これぞプロ!
10月11日、NASAの宇宙飛行士ニック・ヘイグとロスコスモス(ロシアの宇宙開発国営企業)のアレクセイ・オブチニンを乗せた宇宙船ソユーズが、国際宇宙ステーションに向けての打ち上げ中に異常が発生しブースターの分離に失敗、緊急着陸するというという事故が発生。
そして先日、アメリカに帰国したニック・ヘイグがAP通信に向けその時の様子を語りました。今回はその内容をまとめた米Gizmodo・George Dvorskyの記事を紹介します。あらゆる緊急事態に対応する訓練を受けた宇宙飛行士というエキスパート中のエキスパートが、事故をどう語ったのか…!
ニック・ヘイグ(以下、ヘイグ):宇宙に向けて秒速1800メートルで飛んでいく中ブースターに問題が発生したら、事態は凄まじい勢いで進行していきます。
その時、ソユーズのモジュールはロケットのコアから乱暴に振り飛ばされていました。クルーはほんの一瞬、無重力を体験。さらに彼は真っ黒な宇宙と地球の地平線を見たと語っていますが、それが最後に彼の見た宇宙の風景。名残惜しむ間もなく、仕事へと戻り、流暢なロシア語で地上の管制官たちと通信しました。
ヘイグ:カプセルの中にいた私は、直感と反射からロシア語をしゃべることにしました。そして成功するために我々は、平静を保ちながらやらねばならない手順を能な限り効率的にこなす必要がありました。
そして自由落下をする中で、ヘイグは取り乱すことなく事態を丁寧に監視。アレクセイ・オブチニンがレポーターに語ったところによると、ヘイグは危機的状況の中でも落ち着き放ち、着地の正確な座標を報告したのだとか。
アレクセイ・オブチニン:パートナーのニックは真のエキスパートであり、完全に冷静でした。彼の目には一点の恐怖もなく、(地上からの質問に)すぐさま応答していました。彼がこの緊急事態を完全に掌握していたのは明らかでしたね。
それから脱出用カプセルのパラシュートが展開するのを確認し、二人は地球の重力の約7倍という凄まじい衝撃に備え、30分に及ぶ降下の末、宇宙飛行士は両方共怪我なく着陸。
ヘイグ:ストラップで逆さ吊りになったような状態で、私たちはお互いを見て、満面を笑みを浮かべていました。彼が手を差し出したのでそこから握手をし、なんて短いフライトだったかといくつかジョークを交わしましたよ。
ロシアでは35年ぶりのとなる事故であり、何十年もの間、打ち上げ脱出システムは使われていませんでしたが、ヘイグは中止手順がしっかりと機能したことに感謝すると共に、打ち上げ脱出システムが自分とオブチニンの命を救ってくれたと称賛しています。
恐ろしい事態でしたが、無事に生還できてなにより。この状況下で笑顔でジョークを言い合えてしまう辺り、宇宙飛行士はやはり凄い…。
ちなみに事故原因についてはまだ調査中ですが、次の打ち上げの準備が整い次第、再び国際宇宙ステーションに向けて飛び立つとのこと。打ち上げの成功を祈っておきましょう…!