大人は気付かない。子供が今、ロボットから受けている影響

  • 9,773

  • author 勝山ケイ素
大人は気付かない。子供が今、ロボットから受けている影響
Image: Vollmer et al., Sci. Robot. 3, eaat7111 2018

コミュニケーションロボットやAIアシスタントが当たり前になりつつある今、「子供はロボットからの同調圧力を受けやすい」という、ちょっと心配な研究結果が話題になっています。

ドイツ、ビーレフェルト大学のAnna-Lisa Vollmer氏 のチームが行ったのは「アッシュ・パラダイム(アッシュの同調実験)」として知られる、心理学者ソロモン・アッシュの実験のアレンジ版です。

かつてアッシュは、「線の長さを比べる」という超かんたんなテストでも、自分以外の被験者が誤った回答をした場合、自分もつられて同じ回答をしてしまう傾向があることを示しました。今回Vollmer氏は、サクラロボットとしてSoftBank Roboticsの喋って踊れるヒューマノイドロボットNAOを3体用意しましたが、果たしてその結果は...?

Screenshot taken from the Asch paradigm social conformity test.
アッシュの同調実験で使われる、左と同じ長さの線分を選ぶテスト。どう見ても答えは2ですが、同席したサクラたち全員が間違った答えを選ぶと、同調圧力で答えを間違えてしまうのだとか。
Image: Vollmer et al., Sci. Robot. 3, eaat7111 2018

Science Roboticsに公開された実験結果によると、大人たちはロボットからの影響をあまり受けなかった一方、子供たちは周囲のロボットの意見が明らかに間違っていても同調してしまう傾向が見られたとのこと。実験では75%近くの子どもが、ロボットにつられて間違った答えを選んでしまったのです。

The Asch paradim in action: An adult with three robotic peers.
Image: Vollmer et al., Sci. Robot. 3, eaat7111 2018

なぜ子供たちはロボットからの同調圧力に影響されたのでしょうか。ヴォルマー氏はロボットは「個人や組織に所有されている場合が多く、間接的に同調圧力を代行している可能性がある」とも指摘しています。しかし、もっと単純に考えられる原因は、子供がロボットに人格があると強く感じているのかもしれないということです。

たしかに子供の頃を思い出せば、大人が腹話術で操るぬいぐるみが生きていると信じていた時もありましたし、日本でもスマートスピーカーに人格を感じているお子さんが話題になりました。

そして、原因はどうあれ「ロボットは子供たちを同調させる力を持つ」という観察結果が出たことは事実です。研究チームは、機械と子どもの触れ合いによるリスク予防などについて、議論を継続するよう忠告しています。

One of 43 children going through the test, with a humanoid robotic peer group.
Image: Vollmer et al., Sci. Robot. 3, eaat7111 2018

今後、内面でも外見でもより人間らしい機械が現れるかもしれませんし、そんな未来への想像は心躍ります。しかし、大人と子供ではロボットやAIへの感受性が大きく異なっていて、私達はそのことを忘れてしまいがちです。

今回の実験結果は、子供たちが機械を通して傷つけられることがないよう、いっそう気を配る必要を感じるものでした。子供にとって初めての親友がおもちゃのロボットやAIアシスタントだという時代が、もう到来しているかもしれないのですから。

Source: Science Robotics

あわせて読みたい

powered by