長年GPUをアップグレードしてなかったゲーマーにはバッチリなプロダクトなようですよ!
光の反射が相互に作用し合う様子をGPUでリアルタイムで再現するNvidiaのレイトレーシング技術。そのレイトレーシング技術搭載のGPUの中ではもっとも安価なプロダクトとして登場したGeForce RTX 2060 GPUを、米GizmodoのAlex Cranz記者がレビューしています。
CESでレポーターの一人がNvidiaのCEOであるJensen Huangに一つの質問をしました。それは、「『RTX 20シリーズのGPUは値段が高くなり過ぎて、レイトレーシング技術がそれほど必要のない顧客にまで無茶な売り込みをかけている』と感じているファンたちの不安に対して、Jensenが何か言いたいことはあるか?」というものでした。
Jensenはこれに対して平穏さと満足さが混じった笑顔を見せ、「2060」と発言しました。この2060が何を指しているかと言うとちょうど発表されたばかりのグラフィックスカード「GeForce RTX 2060」です。前世代のカードよりは高いものの、次世代グラフィックスへの入り口としてはもっとも良心的な価格設定となっています。
Nvidia GeForce RTX 2060

これは何?
Nvidiaのもっとも安いレイトレーシングGPU
値段
350ドル(約3万8000円)
好きなところ
値段を考えると、非常に速い。レイトレーシング対応。
好きじゃないところ
レイトレーシングに対応しているゲームはまだ数少なく、値段は前世代のグラフィックスカードより高い。
レイトレーシングが使えて350ドルは安い
Nvidiaのラインナップを眺めてみると2060は少し異色の存在になっています。Nvidiaのプロダクトは次のような数字の付け方をしています。80がベストなもの、70はかなり良質、60は低予算なゲーマー向け、50は統合GPUの一つ上のレベル程度の低予算カード、という具合です。60カードの最新のプロダクトはGTX1060でした。こちらは6GBが250ドル、3GBが200ドルという価格設定でしたが、今回の新しい60カードであるRTX 2060は350ドルからの発売となっています。この文脈では、非常に高価に思われます。
しかし1060とは違って2060はレイトレーシングを行なえるもっとも安いグラフィックスカードとなっているんです。この一つ上が2070で、値段は600ドルとなります。これと比較すると2060は安いと言えます。2060と競争することになるプロダクトは1060ではなく、1070と1070Tiだ、とNvidiaが主張していることを考えると2060のこの値段が破格であることがわかります。1070と1070 Tiの小売価格はそれぞれ380ドルと450ドルとなっています。しかし今ではこの価格で手に入れるのも難しくなっています。2060のもう一つの競合プロダクトとしてはAMDによるVega 56があります。こちらは約2年前にリリースされたもので小売価格は400ドルとなっていました。現在ではもう少し低い価格で見つけることができます。
比較対象はAMD Vega 56、1080、2080、2080 Ti
残念なことに、我々は1070と1070 Tiをテストする機会はなく、比較対象としてはVega 56が残ります。また1080、2080、2080 Tiのパフォーマンス性能は知られているので、そちらとの比較も示しておきたいと思います。1080は700ドルから800ドル、2080は700ドル(しかし品不足から市場価格は800ドルに近いところになっています)、そして2080 Tiは1200ドルの小売価格となっています。2080 Tiも同様に品不足から値段の高騰が見られ、Amazonでは1500ドルでの販売も確認できます。
メモリはAMD優位、高価な製品には性能で圧倒されがち



これらの競合プロダクトの中でもっとも安いのが2060となるわけですが、メモリが一番小さいのも2060であることは特筆しておくべきでしょう。2060は6GBのGDDR6メモリを搭載し、2080は8GB、そして2080 Tiは11GBとなっています。もっとも古いプロダクトとなる1080はGDDR5Xメモリで8GB搭載となっています。AMD Vega 56はHBM2メモリで8GBとなっており、これはGDDR5X、そしてGDDR6よりも速い傾向にあります。
このメモリーの速さという点での優位から、多くのベンチマーク数値においてVega 56は2060を上回っている一方で、クロック周波数で勝る2060が勝ることもある、という状況です。









Vega 56と2060の2つに関して言うと、お互いに10fps程度の性能の違いに収まっていたのに対して、1080、2080、2080 Tiはこの2つを圧倒するというものでした。2倍以上の値段がするカードを比較すれば、このような結果になるのは当然と言えるでしょう。1070と1070 Tiに関しては今すぐに手元にはなくテストはできないものの、Anandtechが同様の設定でテストを行なっており、『Far Cry 5』といったゲームにおけるパフォーマンスは2060と同レベルであったと判明しています。
3Dレンダリング性能が優秀
また、Blenderで3DオブジェクトのレンダリングにそれぞれのGPUがどれくらいの時間を要するかをテストします。Blenderのようなプログラムのサポートを強化するソフトウェア・アップデートが最近行なわれたこともあり、2060はVega 56に勝っただけでなく、アップデート前の2080 Tiをも上回りました(アップデート前の2080 Tiは数ヶ月前にテストしたものです)。

しかし2080 Tiにソフトウェア・アップデートを行なった後に再度テストしたところ、2060の結果を超えるものになりました。これを受けてよく分かったのはメモリのような物理的なものと同様にソフトウェアも同じくらい重要だということです。ソフトウェアのサポートはグラフィックス・カードの良さを大きく決定してしまうというわけです。AMDとNvidiaをスピードテストで比べた場合、純粋なスピードではNvidiaが勝つことが多いです。これはNvidiaがGPU市場シェア70%を占めており、ほとんどのゲーム会社がAMDではなくNvidiaを使って最適化をしているからです。

(ちなみに、そんな現状を変えるためにAMDも継続して努力しています。CESの基調講演において、AMDのCEOであるLisa Suはソフトウェア投資を優先事項として据えていると強調しました。おそらく新しく発表されたRadeon VIIにおいてその投資の成果が確認できることでしょう。しかし今のところは、Nvidiaのソフトウェアも継続して改善されており、ゲームだけでなく通常のワークタスクにおいてもGPUパフォーマンスを向上し続けています)
2060は「古いGPUからのいい乗り換え先」
そして2060の売り文句でもあるレイトレーシング技術です。これは1000番台のどのプロダクトも持っていない性能です。グラフィックスにおけるよりリアルな影や反射を、光を光源からその終着点までトレーシングすることで実現するというものです。幅広いジャンルのゲームがこの技術に対応するだろうとNvidiaは繰り返し述べています。
しかし問題は現時点ではほとんどのゲームがレイトレーシング技術に対応していないという点です。『Battlefield V』は非常に美しいゲームですが、レイトレーシングはその一要素に過ぎません。それだけのためにアップグレードする、というほどではありません。そのため今すでに1070もしくは1070 Ti、AMD Vega 56、もしくはそれよりも良いものを持っているのであれば、アップグレードする必要はないでしょう。
しかし古いGPUを長い間使っていて、1440pもしくはそれよりも低い解像度で満足できるGPUにアップグレードしたいと思っているのであれば、2060の350ドルという値段は非常に優れています。1070や1070 Tiよりも安く、AMD Vega 56との値段の差もそれほどありません。さらにレイトレーシング技術にも対応している点では今後さらにその恩恵が広がるでしょう。