Appleのウォール弁護士涙目。App Storeとアップル税、独禁法違反の最高裁審理で逆風

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Appleのウォール弁護士涙目。App Storeとアップル税、独禁法違反の最高裁審理で逆風
Image: hilalabdullah/Shutterstock.com

Appleの弁護士さんがWallさんということに何よりも驚きました…。

iOSアプリの販売網をApp Storeの壁に囲い込んで、30%のアップル税をデベロッパーに課す行為が独禁法違反かどうかを争う最高裁口頭弁論が月曜いよいよスタート。初日はApple(アップル)に圧倒的に不利な展開となりました。

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https://www.gizmodo.jp/2018/06/appstore-antitrust.html

7年経っても入り口にすら立っていない

「Pepper v Apple Inc」と名付けられたこの集団訴訟は、iPhoneユーザーのロバート・ペッパー博士ら4名が2011年から延々やっているものです。地方裁で訴えは棄却され、昨年、サンフランシスコの第9巡回控訴裁で判決が覆えされ、最高裁まで上ってきました。「訴え自体が認められるかどうか」の入り口のところで7年経った今も足踏みしているんでありますね。

ぺッパー博士の主張は単純で、「iOSユーザーはAppleのApp Storeからしかアプリを買えない。しかも、Appleは売上の30%をデベロッパーから徴収している。これでは誰も競争に勝てない。不当に値上げをしてそのツケを消費者に回している」というものです。これに対しAppleは「イリノイ・ブリック」の判例(1977年)と「ハノーバー製靴」の判例(1968年)を持ち出し、「Appleは開発者とユーザーの仲介をしているだけであり、請求の『中継ぎ』に法的責任は問えない。値段が不当なら各開発者を訴えるのが筋」と言っています。

どっちに転んでも壁に囲まれた庭(クローズド・プラットフォーム)に穴が開くことはなさそうですが、成り行きによってはドアぐらいは開くかもしれない…ということで行方に注目が集まっているのです。

報道陣の感想は「アップル逆風」

ペッパーさんの原告適格判断がくだるのは数カ月先なので、審理を傍聴した記者団の感想をとりあえず見てみましょう。

トランプ政権弁護団とAppleは訴えを退けるように働きかけたが、裁判官からは厳しい質問が相次いだ。リベラル派の判事4人は訴えは妥当との判断だった。(Los Angeles Times


Apple支持の姿勢を見せたのは裁判官9人の中でジョン・ロバーツ裁判長ただひとりだった。(Associated Press News


リベラル派の裁判官4人は全員、Appleの独占を疑っていた。保守系の裁判官3人(サミュエル・アリート判事、ニール・ゴーサッチ判事、ブレット・カバノー判事)も同調する姿勢を垣間見せる展開となった。(USA Today

どの報道を読んでも、Appleの主張があまり取り合ってもらえていない印象です。とりあえず疑って議論を尽くすのが法廷なので、これがそのまま判決と見るのは早計かもしれませんけどね…。

「イリノイ・ブリックの判例」も通用せず

傍聴記録を読むと、ソニア・ソトマイヨール陪席判事が結構アンチAppleなんですね。「イリノイ・ブリックの判例は通用しない」と、Apple法務顧問のDaniel Wallさんに説明しています。

このイリノイ・ブリックというのは、「消費者はれんがメーカーから直接れんがを買うわけじゃないので、れんがメーカーを独禁法違反で訴えられない。訴えられるのは左官だけだ」という司法判断を指します。「直接買う人だけが訴えらえる」としたのは、たとえば中間業者が同じ理由でメーカーと消費者の両方から訴えられたりしないようにするためなので、「Appleの場合は閉じられたループの中で起こっていることなので、状況が全然違う」というんですね。

「消費者はAppleから買っている」

Apple的には「アプリを売っているのはデベロッパー」という認識です。30%の手数料についても、「デベロッパーにアプリ作成ツールを提供し、その費用として回収している」と言っています。これに対し、ソトマイヨール判事らは「アプリを売っているのはAppleであり、30%の手数料を上乗せして消費者から回収している」というスタンスなのですね。Wall弁護士が「Appleの訴えを棄却した第9巡回控訴裁ですらこの解釈は認めていた」と食い下がると、スティーブン・ブライヤー判事が主張を遮って、こんな風に語りました。

「独禁法違反業者からBさんが仕入れたものをAさんが買ったら、それは直接取引ではない。だが、独禁法違反業者からAさんが買ったらそれは直接取引だ。シンプルこのうえない。


理論的も、判例的にも、反トラスト法で過去学んだいかなる知識をもってしても、この認識に狂いはない。それが間違いだというならその理由を説明してほしい」

こんな調子で、話をややこしくするWall顧問弁護士、 シンプルな話に戻そうとするBreyer判事の攻防が延々と続きました。本当にややこしいですけど、要するに判事側は「Appleがユーザーに直接アプリを売っているわけではないのだから、訴えられる筋合いはない」というAppleの主張には全然納得していないんですね。

もしこの雲行きが本当なら、いざ提訴が受理されて本裁判となればかなりAppleにとって道は険しいものになりそうです。Wall弁護士は30%の手数料は消費者に何かあったときの「損害保険」だと言ったんですけど、ソトマイヨール判事に「損害を埋めるどころか、これのせいで値下げができなくなっている」、「次の審理では独占販売体制がなかったらどんな値段になるのかにも検証が必要だ」と一蹴されていますからねぇ…。

Appleの味方は最高裁長官だけ

ジョン・ロバーツ最高裁長官だけはAppleの主張を支持し、「Appleは2方向市場なので、両方から訴えられる恐れもある」と語り、イリノイ・ブリックの判例が通用するのではないかとの見方を示しました。しかし、エレナ・ケイガン判事は、そもそも損害の質が違いすぎるので一緒には語れない、と言っています。ユーザーは「値段が高すぎる」と訴えるだろうし、デベロッパーは「取り分が安すぎる」と訴える、まるでベクトルが違うというんですね。

審議の争点は今のところ、原告の消費者側にAppleを訴える権利があるかどうかなので、壁に囲まれた庭の何が解決するってものでもありませんけど、それでもデベロッパーとユーザーはそれぞれの理由で提訴できる、と言っている裁判官もいるんですね。発見だなぁ…。賛否はさておき、AppleがiOSの独占禁止法違反で訴えられる可能性が急に現実味を帯びてきました…。

Source: Supreme Court of the United States, Los Angeles Times, Associated Press News, USA Today

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