レノボ 「Yoga Book C930」レビュー:あと少し、あと一歩で画期的なラップトップになれたのに

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  • author Sam Rutherford - Gizmodo US
  • [原文]
  • 塚本 紺
レノボ 「Yoga Book C930」レビュー:あと少し、あと一歩で画期的なラップトップになれたのに
Photo: Sam Rutherford(Gizmodo US)

あと一歩でレボリューション...!!

Eインク・ディスプレイをキーボードとして使うことでデュアル・スクリーンを達成、という斬新なアイデアでマーケットを驚かせたレノボの「Yoga Book C930」。米Gizmodoが早速レビューしています。果たしてEインク・キーボードの使い心地はいかに。Sam Rutherford記者です。


ラップトップは2012年から大きくは変化していません。見た目がスッキリ、性能はパワフルになって、バッテリー寿命は伸び、といった進化はしていますが、2012年にMicrosoftがSurfaceとキックスタンド、そして取り外し可能なキーボードを発表して以来は根本的な新アイデアというのは生まれていません。別にメーカーたちが挑戦をやめたわけではありません。AppleはMacBook ProにTouch Barを付けたり、 AsusのZenBook Pro 15がScreenpadを導入しています。

こうやって見ると方向性は常に「デュアル・スクリーンを持ったラップトップ」にあるのが分かります。このデュアル・スクリーンというアイデアで最も攻めているのは間違いなくレノボですね。そして今回の新しいYoga Book C930は、もはや2012年以来の画期的ブレークスルーともう少しで呼べそうなくらいの完成度にまで高まっているんです。

Lenovo Yoga Book C930

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これは何?:Eインク・ディスプレイを使ったデュアルスクリーンのラップトップ

価格:1,000ドル(日本では12万2653円)

好きなところ:ゴージャスで、ミニマムなデザイン、ビルトインの指紋リーダー。どれも前のモデルよりパワフルになっている。

好きじゃないところ:Eインク・ディスプレイ上のタッチパッドは使いづらく、電子リーダー機能もできることが限られている。あと小さすぎる。ヘッドフォンジャックがないし、バッテリ寿命も短い。

レノボがプロダクトの名付けコンセプトを最近になってアップデートしたため、本来ならYoga Book 2とでも呼ばれていただろうこのプロダクト。物理キーボード無しのラップトップとしては第2世代目となります。しかしあまり実用的でなかったHaloキーボードを利用していた前プロダクトと大きく違って、今回はタッチセンサーのついたEインク・ディスプレイをキーボード用のスクリーンとして使っています。そうです、Eインクで表示されたキーボード上をタイピングするんです。

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Photo: Sam Rutherford(Gizmodo US)
左がYoga Book C930、右がオリジナルYoga Book。

それによっていくつかの利点が生まれています。オリジナルのYoga Bookではスケッチをしたい場合、実際に紙を広げてその上にペンで描く必要がありました。C930はスタイラスが付属しており、Eインク・ディスプレイに直接、描くことができるんです。さらに自分が描いたスケッチを切り取ってWindowsへとペーストすることも可能に。スケッチに興味が無くとも、電子書籍リーダーとして使うことができます。メインのスクリーンで通常の作業をしながら、Eインク・ディスプレイで別のPDFを参照する、なんてマルチタスクもラクラクできてしまいます。

さて、問題のキーボードとしての性能ですが、はっきり言ってパーフェクトではありません。しかしMacBookの固くて浅いキーボードと比べると、いくつかの点ではC930のフラットな画面のほうが良いな、と思うところもあります。そもそも物理キーボードとして期待をしていないため、自分のタイピングも自然とソフトで柔らかいものになります。そして入力の正確さを上げるために、レノボはAIによって動くソフトウェアを開発し、ユーザーのタイピング方法を分析するというシステムを導入しています。特定のタイプミスを繰り返す場合は、そのパターンを認識してキーボード側で適応してくれるというわけです。

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Photo: Sam Rutherford(Gizmodo US)
このアイコンをクリックして、キーボード/スケッチング/Eリーダーと用途を選びます。

物理キーボードのようにFとJにポツポツが付いていないので、手を常に中央にキープできる...ということは期待できませんが、それでもEインク・キーボードが原因で駄作プロダクトになるほどではありません。短いEメールや検索ボックスに文字を打ち込む時はキーボードがEインク・ディスプレイであることは忘れてしまうことができます。しかしちょうどこの記事のように、長文を打つ時はその難点を実感します(寒い時はC930のタイピングは特に疲れます)。リズムを掴んだ後でも、タイプの速度は全体的に落ちてしまいました。通常のキーボードであれば、いつも毎分75から80ワードを打てるのですが、Yoga Book C930の場合は最高でも65ワードという程度。そしてタイプミスの頻度は3倍になっていました(毎分2回だったのが6回に)。

物理的な感覚という点ではC930のキーボードは欠けているものの、適応性という点では優れています。キーボードがソフトウェアとして存在しているため、28の異なるキーボード言語を数回のタップで簡単に切り替えることができるんです。キーボードの見た目もクラシックとモダンという2つのバージョン(キーが黒いか、白いかの違い)に切り替えることができます。またキーを押した時に若干の振動フィードバックがあり、そのレベルも調整できます。とは言えこの振動はちょっと不明瞭なもので、期待しているほど局所的な「タイプした!」という感覚は得られません。

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Photo: Sam Rutherford(Gizmodo US)
「クラシック」デザインではスペースキーもタッチパッドも両方が存在する代わりにキーが小さいです。

