故人のSNSアカウントを、遺族が相続できるようになるかも

  • author Rina Fukazu
故人のSNSアカウントを、遺族が相続できるようになるかも
Image: Anjelica Alzona/Gizmodo US

私たちにできるのは、遺書を書くこと。

ドイツの連邦裁判所は今週、亡くなった15歳の少女のFacebookアカウントについて、母親にアクセス権を与えるという判断を下しました。担当した裁判官は、故人が生前にやりとりしていた個人的な手紙と同様、SNSアカウントも引き継げるようにすべきだと判断したのです。これにより母親は、個人的なメッセージを含め、故人のFacebookページ全体にアクセスできることになります。

「死後のデータの扱い」という課題

Facebookメッセージ(またはGmailの受信トレイなど)を相続人が受け継ぐともなれば、所々から悲鳴が聞こえてきそうです。いうまでもなく、こうしたデータはきわめてプライベートなもので、第三者が読んでも故人への理解が深まるより誤解のほうが生じやすいものです。

こうした事態を防ぐために、だれもが簡単にできる一番の方法は遺書を書くこと。一見、日本よりも遺書の文化が根強い印象があるアメリカでも、大多数の国民が遺書を用意していないという調査結果が明らかになっています。また、遺書を用意しているという人のなかでも、死後のデジタルファイルの処理方法について触れている人はどれほどいるのでしょうか(そして今後、新しいサービスを使うたびに遺書を書き換えることになるのかもしれませんね...)。

コンピュータの普及以後、現代人の生活の多くはデジタル通信から切り離せなくなってきています。ソーシャルメディアだけでなく、仮想通貨の時代が幕を開けてからというものの、死後のデータの扱いについてはうやむやにできない課題になってきています。

オンラインのメッセージや電子メールには、故人の財産管理に不可欠な情報が含まれていることもあります。相続人が資産への権利を有するならば、どんな資産があるのか知る必要があるという点についても曖昧にはできません。

多くの企業ではユーザーが死去した場合、相続人にデータを転送するための手筈を用意していません。こうしたプロセスは、非常にセンシティブで時間のかかるものでもあります。言い換えれば、企業からすると費用がかさむものでもあるのです。

遺族にアクセス権を与えるのに抵抗したFacebook

いっぽうでFacebookなどの企業はこれまでに、故人が遺書を残していない場合、ユーザーのデータを親戚に引き渡すことに抵抗してきました。

先日のドイツの裁判所の判決に関して、Facebookの広報担当者は米Gizmodoに対し次のような見解を明らかにしています。

親戚の希望を測りながら第三者のプライバシーを守るのは、私たちが直面してきたもっとも難しい課題のひとつです。私たちは家族に共感します。それと同時に、Facebookのアカウントは、私たちが守るべき個々のプライベートなやりとりのために使用されるものなのです。

判決に対して"慎んで異議を唱える"という姿勢をみせたFacebook。でも、そもそもなぜこのような裁判が執り行われることになったのでしょうか?

さかのぼること2012年、当時15歳だった少女はベルリンで電車に轢かれて死亡しました。これが事故だったのか、それとも自殺だったのかを知りたかった両親が、亡くなった娘のFacebookにアクセスすることを求めて裁判を起こしました。

プライバシーに厳格なドイツが下した判決の意味

ドイツのプライバシーに対する厳格な法律を鑑みると、両親が故人のデータにアクセスすることを連邦裁判官によって認められるのがどれほどの意味を持つか伺えます。これを機に、デジタル相続に関する法律ついて見直す必要があるという意見もあります。

最終的に今回の判決は、Facebookに限らず国内のすべてのソーシャルネットワークに適用され、相続人は未成年者を含む故人のデジタルを相続する権利を得ることになります。

アメリカではどうなっているのか?

アメリカでは、デジタル遺産に関する判決がまだ明らかになっていない段階です。つまり(少し乱暴な言い方ですが)もし明日命を落としても遺書がなければ、物理的な資産やデータの所有権を決定することができるのは裁判所になるわけです。

相続人が私的なアカウントにアクセスできるかどうかは州法ごとに異なりますが、一部の州ではデジタル相続を直接扱う法律を順守していて、これは遺族がテック企業に個人的なデータへのアクセスを求める可能性があることを意味します。企業は、利用規約や特定の法律を理由に断ることもあれば、故人が利用していたパスワードを推測しようとすることもありえます(ちなみに後者は法律違反にあたるのですが)。

決して楽な作業ではありませんが、自分の死後に個人的なデジタルデータをどう処理してほしいか明確にするには、やはり遺書を書くことが重要です。ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学でIT法律を専門とするNikolas Guggenberger助教授は「金融資産のように先々を見据えて計画することは重要です。意のままに物事が進んでほしければ、デジタル資産も同じです」と、米Gizmodoに語っています。

テック企業も対策を提供している

テック企業によっては、独自のソリューションを提供しているところもあります。Googleでは、一定期間アカウントを利用していない状態が続くと他のユーザーに通知を送るアカウント無効化管理ツールというものがあります。活用の仕方はさまざまですが、これによりGoogle DriveのファイルやGmailのメッセージを特定の人にシェアするのを許可したり、シェアされたくないデータを削除したりする制御ができます。

Facebookでは、アカウントを管理する代理人を指定することができます。この代理人はたとえば、あなたの死後に追悼アカウントページでプロフィール画像を変更したり、友人申請に応えたり、新しい投稿を確認したり、プロフィールを削除したりすることができます。ただ多くの場合、代理人はメッセージ にアクセスできないようになっています。また死後に追悼ページを望まず、ただアカウントを削除してほしい場合の設定も可能です。

昨年Yahoo!に下された判決が大きな影響を与えるかも

アメリカでは昨年、サイクリング事故で死亡した故人のYahoo!メールアカウントへのアクセスをめぐって、マサチューセッツ最高裁判所は故人の遺言がない場合でも個人情報の公開を許可する判決を下しました。遺族は、故人のYahoo!メールにアクセスすることで故人の友人に死を知らせ、残された資産の確認を望んでいたいっぽう、Yahoo! 側は遺書がなければ「Stored Communications Act」(保管された通信に関する法律)に反すると主張していました。結果的に、マサチューセッツ最高裁判所は最終的に電子メールの公開は違法でないと述べ、 Yahoo!は合衆国最高裁判所に控訴するも棄却されました。

こうした事例はほかのテック企業にも影響を与え得ます。Yahoo! のケースを受けてFacebookが独自のポリシーを見直すことだって無きにしも非ずです。

Facebookなどのハイテク企業は、デジタル相続に関する具体的な規制なしにユーザーの死後のデータの扱いに関する利用規約を変更することができるでしょう。これらの企業はGoogleの「アカウント無効化管理ツール」のような機能を構築して、ユーザーに選択肢を与えることができます。

ハーバード・ロー・スクールでサイバー法を専門とするVivek Krishnamurthy氏は「法を確立することはいろいろな意味で必要ですが、テック企業にできることも沢山あるはずです。それによっては人々にとって楽でより良い道が拓けるでしょう」といいます。

でも、こうしたテック企業をあてにする以前に、いますぐ誰にでもできることがあります。それは、遺書を書くこと。私的なデータをどう処理してほしいか、明確に書き留めておくことです。そして相続人は、そうしたあなたの願いを尊重すべきです。



Image: Gizmodo US

Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文
(Rina Fukazu)

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