触れると致命的。研究の途中で思いがけず「毒の書物」が発見される

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  • author 岩田リョウコ
触れると致命的。研究の途中で思いがけず「毒の書物」が発見される
Photo: Jakob Povl Holck and Kaare Lund Rasmussen via Gizmodo US

「毒の娘」ならぬ毒の書物。

昔の書籍を調査・分析するというのはよくあることですが、まさか調査していた古い本に致死量のヒ素が含まれているなんて思いもしませんよね。今回、大学の図書館で偶然、16世紀と17世紀の毒入り本が3冊も発見されたのです。

発見したのは南デンマーク大学の研究者HolckさんとRasmussenさん。彼らは当初から毒入りの本を探していたわけではありませんでした。中世の手書き写本をリサイクルして表紙として使っている本が3冊あり、その写本に隠れた文字を読み明かそうと試行錯誤していて、偶然発見してしまったとのこと。

隠れたラテン文字を解読しようにも、写本には緑色の塗料がべったりと塗ってあって判別不能な状態。そこで彼らは、蛍光X線分析と呼ばれるスキャンを使って解読に挑戦することにしました。これは、古代の陶器や絵画の化学元素を調査するときによく使われる技術。

この技術を利用し、緑色の塗料の下にある文字のインクの化学元素を識別しようとしました。ところが、見つかったのはその緑色の塗料がヒ素からできたものだったという事実(こわっ!)だったんです。

中世に修飾目的で使用された顔料だった

ご存知の通り、ヒ素は中毒、ガン、死をももたらす可能性のある毒性の強い自然発生物質です。ヒ素に触れた場合、腹痛、腸と肺の炎症、吐き気、下痢、皮膚障害などの症状がでます。その3冊の表紙に塗られていたのは「パリ・グリーン」と呼ばれる酢酸銅と亜ヒ酸銅(II)の複塩でした。

HolckさんとRasmussenさんは、Conversationに発表した論文で、その塗料について以下のように書いています。

ヒ素顔料は、結晶性粉末で簡単に生産することができ、19世紀によく利用されていた。粉粒の大きさは油絵やラッカーなどの調色に影響を及ぼす。大きい粒は濃い緑色を出し、小さい粒は明るい緑色を出す。顔料は特に色褪せを防ぐことで知られている。

パリ・グリーン顔料は19世紀ヨーロッパで産業生産され、印象派、後期印象派の画家は色彩に富んだ作品を制作するために様々な顔料を使用した。それが意味するのは、今日博物館にある絵画には毒が含まれているということである。絵画だけではなく、書籍、衣服にもパリス・グリーンは使用されている。これらとの継続した接触は、症状を発症させることになる。

しかし19世紀の後半には顔料の毒性作用が認知され、ヒ素顔料は絵画には使用されなくなり、農薬として広く使われるようになった。そしてパリス・グリーンの代わりとなる顔料が発見され、20世紀中期には農薬としても使われることはなくなった

今回発見された本の場合、塗料はカバーの一部にしか塗布されていませんでした。このことから、美観のために使われたのではなく、本の表紙に虫が入ってこないように使われたのではないかと考えられています。

現在は安全なところに保管されている

ここで気になるのは、このリサーチャーの2人は大丈夫なの?ということですよね。知らずに触っていたわけですから。Holckさんによると「深刻な危険はなかった」とのこと。よかったです。今、その3冊の毒の書物は施設の保管庫にしまってあり、簡単には出せないようになっているんだとか。「発見された時よりもずっと慎重に扱いましたよ」とHolckさん。

毒騒ぎで、本来の文字の解読の方が薄れてしまいましたが、Holckさんは4つの文字だけ解読できたと話してくれました。しかも、それ、X線を使ったんじゃなくて目で判別できたらしいです(笑)。

でも、X線使ってよかった。だって、ずっと目で見ていたら大変なことになってたかもしれませんからね。


Image: Jakob Povl Holck and Kaare Lund Rasmussen via Gizmodo US
Source: The Conversation

George Dvorsky - Gizmodo US[原文
(岩田リョウコ)

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