NASAの探査機パーカーが、灼熱に溶けることなく太陽に近づける理由

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  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
  • [原文]
  • たもり
NASAの探査機パーカーが、灼熱に溶けることなく太陽に近づける理由
Image: NASA
太陽に接近するパーカー・ソーラープローブのイラスト

これってアトムみたいだ。

米国時間の先週の土曜日、NASAの太陽探査機「パーカー・ソーラープローブ」が打ち上げられ、太陽系の中心に向かって旅を始めました。

中心に向かうというものの、当然ながら太陽に直進するわけではなく、金星のそばを7度通過して太陽の表面から380万マイル(約612万km)の地点まで到達することになります。太陽の直径で考えると、4個分ちょいの距離ですね…。その地点の温度は摂氏約1,370度になりますが、探査機の機器は摂氏約30度に保たれるとのこと。状況から考えれば、冷たいといえそう。

パーカーを守る技術は冷却と耐熱

NASAの太陽物理学者Mitzi Adamsさんは米Gizmodoに対し、このように語っています。

これほどまでに太陽の近くへ探査機を飛ばすのは初めてで、それを実現するだけのテクノロジーを持ったのも初めてなんです

そのふたつのコンビネーションによって、刺激的なものになっている

ジョンズ・ホプキンス大学の応用物理学研究所のプレスリリースいわく、鍵となるテクノロジーは水冷システムと探査機を守る耐熱シールドなんだとか。

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Graphic: Greg Stanley/Johns Hopkins University
探査機の耐熱シールドの説明図(イラスト)

この耐熱シールドの開発には、10年もの年月がかかりました。高熱でも構造特性を守る2層の炭素繊維強化炭素複合材料の間には、そのほとんどが空気であるため熱をあまり伝えない素材である炭素発泡体の層が存在します。そのうえには、光を反射する白いセラミック素材である酸化アルミニウム製の外層がありますが、炭素繊維強化炭素複合材料と反応して酸化アルミニウムが灰色に変わってしまわないよう、2つの素材の間にはタングステンの層を入れています。

では、パーカー・ソーラープローブの耐熱シールドエンジニアのBetsy Congdonさんが耐熱シールドの熱的特性のデモをしている映像をご覧ください。

Video: NASA Goddard/YouTube

太陽の表面より高温なコロナに挑む

太陽の周囲の環境はとても過酷なものです。太陽の表面温度は摂氏5,500度ほどですが、太陽の表面を覆うコロナの方がはるかに温度が高く、数百万度をくだりません。なぜ、太陽そのものよりコロナが高温なのかを、科学者たちは解明しようとしています。

NASAの太陽物理学者Alphonse Sterlingさんは「太陽の表面を外層大気へとつなげる磁場によるものだとわかっていますが、(エネルギーが)どうやって磁場を抜けてコロナへ達するのかを理解しようとしているところ」だと米Gizmodoに語ってくれました。「太陽と太陽物理学において鍵となる謎のひとつ」なんだとか。

1950年代には、ソーラープローブの名前の元となった科学者ユージン・パーカーが、コロナから太陽風が発生する理論を提唱しました。Sterlingさんいわく、パーカー・ソーラープローブはその過程を取り巻く疑問を直接、徹底的に調べることができるだろうとのこと。

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Image: NASA’s Goddard Space Flight Center/Lisa Poje/Genna Duberstein
コロナの流動を表すGIF

こちらは太陽のコロナの動きを表しているGIF。パーカー・ソーラープローブは外部コロナを飛行しますが、粒子は十分に希薄なので探査機にはそれほど熱は伝わりません。たとえるなら、オーブンの庫内に手を伸ばしてみるような感じで、ちょっとの間そこに入れるだけで金属を触らなければ害はないとNASAは表現しています。

2024年まで地道な宇宙の旅

探査機は無事に打ち上げられましたが、このミッションから科学的な発見が得られるまではしばらくかかりそう…。太陽にもっとも近づくのは2024年になりますからね。それまでにスイングバイで速度を調節するために金星を7度通過して、連続的に軌道を小さくしていきます。

目的地まで到達したら、太陽に関する謎を解明してくれるでしょう。そして、また新たな謎と出会うことになりそうです。

(2018年8月21日 12:28 修正)
「太陽の地面より高温なコロナに挑む」という見出しを立てておりましたが、正しくは地面ではなく表面です。謹んで訂正いたします。

Source: Hub, NASA, YouTube, Parker Solar Probe, Wikipedia

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