デジカメ創世記は、なんとKodak社員の暇つぶし

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  • author 西谷茂リチャード
デジカメ創世記は、なんとKodak社員の暇つぶし
Image: Undrey/Shutterstock

生まれはKodak、育ちは宇宙。生まれてくれてありがとう。

デジタル世代にはあまり馴染みがないフィルムカメラの時代。写真用品メーカーのEastman Kodak(イーストマン・コダック)は、アメリカ市場の実に85%の販売シェアを握る巨人でした。しかしデジタルの時代が始まって数十年、2012年に経営が破綻し、今となってはフィルムを作ってくれる数少ないメーカーとして重宝される存在に…。

フィルムを一切使わないデジタルカメラなんて、Kodakの天敵です。どこの誰が作ったんだろう? Kodakはどう対応したんだろう? と思って調べてみたところ…。

…なんとKodak自身だったという!

幹部を恐怖に陥れた0.01メガピクセル

世界初の単体デジカメは、Kodak研究員スティーブン・サソン氏の発明品でした。それもスティーブン氏の上司が、「はい、これCCD。使えそう?」と軽めに課した、いわば暇つぶしプロジェクトの産物だったのです。

世界初のデジタルカメラ(1975年生まれ)


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Photo: Mr. Gray/Flickr


これは何?:重さ3.6kg・解像度0.01メガピクセルの白黒CCDカメラ

価格:プライスレス

好きなところ:バッテリーが積まれていて、一応持ち歩けるところ

好きじゃないところ:1枚撮影するのに23秒もかかるところ

世界を変えるかもしれない発明品を、上司らにワクワクしながらプレゼンをしたスティーブン氏。しかし反応はネガティブ…どころか恐れられてしまいます。「このことは社外秘に。フィルムが売れなくなってしまうからね」と箝口令を敷かれるほど。

その後もデジカメの研究は続いたそうですが、この技術が日の目を見たのはまったく別の場所だったのです

そこは…。

宇宙でした!

使い捨てスパイ衛星は使いにくい…

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Image: NASA
HK-11 Kennenにとても似ているといわれている、ハッブル宇宙望遠鏡

信じられないかもしれませんが、当時のスパイ衛星は巨大なフィルムカメラでした。打ち上げ→撮影→フィルムを投下→航空機が空中でキャッチするという使い方。写真はすぐに見れないし、お金はかかるし、とにかく不便の極み

もう耐えられない、とアメリカ当局はデジカメ技術に目を付け、1976年にさっそく、世界初のデジカメ搭載スパイ衛星KH-11 Kennen」を打ち上げます。解像度は驚異の0.64メガピクセル

そして2年後にはもう1機、4年後にまたもう1機、何年かに1機打ち上げるハイペースでおかわりを繰り返し、世界中の秘密を撮り放題。やはりフィルムを回収せずに、撮影して数分・数秒で確認できるのは美味しかったのでしょうね。今やスパイ衛星は当たり前の世界となり、空を見上げると薄ら寒い感覚を覚える(人もいる)時代となっています。

でもこの技術は世界に感動も与えてくれました。我々に宇宙の美しい画像を届けてたハッブル宇宙望遠鏡は、HK-11 Kennenの兄弟機と言われているんです。結局、技術は使いようなんですよね。

いっぽうその頃、地上では

1991: DYCAM-MODEL I/ LOGITECH FOTOMAN. Dycam Inc., Chatsworth, California-USA

暇つぶし(1975年)、スパイ衛星(1976年)と来て、デジカメはいつ民間の手に渡ったのか。その答えは20年以上もあとの、1990年のことでした。というのも、アナログ方式で画像や映像を保存する「電子カメラ」は1981年に発売された「Sony Mavica」を機に普及し始めていたのですが、デジタル方式で保存する「デジカメ」は、使える保存媒体がないなどの理由で出せていなかったのです。

しかし! それも1988年に富士フイルムが発表したデジカメ「FUJIX DS-1P」(未発売)を皮切りに、1990年には「Dycam Model 1(↑画像)」が実際に店頭に並び、さまざまなデジカメが世に出回るように。今やスマホ搭載のカメラや、フルサイズミラーレス、360°カメラたちが最高の盛り上がりを見せています。

カメラが生まれてからはどの瞬間もカメラ黄金時代。でもだからこそ、今が一番面白い!

Source: Wikipedia (1, 2, 3, 4, 5), YouTube, DIY Photography, The Vintage News, The New York Times, PhysicsCentral, CNET

訂正[2018/11/26]誤字を訂正しました。

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