もうデザイン見ただけで、あーッ!
たまに古い家電屋で中古のプレイステーション本体を見ると胸がキュッと熱くなること、ありますよね。そんな大人になった私たちの、子どものノスタルジックな気持ち(財布)を掴むために各種ハードウェアメーカーが出してきているのが、クラシック・デバイスです。スーパーファミコンやファミコンに続いてソニーも出してきました、プレイステーション・クラシック(北米版)。
小さいプレイステーションだなんて、見た目だけで欲しくなります。実際のプレイした感想はどうでしょうか。米GizmodoのSam Rutherford記者は、プレイステーションで育っただけあって残念な気持ちも大きいようです。ちなみに、本記事でレビューしているプレイステーション・クラシックは北米版のため、日本版とは一部タイトルが異なりますので、ご注意ください。
レトロなゲーム機を再発売するという試みはゲームで育った大人たちのノスタルジアを吸い取って収益とするための大企業による戦略だとは分かってはいます。それでもなかなかその魅力に抗うのは難しいわけです。
グレーのプラスチックな本体に起動音がセットでやって来るだけで、脳の奥深くがジワッと涙を流すのが感じられます。そんなノスタルジアに弱い私ですから、ソニーがオリジナルのプレイステーションをレトロ・リバイバルとして再発売すると聞いた時に「これでまたコレクションが増える」とワクワクしたのです。しかし、実際に使ってみると、若干ダマサれた感覚は否めませんでした。

プレイステーションクラシック(以下PSクラシック)でプレイできるなんともランダムなゲームの種類について話す前に、まずハードウェアについて話しましょう。
クラシックミニのスーパーファミコンやファミコンと同様、PSクラシックは1994年に日本で発売開始されたオリジナルのデザインを小さくしたものです。オリジナルの半分程度のサイズで、懐かしいデザインが復活された姿はやはり胸にキュンと来ます。
備わっているボタンはすべてちゃんと機能を持っていますが、システム自体が変更しているのでCDトレイ部分は開くことができません。PSクラシックではリセットボタンを押すとプレイできるゲームのリストが見られるメイン画面につながります。オープンボタンは、『ファイナルファンタジーVII』のように複数のCDでゲームが収録されていたゲームのディスク交換のボタンとなっています。

CDトレイと同様、メモリーカードのスロットも開きません。CDもメモリーカードも必要無い時代なので、これは分かっていたことですが、やはり少し残念です。しかしバーチャルなメモリーカードは用意されているので、そちらでゲーム内容をセーブします。
そして不思議なのはPSクラシックには電源アダプターがありません。箱を開けるとコントローラーが二つ、HDMIケーブルが一つ。そしてmicro USBコードがあるのですが、差し込むためのブロック部分は付いてきません。ただ、電源の条件自体はミニマルになっているので(ソニーによると5V、1Aアダプターとなっています)、古いスマートフォンの充電ブロック部が残っていたらそれを使えるでしょう。しかしレトロ・コンソールで100ドルもするデバイスが、必要な部品を全て揃えていないというのはちょっと妙です。

今回のレトロ・ハードウェアの中で一番よく出来ているのはコントローラーかもしれません。20年前のオリジナルと比べると若干小さく感じられるものの、オリジナルよりも頑丈に感じられますし、ボタンを押した感覚が強くあります。「デュアルショックのコントローラーだったら良かったのに」と思っている人もいるかもしれませんが、コントローラーをちゃんと二つ入れてくれているのでそこは許せる範囲です。

では、プレイできるゲームは何か、です。全リストを見たい人は記事の一番下をご覧ください。
プレイステーションが世に送り出してきたゲームを考えると、PSクラシックのゲーム・チョイスは残念と言わざるを得ません。なぜこれらが選ばれたか、ソニー側の哲学を考えると...プレイステーションの起源を祝うといったところでしょうか(もしくは単純にもっと人気だったタイトルは権利が獲得できなかったなど)。
『鉄拳3』や『メタルギアソリッド』(今やっても完全に楽しめます)といった至宝も含まれている一方で、『トゥームレイダー』『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』『クラッシュ・バンディクー』は含まれていません。その変わりに『IQ』、『ジャンピングフラッシュ!』といったぎこちない3Dゲームの第一世代は含まれています。この二つは2018年にプレイしてもまだ楽しめるね、とはなりません。

