TV局が消しても、誰かが録画しています。
1972年6月、イギリスのテレビ番組「Lift Off with Ayshea」にて、デヴィッド・ボウイがジギー・スターダストとしてデビューしました。しかし数年後、局の技術者がそのテープをデジタルに変換する代わりに、唯一のパフォーマンス映像を手違いで消去してしまったんです。
番組の音声だけはネットで聞くことができますが、象徴的な瞬間のアーカイヴ映像は、失われてしまったのでした。
ファンが録画していた!
しかし火曜日のこと、なんとファンがベータ方式の家庭用ビデオレコーダーを使い、その映像を録画していたことが明らかにされたんです! しかも、もし運が良ければ、来月のBBCドキュメンタリーにて、それが放送されるかもしれないんですって!
ちなみにWIREDいわく、海外の家庭用ビデオレコーダーはVHSよりベータのほうが先だったようです。結局VHS方式に駆逐されてしまった、残念なメディアとなってしまいましたが。
テープの劣化
この録画は、つい最近になって見つかったとのこと。
てことは、録画した人は確かにそのテープがボウイのデビュー映像だって把握しているのでしょうけれども…放送できるかどうかはまだ断言できない状態らしいんです。というのもテープは経年劣化しており、おそらくドキュメンタリー放送の直前まで復旧が続くと予想されている、とBBCが報じています。
修復方法はある
1970年代初頭のテープには、テープ・フィルムのバインダー磨耗によってテープがベトベトに劣化する「スティッキー・シェッド症候群」なる症状が出るリスクを抱えています。
ですがイリノイ大学の保存自己評価プログラム(PSAP)いわく、これは修復の可能性があるそうなんです。テープのフォーマットにもよりますが、ベトベトのテープには大体55度~60度くらいの状態で1~8時間以上置いておく「焼き入れ」が一般的な修復方法なのだそうです。とはいえこれは永久的な解決策ではなく、数カ月でテープが水分を吸収してしまうまでの一時的なもの。
そして、The Telegraphはこの録画テープが、イギリスのグラナダTVへと送られたと報じています。ここで技術者によりデジタル化されるのです。集まったテープは144本にも及びますが、その内「X」印を付けた一握りのテープは内容が重複しているので、技術者はデータを削除するとのことです。
司会者は知らなかった
「Lift Off with Ayshea」の司会者アイーシャが、RECORD COLLECTORに話したコメントにはこうあります。
グラナダの50周年があった2014年に、プロデューサーが私に話してくれるまで、テープ削除のことは知らなかったんです。彼は何年にも渡る私の人生とパフォーマンス、それにみんなのパフォーマンスも消し去ってしまったんです。酷いことです
RECORD COLLECTORはさらに、どこかにテープが存在していると思うかどうか? について訊いてみました。
私はそう願っています。私はソーシャル・メディアに参加し、その言葉を公表する必要があります。多くの人々が、いくつもの番組を録画しているはずなんです。デヴィッド・ボウイの演奏シーンを録ったテープは、きっとどこかに存在すると思っています
しかし彼女自身は、あまりの多忙さに自身の番組を録画したことはなかった、とも語っています。しょうがないことですが、こちらも残念ですね。
さて劣化したテープは、見事修復され、放送に至るのでしょうか? ファンだったら来月までといわず、より良い状態になるまで、いつまででも待ちますよ?
Source: YouTube, The Telegraph, BBC, WIRED, PSAP, RECORD COLLECTOR