私がC930に持っている一番の不満はキーボードではありません。タッチパッドです。レノボはデュアルスクリーンとして上にも下にも10.8インチのスクリーンを持っているためキーボードの下に配置されているタッチパッドが狭く感じられるんです。縦方向のマウス(指)スペースを確保するためにマウスの左右のボタンをパッドの左右に振り分けています。これに慣れるに結構な時間がかかりました。

それに加えて、「モダン」レイアウトにキーボードを変更するとキーが大きくなります。しかしこれを実行するとスペースバーとタッチパッドのどちらを表示させるか選ぶ必要が出てきます。必要に応じて切り替えられるので大きな問題ではありませんが、そもそも大きいスクリーンであればこんな問題は起きなかったわけです。

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Photo: Sam Rutherford(Gizmodo US)
これが「モダン」デザインのキーボード。タッチパッドがありません。


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Photo: Sam Rutherford(Gizmodo US)
小さいボタンをクリックすると、スペースキーが消えてタッチパッドが現れます。

もう少しスクリーンが大きければ、Yoga Book C930はかなり改善されたプロダクトになっていた可能性があります。ディスプレイがもう少し大きければキーボードも使い勝手が良く、タイプミスしにくいデザインにできたでしょう。

ミニマリストなスタイルは非常に魅力的だけれども、ポート数を限定しています。USB-C 3.1が2つ(側面に一つずつ)、そして後ろにスマートフォンのようなトレイに隠れているmicro SDカードのスロットがあります(ピンを使って取り出しする必要があります)。ヘッドフォンジャックはありませんし、USB-Aもありません。もう少しだけ分厚くすることで利便性を大きく改善できたはず。

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Photo: Sam Rutherford(Gizmodo US)
PDF・Eリーダーの方はWindowsを立ち上げなくても使えます。

サイズが小さいという点ではバッテリーも同じです。我々のテストでは6時間43分しか持続しませんでした。これはMicrosoftのSurface Goと比べると1時間15分、短い性能となっています。

その一方で Intel Core i5-7Y54をCPUとして備えているC930は、Surface GoのPentium 4415Yと比べて30%から50%はパワフルになっています。オリジナルのYoga BookはCPU性能という点では物足りなかったことを考えると良いアップグレードと言えるでしょう。

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Photo: Sam Rutherford(Gizmodo US)
これはSIMカードのスロットではありません。MicroSDカードのスロットです。

Eインクはバックライトがありません。またスタンダードなPDFしかEインク・ディスプレイを使って読むことはできません。テスト用のプロダクトを受け取った後に気付いたのですが、スタンダードなPDFで読みたくなるような物は(マニュアルやプレスリリースを除いて)何も持っていないことに気付きました。Eブックの類はAmazonにしてもGoogleにしてもそれぞれの会社のオリジナル・フォーマットで受け取っているからです。これらはもちろんC930で開くことはできません。

そのため著作権が切れた小説などを提供するProject Gutenbergにコンテンツを求めることになりました。ありがたいことに2019年にはePub、Mobi、そしてTXTファイルも対応するとレノボは述べています。しかしWindowsとの連携をさらに強めて、KindleやKoboのWindows向けアプリをEインクのディスプレイで開くことができれば、格段に良いプロダクトになるのではないでしょうか。

もしかしたらYoga Book C930のいろいろある要素の中でも特に感心してしまうのはその値段かもしれません。1000ドル(日本では12万2653円)という値段で、MicrosoftのSurface Goとしっかりと競争することができる価格帯にいます。Surfaceキーボード、ペン、追加のストレージなどを購入するとSurface Goだって800ドルくらいにまではなるからです。そして面白いのは、Yoga Book C930が登場したことで、Surfaceのデザインが少し古く感じられることです。

だからといって、皆がこのデバイスを購入すべきとは思いません。日常的に使うデバイスとしては、キーボード、ポート数の少なさ、弱いバッテリーといった点は致命的だと考えるユーザーも多いでしょう。しかしこれからのラップトップのビジョンという点では、Yoga Book C930は2018年で最も面白いラップトップかもしれません。Eインク・ディスプレイをもっと機能的なスクリーンへと進化させ、OSの統合を改善させることができれば、このプロダクトは化けるでしょう。もちろん、実際にこういった機能を実現するのは簡単ではありませんが、C930はあと一歩で画期的なプロダクトとして、新しいラップトップの時代を開いた、と称賛されるラップトップのポテンシャルを持っていると感じられるのです。

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Photo: Sam Rutherford(Gizmodo US)

まとめ

・Eインク・ディスプレイの機能性がもっと良ければと悔やまれます。PDFを読めるのは良いけれども、KindleアプリやWindowsのプログラムで開いたものを読むことができればもっと良いのにと思います。

・デザインはすごくカッコいいです。閉じるとMacBook Proの下半分よりも薄いという。

・ポート接続性という点では限られています。2つのUSB-C3.1があり、microSDカードリーダーもあるものの、スマートフォンにあるようなトレーに隠れていて、取り出すのにピンが必要です。

・ヘッドフォンジャックはありません。オーディオやUSB-Aのためのアダプタも付いてきません。またバッテリーの持ちも短いです。

・10.8インチじゃなくて、デュアル12インチ、もしくは13インチのスクリーンであればもっと全体的に良いプロダクトだったはず。

・なぜデュアル・スクリーンにポテンシャルがあるか、ということを示す最良の例がYoga Book C930です。が、もう少し洗練する必要があります。