のぞき見だけじゃない。ドローンの善行の数々

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  • author satomi
のぞき見だけじゃない。ドローンの善行の数々

ドローンというと殺戮マシンのイメージですけど、最近はいろいろ人間様のお役にも立っています。ドローンが少しだけ好きになる動きをまとめてチェック。

史上最大のドローン緊急出動となったキャンプ・ファイア

2018年11月、死者86名を出し、18,793棟が焼失した山火事、またの名を「キャンプ・ファイア」。北カリフォルニア緊急対策本部の計16チームは2日で518回ドローンを飛ばし、延べ17,000エーカー(約69平方km)をマッピング。「米国史上最大のドローン緊急出動」となりました。

消防ヘリと高度差わずか60m

燃え盛るパラダイスの現場に飛んでその様子を見守った世界最大のドローンメーカーDJIのRomeo Durscher公共安全対応部門ディレクター曰く、マルチローターによる作図としても人類史上最大とのこと。撮影では、高度約150mで飛ぶ消防ヘリの邪魔にならぬよう自社ドローン「Phantom 4」を高度約90mに保たなきゃならなくて、神経の磨り減る作業の連続だったといいます。

ネットは壊滅、データはハンドキャリー

あらゆる送電網が焼け落ちインターネットがほぼ接続不能となる中、データはすべて緊急隊員がSDカードでサンフランシスコまで運び、手作業でサーバーにアップロードしました。映像を最初に見たのは復興作業を進める自治体職員と、そして、焼け出された方々です…。

「焼け残った地域があるという希望的観測も最初は出回っていたんですけど、全容を知る人は誰ひとりとしていなかったんですね。だから映像を見て初めて、家が燃えてなくなったこと、車も全部焼けてしまったことを知ったというお話を住民のみなさまから聞かされました」(Durscherさん)

ほかの山火事の場合、オンラインで映像が公開になるのは何日も何週間も先ですが、ドローンのおかげで鎮火が終わる前の初期段階で自治体も住民も現実を見据えて、次に気持ちを切り替えることができたのでした。

人命救助もドローン

アメリカ航空局と共同でドローンによる緊急支援活動に乗り出す企業は年々増加傾向にあります。消防署・警察署でも応用は広まっており、NY市警にいたってはドローン特捜班まで抱えています。

そんな中、DIJは一歩踏み込んで、行方不明者の捜索にも最新鋭のMavec Enterpriseが使えるとPRしています。これはスポットライトとかメガホンなんかの周辺機器で実現するみたい。昨年9月には人力との捜索スピードを比べる調査に協力し、「人力よりスピーディー」と結果を発表したりもしています。まあ、人を探すのは殺戮ドローンも得意分野ですもんね。人命救助はベクトルが逆なだけで。

ジェット機検査もぶ~んで完了

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ぶ~んと飛んで、ジェット機に異常がないか見て回る「DJI Mavic Enterprise」
Adam Clark Estes (Gizmodo)

航空会社の目の敵というイメージの強いドローンですが、有効利用を検討中の航空会社もあります。たとえばアメリカン航空もそのひとつ。

昨年11月の寒~い日にダラスの格納庫で少数の記者団と見たデモでは、四翼のDJI Mavic Enterpriseがブ~ンと飛んで、ボーイング737の点検をものの数分でこなしてました。人力だと数時間かかる作業なのに。デモ用に胴体に変な印をつけておいたら、すかさず異常をキャッチしてパイロットにアラートを発信してましたよ? 実用化したら、着陸時の点検も格段にスピードアップしそうですよね。アメリカン航空事業部門VPのLorne Cassさんも、「プロの整備士は全員使いこなしたい未来のツールだ」と語り、滑走路の細かいデブリの検出などにも期待を寄せていました。

橋の点検もぶ~ん

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Intel「Falcon 8+」。ミネソタの美橋「ストーン・アーチ・ブリッジ」を診断中
Intel

ドローンといえば、プールの上で隠し撮りしていたり、頭の上でぶんぶん追ってくるしつこい監視マシンのイメージですけど、Intelはそんなドローンにも目をかけ、「おまえには検査という、まっとうな道があるではないか」と、ここ数年、検査ドローンの開発に注力しています。

先日も8翼のオプトコプターを飛ばしてシンシナティとミネアポリスの橋を検査して、成果を発表したばかり。搭載したカメラは、36MPのSony Alpha 7R。これで撮った何百枚もの写真をつなぎ合わせて、3Dモデルをつくるんですね。 これだけの画素数ならどんな些細な異変もキャッチできるし、また同じ順序で撮って違いを比べれば点検終了です。Intelドローン開発部門トップのAnil NanduriさんはGizmodoの取材でこのように語っています。

「今は道路を閉鎖してクレーンで作業しなきゃなりませんよね。でももうソフトウェアでできるところまできています。ドローンによる自動処理が進めば、同じ作業の繰り返しも可能になります」

アメリカは構造的欠陥のある橋が全体の9%を上回り、築50年を超えるおじいちゃんの橋がなんと40%近くにのぼります(全米土木学会調べ)。人力の手間と時間をカットできるうえ、目が届かないところにもぶ~んと飛ばせるドローンは、これからますます出番が増えそう!

