待ち望んでいた人、多いのでは?
本日発表されたニコンのフルサイズミラーレスカメラ「Nikon Z7」「Nikon Z6」。ニコンユーザーに配慮しつつも、新しい境地を目指した仕上がりになっているようです。米GizmodoのSam Rutherfordが、高画素機のZ7をハンズオン。以下、翻訳してご紹介します。
フルサイズミラーレスを実際に作っていたのはソニーだけ。みんな不思議に思っていました。どうして一眼レフカメラの巨人たちは、ハイエンドミラーレスを作って反撃しないのだろう?と。そして、今日、私たちはついに、この疑問に対するニコンの返答を、Nikon Z7とNikon Z6というふたつのカメラの形で見ることになりました。
Zシリーズはより決定的なタイミング──今月の初め、ソニーがニコンとキヤノンを追い抜いて、世界一のフルサイズカメラブランドになったときに登場できませんでした。35mmフィルムカメラの画面と同じくらい大きなイメージセンサー(35mmフルサイズ)は、APS-Cやマイクロフォーサーズといった小さなセンサーよりも画質が良いため、カメラファンたちはフルサイズミラーレスの虜です。
10年前にもっと小さなセンサーとともに登場したミラーレス一眼。そのターゲットは、レンズ交換はしたいけどバカでかいカメラはいらないというアマチュアとその予備軍たちでした。しかし、ミラーレス技術が本当に良くなり始めても、ニコン(とキヤノン)はさまざまな理由からフルサイズ一眼レフから進化するのを拒んでいました。そんな彼らは、このギリギリのタイミングで、ついにミラーレスというトレンドに対する自らの答えを示します。
何気なしにでもニコンの新しいミラーレスカメラを見てみると、ニコンがソニーからこの分野の王位を奪還しようとしているのは明らか(もちろん、ニコンにはこれまでに培ってきたブランドを手放す気なんてありません)。
ここにニコンがひとつではなく、ふたつのカメラをリリースした真の理由があります。Zシリーズには、Nikon Z7(以下Z7、ボディのみ3,400ドル。ソニーのα7R IIIは3,000ドル)とNikon Z6(以下Z6、ボディのみ2,000ドル。ソニーのα7 IIIは2,000ドル)の2モデルがあります。この2機種は多くの特徴を共有しつつも、決定的な違いがいくつかあります。
高画素モデルの「Z7」と静止画も動画もいけるオールラウンダー「Z6」

Z7は、有効画素数4575万のセンサーを搭載(Nikonの一眼レフ「D850」と同等)、最新の画像処理エンジン「EXPEED 6」と連携しています。ニコンいわく、493点のフォーカスポイントを用いてセンサーの90%をカバーするZ7は、D850に比べて優れた予測駆動オートフォーカスが行なえるとのこと。ISO感度は64〜25600、102400まで拡張できます。このニコン最高のデジタルカメラなら、ライティングが難しいシチュエーションにも怯まずに立ち向かえるでしょう。
Z7の連写速度は14ビットRAWで秒間約9枚。動画撮影は4K UHD(3,840×2,160、30fps)。4K 60fpsでの撮影をサポートしていたら最高だなーと思うので、これはちょっと残念です。

より安価なZ6は、静止画・動画の両方で有能なオールラウンダーという位置づけ。センサーの有効画素数は2450万と劣る代わりに、連写速度が秒間約12枚。Z7にはないローパスフィルタを搭載しており、ISO感度も100〜51200と広くなっています。加えて、フルピクセルリードアウト(※)の4K UHD動画撮影をサポートしています。
※訳注:間引きなどを行なわず、すべての画素を読み出すことで優れた映像クオリティを実現する動画撮影方式
外観は筐体・コントロールキー類・重量に至るまで、Z7と同等です。Z7もZ6も防水防塵のマグネシウムボディを採用しています。端子類に関しても、MIC IN/OUT、HDMI(Type C)、充電とデータ転送用にUSB-C、Mini DisplayPortを完備しています。でも、カードスロット(XQDカード対応)がひとつしかないのはうーんと悩まされてしまうポイントかもしれません。
Fマウントに代わって「Zマウント」を採用

