジサシ、チドリ、ミサゴが飛んでいるのを見ながらビーチでボーッとしたり、ニューヨークの北のほうに電車で行ったときにはハクトウワシも見ることができました。

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Image: Ryan F. Mandelbaum/Gizmodo US
ジャマイカ・ベイ野生動物保護区で見つけたミドリツバメ

バードウォッチングはオフラインのアクティビティだけれど、まったくテクノロジーを使わないというわけではありません。僕はSNSに撮った写真をシェアするし、鳥の細かい部分を見るのには双眼鏡も必要だし、鳥関係のアプリは必須だと思っています。でも僕のオンラインの生活は良いほうにガラリと変わりました。最近見たThe New York Timesの記事では、バードウォッチングは年配の人だけのダサめの趣味というステレオタイプは破られ、僕のような都会に住む人たちの新しい趣味になっているそう。バードウォッチングに行くと、オモシロいことをしている若い人にたくさん出会います。こうして鳥にハマった僕は、今は誰とでも、彼らの出身がどこだろうが、思想がどんなだろうがそんなことは関係なく鳥の話ができるようになったのです。

ハトを見るだけでワクワクしてしまうレベルまで行った僕だけれど、まだまだバードウォッチャーとしては初心者。動物園は抜きにしても、たぶんまだ100種類くらいの鳥しか見たことないでしょう。今度、ネブラスカにある世界中のカナダヅルが集まる伝説のサンドヒルに行ってみたいと思っています。もしかしたらGizmodoにバード・バーティカルメディア(略してbirdical)を始めてしまうかもしれない(※バーティカルメディアとは、何かに特化したメディア)。はたまた、バードフレンドリーの政府規制の本格的な支持者になるかもしれない。でも何よりも、鳥がいい例だけど、新しいことについて学びたいという僕の興味を奪えるものは、この世にはないということです。


Image: Ryan F. Mandelbaum/Gizmodo US
Source: The New York Times

Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文
(岩田リョウコ)

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