そして妙なチョイスとして挙げられるのが、プレイステーションよりもPCのゲームとして私は理解していた『グランド・セフト・オート』や、(プレイ自体が困難な)『ツイステッドメタル』、『サイフォンフィルター』などです。当時はゲームとしてまぁその存在価値があったのでしょうが、それ以降にもっと面白い続編が登場しています。
PSクラシックでプレイできる20のゲームをクラシックミニ・スーパーファミコンと比べると、ソニーの今回の試みはなんとも投げやりなゲーム選択になっている、もしくは万人受けしないニッチな選択になっているという印象です。プレイステーションがかつて抱えていた膨大なゲームタイトルの海を考えると、これは悲しいですよね。

もう一つマイナーな不満として挙げられるのは、今日のワイドスクリーンTVでプレイステーション・ゲームをプレイした時に余ってしまう画面部分を埋める・隠すというオプションが無いことです。
またセーブ機能も驚くほど最小限になっています。ゲームを終了するには、リセットボタンを押してメイン画面に戻ります。それによって自動で続きからプレイできるようにセーブされるというもの。それだけです。続きからプレイできるセーブ数も一つです。クラシックミニ スーパーファミコンで可能だった巻き戻し機能もありません。

それでも、PSクラシックのおかげで、私の彼女も『ミスタードリラー』にハマってくれました。また『ワイルドアームズ』をプレイできたのも嬉しいです。しかし、しかしです。『幻想水滸伝』はなぜ入っていないのでしょうか(1でも2でも良いです)、『トニー・ホーク・プロスケーター』(こちらも1でも2でもどちらも良し)、『パラッパラッパー』は、『サイレントヒル』は?! 『デストラクション・ダービー』は入ってるのに『グランツーリスモ2』は入ってないとはどういう?!こと?!ですか?!
ではこの記事を読んでいる皆さんにとってPSクラシックが楽しめるデバイスかどうかは次の3点によります。
ゲームラインナップをどう思うか。USBコードでくっついたコントローラーでどこまで楽しめるか、そして小さくてかわいいPSコンソールにいくら払う覚悟があるか、です。

一歩下がって考えてみると、あらゆる面で最小限であることに気付きます。セーブ機能もそうですし、電源に差し込むためのブロック部分すらありません。
昔のノスタルジアをユーザーたちに持ってもらうために本当に最小限だけをかき集めました、というのが今回のプロダクトです。もちろん、今発売されているコンソールと比べると100ドルというのは決して高くありません。けれども、皆のプレイステーションはこれよりももっと良い扱いを受けてしかるべきではないでしょうか。

まとめ
・電源に差し込むためのブロック部分が付いてきません。なので古いスマートフォンのブロックが手元にあることを祈りましょう。
・ボーナス機能はほぼありません。セーブ機能も残念です。
・コントローラーは二つ。USBポートもあるのでコンピューターに差し込むこともできます。
・プレイできる20のタイトルは当たり外れあり。
ゲームリスト(北米/欧州版)
1. 『闘神伝』
2. 『クールボーダーズ2』
3. 『デストラクション・ダービー』
4. 『ファイナルファンタジーVII』
5. 『グランド・セフト・オート』
6. 『IQ』
7. 『ジャンピングフラッシュ!』
8. 『メタルギアソリッド』
9. 『ミスタードリラー』
10. 『エイブ・ア・ゴーゴー』
11. 『レイマン』
12. 『バイオハザード・ディレクターズカット』
13. 『女神異聞録ペルソナ』
14. 『R4 リッジレーサータイプ4』
15. 『スーパーパズルファイターIIX』
16. 『サイフォン・フィルター』
17. 『鉄拳3』
18. 『レインボーシックス』
19. 『ツイステッドメタル』
20. 『ワイルドアームズ』