もっとも重要な点は、ニコンの新しい35mmフルサイズミラーレスが採用するマウントです。1959年に導入されて以来使われてきたFマウントを使い続けるのではなく、フルサイズミラーレス開発をマウントシステム改善の機会と捉えたニコンは、「Zマウント」を導入。
Zマウントのマウント口径は55mm、Fマウント(46.5mm)よりも大きくなっています。ニコンによると、より多くの光を集め、よりスムーズなオートフォーカスや、フォーカスブリージング(フォーカスリングを回した際に発生する画角変動)のコントロールが可能になったとのこと。Zマウントによってニコン史上もっともシャープで高速なレンズを作り出すことが可能になった、とも。

Z7発売の約1カ月後、Z6の発売時に、ニコンは以下のレンズをラインナップします(カッコ内は日本での発売時期)。
・NIKKOR Z 35mm f/1.8 S(9月下旬)
・NIKKOR Z 24-70mm f/4 S(9月下旬)
・NIKKOR Z 50mm f/1.8 S(10月下旬)
また、リリース時期のオフィシャルなアナウンスはありませんでしたが、ニコンは「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」でNoctレンズを復活させるとのこと。
でも、ニコンが過去に生み出したたくさんのレンズはどうなるんでしょう? 聞いてみると、それはニコンにとってもZ7とZ6をリリースするにあたってうまく対処したいポイントだったそうです。そう、いかに新しいマウントがすばらしいとしても、ニコンファンがレンズ資産を投げ捨てるハメになるのなら、それは決してすばらしいものとは言えないのです。

それが新たに「マウントアダプター FTZ」が作られた理由です。このアダプターは90以上のNIKKORレンズにZマウントとの互換性を与え、 オートフォーカスなどの機能搭載以前に作られた、360ほどの古いレンズをサポートします。マウントアダプター FTZを使うのは簡単。カメラに取り付け、そこに自分の好みに合ったFマウントレンズをセットするだけです。ニコンによると、画質の低下はゼロだそう。
またZ7は、ニコンのレンズ交換式カメラとしては初めて、5軸のカメラ内手ブレ補正を搭載しています。シャッタースピード最大5.0段階分の補正効果があるとされています。また、この新しいカメラ内手ブレ補正によって、Z7でレンズ内手ブレ補正が搭載されていない古いFマウントレンズを使う場合、改善効果が発揮されるそうです(すべてのレンズが対象ではないようです)。
使用感は今までのニコンとあまり代わらない。シャッター音は気になる
スペック面についてはこれでいいでしょう。では、ニコンの新しいミラーレスカメラの使用感はどんなものなのでしょうか? 率直に言って、既存のニコン製一眼レフとあまり違いはありませんでした。3.2インチのチルト式タッチスクリーンで使えるさまざまなメニューに至るまで、以前のニコンと同じ感じで使えるようになっています。長くニコンを使っていた人でも、Z7・Z6への乗り換えは自然に行なえるでしょう。

Z7の重量は585g(バッテリー、レンズなし)。D850よりも小さく、軽く感じましたが、572gのα7R IIIほど小柄ではありません。これは、Z7のがっしりとしたグリップとEVFのためですね。EVFの解像度はα7R IIIの360万と同等ですが、少しシャープで鮮やかなように感じました。

シャッター音はユーザーごとに調整する必要があるでしょう。Z7でシャッターを切るたびにするのは、伝統的なニコン製一眼レフのようなメカニカルなシャッター音ではなく、ノイジーな音(※)。あまりこれに似た音はないような気がします。望むならサイレント撮影モードをオンにできます。
訳注:こちらの記事でZ7のシャッター音を収めた動画を掲載しています。
では、Z7の画質はどうでしょうか? 残念ながら私が触れたのは最終版に近いZ7の試作機。確認できたのは筐体とその寸法などの外面のみでした。作例は撮影できなかったのですが、サンプルの写真があるべきなので、いずれ確認したいと思います。
※編注:作例についてはギズモード・ジャパン編集部で撮影できました。こちらの記事に掲載しております。
一眼レフファンも心配には及びません。ニコンはミラーレスに対して重点的な投資をしていますが、Fマウントの一眼レフに対しても同様に取り組んでいくと語っています。

Nikon Z7は、9月下旬発売。価格については以下のようになっています(カッコ内は日本のニコンオンラインショップでの価格)。
・ボディのみ:3,400ドル(43万7400円)
・NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sレンズとのキット:4,000ドル(51万3000円)
FTZアダプターも同日発売で、単体250ドル(Z7・Z6と一緒に購入すると150ドル、日本国内価格:3万5100円/2万1600円)。Z6はボディのみ2,000ドル(27万2700円)・NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sレンズとのキット2,600ドル(34万8300円)です。
Source: Nikon
2018年8月24日:誤記を修正いたしました。