JAXAが打ち上げる人工流れ星衛星、人々は楽しんでくれるのだろうか?

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岡本玄介
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JAXAが打ち上げる人工流れ星衛星、人々は楽しんでくれるのだろうか?
Image: ALE

ナントカ座流星群を見上げて待つより、一度に見られるのは良いですよね。

JAXAのイプシロンロケット4号機がいよいよ1月18日に、人工流れ星を放つ衛星などを載せて、鹿児島県にある内之浦宇宙空間観測所より打ち上げとなります。予定時間は9時25分~10時50分頃。

そこでJAXAはポップなアニメ動画を制作し、このロケットが宇宙へ何を運んでいくかを簡単に紹介しています。

Video: JAXA | 宇宙航空研究開発機構/YouTube

流れ星で染め上げる「Sky Canvas」

「革新的衛星技術実証1号機/イプシロンロケット4号機」には、たくさんの小型衛星が相乗りしており、そのうちのひとつが以前にお伝えした人工流れ星を降らせる衛星「ALE-1」です。

これは科学とエンターテインメントの両立を掲げた民間宇宙企業、株式会社ALEが可能にしようとしている、夜空をキャンバスに見立てて流れ星で染め上げる「Sky Canvas」プロジェクトの一環です。人工衛星から特殊な素材の粒を放出し、大気圏で燃焼させることで流れ星を発生させるというのです。

大空で起こる一大スペクタクルは、自然の流れ星よりも明るい流星群を生み出すはず。一連の情報を知っている人たちなら当日期待しながら空を見上げるかと思いますが、知らない人たちは気付くでしょうか?

Video: ALE_Astro Live Experiences/vimeo

そして彼らは2020年に、広島と瀬戸内海の空の上で壮観な光のショーを演出しようと考えています。FAQページによりますと、「SHOOTING STAR challenge」というイベントが計画通りに行くと、人工流星群は直径200kmに及ぶ範囲から、何百万もの人々が見られるだろうとしています。

今回打ち上げられるALE-1は、この本番前のテストですね。CNETいわく、明朝の打ち上げではこのコンセプトの小型版のプラットフォームが飛び立ち、ALE-1はあらゆる情報を収集することで本番に活かされるそうです。

安全性に考慮しながら東京の夜空にもお届け

ALEのWebサイトでは、衛星の軌道が地上約400kmに達すると、「パーティクル」と呼ばれる小さな人工流れ星の粒子が飛び出すとのこと。これらの粒は、再突入時にゆっくりと大気中を落下し、できるだけ明るく輝くように特別に設計されています。各粒子の大きさは直径1cmで、重さはわずか2~3gです。

粒は地球を約1/4周してから大気圏に突入し、上空60km~80kmの中間圏で摩擦熱により流れ星のように燃焼します。肉眼で確認できる流星群は、イベント毎に5~20の流れ星がおよそ10秒程度続くだろうとのこと。これは自然の流れ星より少し長いものとなっていますが、流れ星の尾の長さまではわからないようです。加えてALEは、たとえば東京の夜空のような明るい場所でも、充分に確認できるだろうと話しています。

粒子は上空40~60km辺りで完全に燃え尽きるはずで、これは通常10km辺りを飛ぶ商業飛行機よりもずっと高い位置です。ALEは、地上に落ちる「宇宙塵」は環境へ最小限の影響しか及ぼさないだろうと考えています。

ひとつの衛星は約1cmの粒を400個保有できます。これは20~30回で使う分量なのだそうです。そして衛星がすべての粒子を放出し終えると、スペース・デブリを最小限に抑えるため大気圏に突入して燃え尽きるよう設計されています。

ALEは、「Sky Canvas」の目的をこう語っています。

世界初の人工流れ星事業「Sky Canvas」は、世界中の人々にかつてない共有体験を提供します。また、宇宙を舞台にした新たなエンターテインメントを常に模索していきます。そして、それらの技術的基盤やノウハウを活かして科学の発展に貢献します

世界初の宇宙エンターテイメント

もちろんペルセウス座流星群や、しし座流星群など自然に起こる流星群もゴージャスですし、日時の予測も可能です。ALEの人工流れ星がいかに科学の発展に寄与するかわかりませんが……宇宙エンターテイメントという新ジャンルで、最初の一歩を踏むのは意義があると思います。

彼らは2020年のイベントのため、そして“世界中の人々にかつてない共有体験を提供”するために、スポンサーを募集しています。それもそのはず、人工衛星の開発には、20億円ほどがかかっているのです。

過去には宇宙アート計画もあった

宇宙にまで手を広げると、打ち上げた先は手に負えなくなっています。たとえば一年前、ロケットのスタートアップ企業Rocket Labは、「Humanity Star」と呼ばれる幅90cmのミラーボール軌道に投入しました。そして昨年の12月に、アーティストのトレヴァー・パグレンが、ネバダ美術館の助けを借り、周回軌道する反射板を芸術作品として打ち上げたこともあります。ですが残念ながら、いずれのプロジェクトも、地球の人たちからはあまり興味を持たれませんでした(天文学者からは不満の声…)。

さてALEが放つ5~20の流星群は、どこまで話題になるでしょうか? イベント開催まで、期待を込めてしばし待つとしましょう。

Source: YouTube, SHOOTING STAR challenge, Vimeo, Astro Live Experiences, CNET, SPACE.com, EarthSky