「忘れた記憶を復活させる薬」が発見されたから、もうあの言い訳は使えない?

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  • author ヤマダユウス型
「忘れた記憶を復活させる薬」が発見されたから、もうあの言い訳は使えない?
Image: Bondar Pavel/Shutterstock.com

記憶にございません→じゃあこの薬をどうぞ→うぼぁ

そんな証人ドラッグ喚問が中継される日も来ちゃうんでしょうか。東京大学のサイトにて、忘れてしまった記憶をスムーズに思い出せるという、なんともSF感あふれる研究成果が公開されています。

その概要は、脳内のヒスタミン神経系を刺激する薬物を投与すると、忘れてしまった記憶を思い出せるようになることが、ヒトおよびマウスへの試験で明らかになったというもの。しかも、記憶力がイマイチな人ほど強い薬効が認められたとのことです。

ヒトへの試験内容は、参加者に128枚の写真を見せて、1週間後に既に見せた写真のうち32枚、類似の写真32枚、そして見せたことのない写真32枚を見せて、1週間前に見たことがあるかどうかを質問するというものでした。結果は、ベタヒスチン(ヒスタミン神経活性化薬)を投与された参加者は、プラセボ(有効成分の無いプラシーボ的な薬)を投与された参加者よりも高い正答率を出しました。

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Image: 東京大学

また、プラセボを投与された参加者のうち、特に正答率の低いヒトにベタヒスチンを投与すると、正答率が大きく上昇したとのこと。逆に、正答率の高かったプラセボ投与者ににベタヒスチンを投与すると、正答率が低下したようです。

記憶は時間が経つとに思い出しにくくなっていき、ある閾値を下回るとほぼ思い出せなくなります。しかし、記憶の痕跡は残っていると考えられており、これを回復させる力がヒスタミンにはあるとわかったワケです。回復を図示した確率共鳴モデルを見てみましょう。

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Image: 東京大学

古くなった記憶画像はどんどん色あせていき、ある濃度以下になると二値化(0と1のモノクロ化)しても表示できなくなる、つまり思い出せなくなります。この色あせた画像にノイズを付与すると、薄まった図柄の上にノイズが乗ることで図柄の濃度が上がり、閾値を上回るという仕組みです。このノイズというのが、ヒスタミンが神経活動に加える刺激ということですね。

一方で、もともと鮮明な記憶画像にノイズを付与すると二値化した際に多くのノイズが混じってしまい、記憶とノイズの比率(S/N比)が悪くなってしまうそうな。先の試験で、正答率の高かったプラセボ投与者にベタヒスチン投与して、正答率が下がってしまったメカニズムがこれです。

これらの研究成果は、未だ謎が多い記憶のメカニズムに有益なのはもちろん。アルツハイマ病や、認知機能障害の治療薬開発のヒントになることが期待されています。わりと生活に密接な研究成果と言えますね。

二値化によって明確にするにも限度はあるでしょうけど、もし幼少期の記憶や学生の頃の思い出なんかを呼び起こせたら、『トータル・リコール』のような記憶の旅めいたことが楽しめたりするんでしょうか。僕たちは記憶によってできていると何かで読んだ気がするけど、なんだったけなぁ。思い出したいなぁ。

Source: 東京大学