毎年恒例「Year in Preview」もそろそろ始まるころですね〜。
AIを駆使して、いいねがたくさんある投稿などを自動でまとめるFacebook(フェイスブック)の機能「1年を振り返る」プレビューは、毎年恒例となりました。わたしの「過去のこの日」にも数年分が表示されて感慨にひたっていたばかりです。
的外れな写真を捉えることもありますが、まあ感動的なこともあります。
Facebookは公式サイトで楽しかった思い出ばかりを振り返っているようですが、振り返りたくない思い出もあるわけで...。米GizmodoのAdam Clark Estes記者が、その振り返りたくない思い出をあえてまとめてくれています。
マーク・ザッカーバーグ帝国Facebookにとって、2018年はスキャンダルに次ぐスキャンダルで、記録的にさんざんな年だったといえるのではないでしょうか。それなのに公式の「Facebookの2018年を振り返る」を見ると、ロイヤルウェディング、ワールドカップ、スーバーボウルと無邪気で華々しいワールドイベントが列挙され、スキャンダルの「ス」の字もありません。そこでさしでがましくも米Gizmodoでは、大量虐殺、大統領選挙妨害、データ漏洩、経営陣の不祥事、陰謀説など、Facebookが公式の2018年まとめに入れていない、2018年をどす黒く彩ったブラックな出来事をあえてまとめてみましたよ。
Facebookの2018年は決してきらびやかなものではなかったはず。振り返りに羅列されているグローバルイベントの数々により、きれいに浄化されていますが、ふたを開ければブラックな過去が渦巻いているのがわかります。Facebookが書き忘れたブラックな2018年のまとめ、いってみましょう。
マーク・ザッカーバーグの約束
ここ数年、マーク・ザッカーバーグはこの季節になるとFacebookに新年の抱負的な投稿をしてきました。 これまではバカバカしいものや微笑ましいものがありましたが、2018年の抱負はFacebookが抱える問題の解決という大それた約束でした。
マーク・ザッカーバーグの投稿より :
世界中が不安の視線を投げかける中、Facebookは大きな重荷を背負ったのです。私の使命は、ユーザーの心無い悪用や悪意ある使用からコミュニティを守ること、他の国の政治介入からアメリカまたその他の国を守ること、みなさんがFacebookですごす時間が有益なものとなるようにすることです。 2018年はこれら重大な事項を修正していくことを目標にします。すべての間違いを防いだり悪用を予防することは不可能です。ですが、現在この間違いや悪用が多すぎるようです。今年2018年の1年は、この部分でよい年にしたいと思います。
この約束はどうやら果たされていないようです。むしろFacebookはさらに多くの間違いを犯しているともいえるかも。2018年にFacebookが関与したブラックな出来事にはここ数年続いているものすらあります。Facebookの数々の騒動の影に、今や民主主義の存在すらあやぶまれているのです。
ロシアによる大統領選挙の妨害事件
アメリカ大統領選は2016年のことでしたが、Facebookはその騒動を2018年まで引きずっていました。マーク・ザッカーバーグの抱負の言葉どおり、ロシアをはじめ他の国に一国の選挙を妨害させるようなことがあってはなりません。ただ、Facebookの広告部バイスプレジデントのロブ・ゴールドマン氏はツイートで「こんなことを防ぐのは簡単。デジタル教育を受けた市民を増やせばいい」と発信して一悶着起こしていました。
The Russian campaign is ongoing. Just last week saw news that Russian spies attempted to sell a fake video of Trump with a hooker to the NSA. US officials cut off the deal because they were wary of being entangled in a Russian plot to create discord. https://t.co/jO9GwWy2qH
— Rob Goldman (@robjective) 2018年2月17日
私はリアルタイムでロシア絡みの一連のフェイク広告を見ていますが、これは選挙の妨害が主な目的ではありません。国を分断させるのが目的なんです。ドナルド・トランプはゴールドマンのツイートをリツイートしています。まるでロシアが社会混乱をひき起こそうとしたその目論見はすべて「偽ニュースメディア」がその原因と言いたいかのようです。ゴールドマンは謝罪しましたがFacebookを去ることはありませんでした。
ロシアがアメリカの大統領選挙をFacebookで操作したとは思いたくないですね。 そんなのクレージーに決まってますから。
ケンブリッジ・アナリティカ事件
イギリスの選挙コンサルティング会社Cambridge Analytica(ケンブリッジ・アナリティカ)が引き起こしたデータ漏洩事件は、大きな注目を集めました。3月、Facebookは8700万人のユーザーの個人データを不正に取得していたとして、Cambridge AnalyticaをFacebookから追放しました。始末の悪いことには、Facebookはそれを2015年の時点ですでに把握しており、Cambridge Analyticaに削除するよう要請しているのです。Cambridge Analyticaはトランプ選挙戦においても使用されており、ロシアの大統領選介入について特別捜査官ロバート・ミューラー の調査を受けています。この事件により、ユーザーは裏切られた気持ちでいっぱいになりました。
事件が明るみに出てからマーク・ザッカーバーグは公式の場から雲隠れをしています。米連邦取引委員会や米議会に説明を求められたり、イギリス議会から公聴を求められていたのに拒否したりして、この時期、常にいろんなメディアのヘッドラインを賑わせていましたよね。結局のところマーク・ザッカーバーグは公聴会で発言しました。それを見た人に「ゾンビに噛まれているのにそれをみんなに隠しているゾンビ映画の登場人物みたいだ」なんて言われています。それでもFacebookのCEOはいろんなことを答えていませんが。
