白亜紀のサメ、懐ゲー『ギャラガ』の名を授かる

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岡本玄介
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白亜紀のサメ、懐ゲー『ギャラガ』の名を授かる
Image: Velizar Simeonovski, Field Museum

思いつきがそのまま名前になっちゃいました。

白亜紀に生きていたという淡水のサメに、懐かしのシューティングゲーム『ギャラガ』のファイターみたいな歯が生えていたのだそうです。注目すべきことに、このサメの化石はシカゴのフィールド自然史博物館に収蔵されている、世界最大にして完全体のT・レックス「スー」と同じ、サウスダコタ州のシャイアン川インディアン居留地にある山中で発見されたのです。

このサメの名は「ギャラガドン」。学名は「Galagadon nordquistae」となっています。彼らはおよそ6700万年前の白亜紀に、サウスダコタの川を泳いでいたわけです。

Journal of Paleontology誌に発表された新しい研究によると、体長は30~45cmとさほど大きくはありません。彼らは川底にいる小さな魚、タニシ、そしてザリガニなどを探して泳ぐサメとのこと。科学者たちは、このサメが現代のテンジクザメ目のオオセ科の先祖だろうと話しています。

20年間も目の前で眠っていた歯

今回の発見は、「スー」がいた堆積物の中にあった20本の小さな歯だけでした。「スー」の遺跡は、20年前にサウスダコタの地獄の入江「ヘル・クリーク」層で発見されました。賢明だったのが、そのとき出た2tもの「メトリックス」と呼ばれる泥の堆積物の残骸を捨てずに、シカゴのフィールド自然史博物館に保管され続けていたのです。最近になって科学者やボランティアのチームが、何か見つからないかな? とまた調査をした結果、これらの歯が見つかったのでした。

そして名前の元となったのは、この形。

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Image: Terry Gates/Gizmodo

歯は重要な情報源

なぜ歯だけが残っていたのか、それは軟骨などその他の骨は保存状態の都合で土に還ってしまったからだそうです。この研究の主執筆者でノースカロライナ州立大学の講師である古生物学者のテリー・ゲイツ氏と彼の同僚は、「ギャラガドン」の歯のサイズ、形、習慣を、絶滅種と現存種の同じ種類のサメのものと比較して推測しました。

米Gizmodoに対して、フィールド自然史博物館の古生物学者で、研究の共著者であるエリック・ゴルスカック氏はこう語ってくれました。

ありがたいことに、これらの歯は現存するテンジクザメとの密接な関係を示しているので、私たちは彼らの古代の生活様式について推論がしやすくなっています。

歯はサメの普段の食生活を知るヒントになります。こうした推測は通常難しいんです。特に非鳥類の恐竜のような絶滅した動物は、現存する動物の中に似ているものがほとんどないからです。

「ギャラガドン」の歯は直径 1mm未満なので、非常に見落とされやすい小ささとなっています。

名付け親は女性化学者

引退した化学者で、今回の調査にボランティアとして参加したカレン・ノードキストさん。彼女はこう話してくれました。

本当に小さいので、慎重に見ていなければ見逃す可能性があります。肉眼で見ると、それはちょっとした隆起のように見えます。よく見るためには、顕微鏡を持っている必要がありますよ

彼女はこれらの歯の形状が、古典シューティングの『ギャラガ』の自機(ファイター)に似ていることに衝撃を受けました。そして同僚たちがそのアイディアに賛同し、サメの名前を「ギャラガドン」にすることに決めたのでした。

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Image: Terry Gates, NC State University

デュアル・ファイターと敵機(ギャラクシーの蛾)がいっぱい。

元来は海のサメだった

この発見が示唆するように、「ギャラガドン」と「スー」は同時代の恐竜でした。しかし、その地域で白亜紀の淡水鮫を発見することは、当時のサウスダコタ州の環境についての従来の考え方に挑戦することになります。

「スー」は川が蒸発して出来た湖の近くに棲息し、そこで息絶えたと考えられていました。でも「ギャラガドン」がいた川は、海と繋がっていたことが示唆されます。海から上ってきた海水鮫が、川で淡水鮫へと進化していったのです。

それについて、ゲイツ氏がこう話します。

今の街を見ると奇妙に思えるかもしれませんが、約6700万年前、サウスダコタは森林、湿地、そして曲がりくねった川で覆われていたのです。「ギャラガドン」はT.レックスやトリケラトプスなど主流の肉食恐竜とは違い、小さな魚を捕まえたり、カタツムリやザリガニを粉砕するのに適した歯を持っていました

ゴルスカック氏も、「特に世界的に有名な「スー」のような非鳥類の恐竜と関連して、古代の生態系の多様性と潜在的な動力学を理解するのに役立つ」と語る、重要な発見となりました。

我々の論文で説明されている「ギャラガドン」は、現代のテンジクザメ、現在東南アジアとオーストラリア周辺に住んでいるサメのグループの進化の歴史を紐解くことに役立ち、その何千万年もの歴史についてもっと多くのことを知ることができるでしょう。

堆積物には、まだまだ目に見えない微生物などもいるかもしれませんし、地獄の入江にもまだ未知の古代生物が潜んでいるような気もしますね。次の発見は『パックマン』や『マッピー』などに因んだりするでしょうか?

Source: Journal of Paleontology
Reference: Wikipedia