知ってた?
アメリカで最も権威ある漫画賞の一つであるアイズナー賞の2018年度の受賞者が発表され、日本人アーティストのタケダ・サナさんが『モンストレス』で最優秀長編作品、最優秀ティーン向け作品、最優秀カバーアーティスト、最優秀複合アーティストの4部門で受賞を果たしました!
タケダ・サナさんがアートを手がける『モンストレス』とは?
タケダ・サナさんはセガでのデザイナーを経て、マーベル・コミックスの『X-23』や『Ms. Marvel』といった作品を手がけ、マーベルのソーシャルゲーム『マーベル ウォー・オブ・ヒーローズ』のアートワークも担当し多方面で活躍をしているアーティスト。
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— PREVIEWSworld (@PREVIEWSworld) 2015年11月1日
そんなタケダ・サナさんがアートを担当する作品『モンストレス』は、人間と魔獣人の間で起こった戦争の爪痕が残るスチームパンク・ハイ・ファンタジーの世界を舞台に、隻腕の奴隷少女「マイカ」の出生の秘密とその身体に宿る怪物を巡る戦いを描いたストーリーで、人種と性の差別の問題をテーマにした作品。
かつては『スポーン』、最近では『ウォーキング・デッド』などの出版で知られるイメージ・コミックス社で2015年から始まったシリーズで、いわゆるスーパーヒーローものではなく、単独作品で独自のファンタジー世界を展開しています。
人種と性の差別の問題をテーマに
オリジナリティに溢れる世界観で情報量も多く最初は置いていかれそうになりますが、各話の最後に歴史家の猫又「タムタム教授」による授業のページが入っていて、世界の仕組みを理解しながら物語を読み進められるようになっているのも面白いところ。
その世界は家母長制で成り立っていて、善人も悪人も強者も弱者も実に多彩な女性キャラクターが登場し、それぞれの感情豊かかつ人種的にもかなり多様に描かれているのが魅力の一つであり、そこに強烈なメッセージ性を感じさせられる作品です。
特に主人公のマイカは、怒りに燃えるがあまり血に飢えていながらも、優しい一面も持っていて単なる悲劇のヒロインでも復讐鬼でもない複雑さを抱えており、その行く末が気になって仕方ない。
世界観のダークさもさることながらタケダ・サナさんの緻密で美しいタッチによる残酷な描写が凄まじく、四肢が千切れたり切り株になるのは序の口で、顔面を火炎放射器で焼かれた人がそのまま出てきたりする容赦のないゴア表現も読者を引きつける一因となっています。
海外ではいくつもの賞を受賞している
そんなわけで、当然ながら人気の作品となっており、2017年のアメリカでのコミック単行本の売上で6位につけています。
また、2017年にはSF・ファンタジー文学賞であるヒューゴ賞や英国幻想文学大賞のコミック(グラフィックノベル)部門で最優秀賞を受賞。今回のアイズナー賞も2年連続でノミネートされていたので、今回一気に複数部門で受賞したのは納得の展開。むしろ1巻が出た段階で受賞しなかったのが不思議なくらい!
ちなみに今年のアイズナー賞では『モンストレス』のライターのマジョリー・リューさんも最優秀ライターを受賞しているのですが、女性ライターがこの賞を受賞するのは30年超の歴史を持つアイズナー賞で初めてという快挙も成し遂げています。
『モンストレス』は現在TPB(単行本)が2巻まで発売中で、3巻が9月発売予定。日本語版も2巻まで発売中。アートもストーリーも受賞して当然のトップクラスの作品ですが、アメコミ界屈指に可愛さの猫(二足歩行もして喋る)がたくさん出てきて、私の中での最優秀猫カワイイ作品賞も2年連続受賞しているので、そちらもぜひ注目してみてください!
Image: Radu Bercan / Shutterstock.com
Source: The Hollywood Reporter, Time, Twitter, Comichron
(傭兵ペンギン)