ビルゲイツは農地探しにぶ~ん

「肥沃な土地の検出」だってドローンでいける。そう考えたのがビル・ゲイツ。

Microsoftの研究プロジェクトに「FarmBeats」というものがありまして、これは農地をむちゃくちゃデータ化しようというもの。温度・湿度・酸性度のセンサを土に埋めるのにむちゃくちゃお金がかかる(数平米に数万円)し、データ通信もめちゃくちゃお金がかかるのだけど(こちらはTVアンテナの周波数を使うと安上がりみたいですが)、害虫や生育状況をドローンで見張って、データを同社製ソフトで解析すれば農業はラクになる、機械学習が進めば農地のほんの一部に飛ばすだけで全体の状態が掴める、ということで研究を進めています。

この映像だけ見ると、猫の額ほどの畑なので、ほっかむりをして回るほうが早い気もしますが、この実験的な畑「Dancing Crow Farms」を任されているSean Stratmanさんに話を聞いたら…

「ドローンは人がやすやすと近寄れない新たな開墾地探しで威力を発揮する。道なき道を歩いて、結局は枯れた土地で、またやり直し、という長時間労働が文字通りゼロになる」

と教えてくれました。

190121drone_farm
DJIドローンで農地をぶ~ん
Microsoft

ほかにも

・区画別に最適な作物がわかる

・最適な収穫時期がわかる

というメリットもあるそうです。センサで拾ったデータ、カメラで捉えた映像、ヒートマップ。これを組み合わせれば土壌の把握、微妙な天気予報もお茶の子だし、土の中と天気がわかれば収穫量もどアップ、というわけですね~はい~。以下はもうひとりのMicrosoftのRanveer Chandra研究員からいただいたコメント。

「ドローンは人間ができないこともできます。補完性があると思ってます。作業量を減らすというよりは、新しい目ができるという感じですね」

それでも残る悪者イメージ

仕事を奪うんじゃない、補う存在なのだ、というのはわかりますけど、やっぱり仕事は減りますよね。軍部・警察・公安に悪用されたり、のぞき見マシンになったり、爆弾マシンになったり。その不安が減ることもないです。

現に遠隔操作でターゲットに突入する爆弾ドローンは中東、ウクライナの戦闘地帯から、最近は南米大陸に飛び火して、麻薬カルテルの間で「Papabomba(じゃがいも爆弾)」と恐れられています。

DJIは最近、ボディカメラとティザーガンの製造元Axonとタッグを組んで、警察への営業強化に乗り出しましたよね。その直後に発表になったのが、先述のNY市警のドローン特捜部隊で、11機すべてがDJI Mavic Proです。AxonはAxonで映像解析のスタートアップを立ち上げ、顔認証技術各社と協議中。ぜんぶ悪者退治のためだけど、一歩間違えれば…という不安はありますよね。

ドローンで空港閉鎖のガトウィック空港

昨年のクリスマスには「ドローンが滑走路付近を飛んでいる!」という通報殺到で36時間以上も英ガトウィック空港が閉鎖され1000便が欠航、14万人の足に影響が出る騒ぎがありました。なんで1000便も?って思っちゃいますけど、流れ弾や破片のこと考えると、そうそう簡単には撃ち落とせなかったようで…。逮捕された男女2人も容疑不成立で釈放され、特定厨と実名報道のマスコミを訴えそうな勢いだし…捜査当局は踏んだり蹴ったりとなりました。

アメリカではナンバープレート導入の動き

ああいう身元不明のドローンほど厄介なものはないので、米航空局(FAA)はさっそく免許導入に向けた新プログラムを発表。1機1機に仮想のナンバープレートを割り当てて取り締まるといって張り切ってます。導入後はうかつにストーカーとかできなくなるし、商用ドローン操縦者は特定業務の飛行許可も取得できるようになります。ゆくゆくは空中で交信や連携もできるようになるのかも。

キャンプファイア出火原因はドローンで防げたかも

ほかにもライブでドローン使ったり、ドローンはエンタメでも活躍中ですよね。しかしまあ、こうして見てくると、一番期待が持てそうなのはやっぱり検査かと。アメリカはインフラ老朽化大国なので、道路、送電網、パイプラインなどなど、点検ニーズは無尽蔵にあります。

何を隠そう冒頭で紹介したキャンプファイアも出火原因は高圧線でほぼ確定で、 火災発生時刻に懸垂がいし(電線を保持するための絶縁体)が外れたり、電柱が倒れたりして野火が起きていたことが、米電力PG&E職員多数の通報で判明しています。PG&Eが負う損害賠償は最低70億ドル(約7600億円)で、手元資金(約15億ドル)のざっと5倍。払えるわけもなく、PG&Eは14日破産法の適用を申告しました。

ドローンでもなんでも飛ばして点検さえこまめにしていれば、あんなことにはならずに済んだのに…悔やんでも悔やみきれませんよね...。

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