ミャンマーの民族浄化と大虐殺
Facebookを悪用して、ロヒンギャのイスラム教徒に対する憎悪のメッセージが仏教徒を数多く有するミャンマー国中に流布され、少数民族ロヒンギャが迫害を受けたあの事件です。罪なきロヒンギャが殺戮され、兵士による女性や子どものレイプまで発生しています。殺戮は数年かけて行なわれてきたものですが、2018年に国連の調査団は民族浄化の殺戮を駆り立てるのにFacebookが「決定的な役割」を果たしていたとしています。国連は、Facebookのヘイトスピーチへの対策は「遅すぎて効果がない」ともしています。この問題が国際的に明るみに出てほうぼうから批判を浴び、最終的にマーク・ザッカーバーグはヘイトスピーチをFacebookの問題であることを認めています。
出会い系機能の追加
Cambridge Analyticaスキャンダルの火種がくすぶり続けているその時に、スキャンダルもなんのその、Facebookのデベロッパー向けカンファレンス「F8」 でマーク・ザッカーバーグは、「近いうちにFacebookにデート機能をつける」と発表し、ひんしゅくを買いました。これでユーザーが求める将来の相手のデータについてもたっぷり収集できるようになります。どんだけ貪欲なんだか。
不気味な広告トラッキング
巷には、Facebookが裏でこっそりとマイクを使って無垢なユーザーの携帯電話から会話を盗み聞きしているのではないかという都市伝説が流れています。もっと広告機能を高められるように。ノースイースタン大学の研究によれば、盗聴はされていないようだが盗撮されているとか。とにもかくにもこの薄気味悪いターゲット広告についての事実は、陰謀説よりも驚愕に値するものです。Facebookをログアウトした後にも、ユーザーの動向を追跡していたのですからね。
Zuckerberg hems and haws when asked if Facebook tracks users even after they've logged off. pic.twitter.com/m55qBoGmOS
— Mashable News (@MashableNews) 2018年4月10日
2018年は特にこの話題でもちきりでした。多くの人にとって今後の身の振り方を考えるきっかけとなったでしょう。米議員ロジャー・ウィッカー氏はゾンビCEOマーク・ザッカーバーグにこの件で問い詰めましたが、ザッカーバーグ氏はうまいこと回答を拒否しています。
データを気前よく共有
Facebookはこと個人データに関してはユーザーに黙って気前よく他の会社と共有するのが得意なようです。Facebookが議会に告白したのをみると、共有された会社には、Apple(アップル)、Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)が含まれており、それだけでなく中国企業のHuawei(ファーウェイ)、Lenovo(レノボ)、Oppo(オッポ)までにもおよんでいます。共有されたデータにはユーザーの名前はおろか、生年月日、位置情報、写真、リンクまで含まれています。Facebookは言い訳がましく反論していましたが、米議員フランク・パローンに「回答すればするほど疑問が生じる」と言わしめています。 ギズモード・ジャパンではその対策を指南しています。
創業者エクソダス
WhatsApp(ワッツアップ)とInstagram(インスタグラム)の買収により、Facebookは巨大企業にのしあがりました。2018年、Facebookは両社の創業者が会社から旅立ったのを傍観しています。WhatsAppの共同創設者ジャン・コウム氏は春に退任。 WhatsAppのもう一人の共同創設者であるブライアン・アクトンもまた「Facebookを削除するときが来た」とツイート。Instagramの共同創設者ケヴィン・シストロムCEOもマイク・クリーガーCTOも辞めてしまいました。企業買収後に創設者が辞めるのはそれほどよくあることではありません。どうしてみんな同時期に辞めてしまったのでしょうねえ。
セキュリティ
いきなりログアウトしてパスワード変更を要求された...50万人が影響したあのFacebookの情報流出事件も記憶に新しいです。ユーザーの情報はハッカーにより盗みたい放題だった事実は衝撃を与えました。2700万人分の個人情報が盗まれたとのこと。この人たちの名前、恋愛や結婚の状態、位置情報、Facebook上での検索データ、いいねをつけたFacebookページについてのデータが流出しています。これによりEUから制裁を受け、罰金も。特にCambridge Analyticaスキャンダルが世間に露呈してから間もないこともあり、Facebook帝国は窮地に立たされました。この頃Facebookはイギリスから罰金も課されてました。
ジョージ・ソロス陰謀論
Facebookがロシアの選挙妨害を認めてマーク・ザッカーバーグが謝罪したばかりなのに、またまた騒動噴出。ユダヤ系アメリカ人の有名な富豪投資家であるジョージ・ソロス氏。彼が反トランプ活動の資金を支えているとする一連の主張は保守派の「陰謀論」とされています。Facebookはその陰謀論流布に一役買ったとされているのです。ソロス氏はFacebookの批判者でも知られます。過激派のトランプ支持者によるソロス氏自宅の爆弾騒ぎも勃発しています。
マーク・ザッカーバーグ氏はリベラルを調べる調査会社を雇い、競合企業や自社に批判的な中傷キャンペーンを展開させたとした事実について、「何も知らない」としています。 Facebook COOであるシェリル・サンドバーグ氏は、ソロス氏の身辺調査を指示していたことが暴露されています。12月にFacebookの取締役会は、ソロス氏がFacebookを「社会の脅威」と批判したことを受け、ソロス氏がFacebook株を空売りしているかどうかサンドバーグ氏が調査を求めたのは適切だったとしています。
2018年を振り返ってみれば、こーんなにブラックな話題がてんこ盛りだったFacebook。ユーザー離れもますます加速するばかり。さて、ザッカーバーグ氏の2019年の抱負が楽しみです。