我々の祖先は月から...?
今の月は住みやすくありません。月面の塵は細胞や細胞内のDNAを破壊する可能性があるという研究も出ていますし、見たところ水が存在していないようなのです。そんな現状からは想像できませんが、かつて月はもうちょっと生命に優しい環境だったのかもしれない、という推測が科学者から出されています。
月はかつて湿っていた? 生命が存在した?
ベルリン工科大学のDirk Schulze-Makuchさんと、ロンドンのバークベック・カレッジの科学者Ian Crawfordさんは、これまで科学者たちが考えていたよりも、月には湿度があったかもしれないと推測しています。もしかしたら大昔には生命が存在できる環境であった時期があったかもしれないと。
もちろん、生命が存在していた、と主張しているわけではありません。「月で生命が誕生したか、もしくは他の場所から月へと移ってきたのか、ということは現時点ではあくまでも想像の範囲内に過ぎず、将来的に本格的な月探索プログラムによって究明する必要があります」と科学誌「Astrobiology」で紹介された論文では述べられています。無料で読むことができますので詳細に興味があるかたは是非ご覧ください。
もし生命が存在していたとすれば…
もしも本当に生命が存在できる時期があったとしたら、それは45億年、もしくは35億年前の地球との大規模な衝突から月が形成された直後である可能性があるようです。火山現象が起き、それによって月面に薄い大気圏が生まれたかもしれないというわけです。
そしてこの大気は数千万年、継続した可能性があるとのこと。この間にもしかしたら水が存在したかもしれないわけです(溶岩は水を含みますしね)。そうすると非常に単純な生命が月で誕生し、進化をしていた可能性もあります。その原始的な生命が隕石などを経由して地球にやってきた、という可能性もゼロではありません。
まだ研究が必要
ただし研究者らは「生命が存在するためにはただ大気が十分に存在し、液体の水が存在するだけでは十分ではない。それ以上のことが必要です」と強調しています。そのひとつが有機化合物の存在です。
さらに、地球はもちろん、火星でも見られる水が形成する地形的な特徴は月には見られません。これに関しては、かつては存在したけれども小さな隕石群や太陽風によって侵食されたのかもしれませんけどね。
今回の発表は新しいデータを世に出す、という類のものではありません。既に存在している研究データを集めた結果、月は当初に考えられていたよりも水分を含んでいるという推測が立ったので、かつては生命が存在できる環境だったかもしれない、と想像しているわけです。
月に舞い戻る日が楽しみですね!
アメリカ政府は火星ではなく月へと人を送ることにフォーカスをシフトしており、そのことにがっかりした宇宙ファンも多くいたようですが、月の魅力がこの論文によって増したのではないでしょうか。
Image: NASA Goddard Space Flight Center/Flickr
Source: Astrobiology
Reference: Wikipedia
Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文]
(塚本 紺)