従来は数週間かかっていた作業でした。
ふたつのメソッドを掛け合わせることで、ハエの脳の画像化が数日でできるようになったことが最新の研究で明らかにされました。サイエンス誌によると、脳には800億以上もの神経細胞があり、それぞれに約7,000個のシナプス結合があります。
2つの顕微鏡を組み合わせ、小さなハエの脳を細部まで撮影
ハエの脳はきわめて小さく、研究は信じられないほどの挑戦だったといいます。物理学者でノーベル賞受賞者でもあるハワード・ヒューズ医学研究所ジャネリア・リサーチキャンパスのEric Betzig氏は「単一の細胞状況でなく多細胞状況で高解像度に示す、生体組織を理解するための新たな技法」であると、米Gizmodoの取材に答えています。ハエの脳を画像化するために、研究者らは「膨張顕微鏡法」と「格子光シート顕微鏡法」とよばれる2種類の顕微鏡法を用いました。
サンプルを物理的に拡大

膨張顕微鏡法では、最初に注目すべき特徴を蛍光タンパク質でマークし、高分子ゲルと結合させます。酵素が生物組織を消化し、水を加えることでポリマーを拡大し、蛍光タンパク質でマークした部分が拡大前の形状を維持します。今回のケースでサンプルの大きさは4倍になっています。
撮影にかかる時間を短縮
ところが、この方法だけで拡大したハエの脳を画像化するには約20兆ボクセル/3Dピクセルが必要になり、電子顕微鏡では数週間かかることになります。そこで研究者らは膨張顕微鏡法に加えて格子光シート顕微鏡法を使うことに。レーザー光の薄いシートを使ってサンプルを画像化することで、プロセスにかかる時間を短縮し、バックグラウンドノイズを削減することに成功したといいます。
米Gizmodoの取材によれば、Betzig氏自身も当初はこのメソッドがうまくいくか読めず、結果をみたときには数十ナノメートルという単位での観察結果に衝撃を受けたといいます。
人間の脳への応用はまだ難しい
ところが、同じやり方で人間の脳を画像化できるかというと、現時点では不可能であるとのこと。研究では、ネズミの脳の一部画像化(記事トップ画像)に関しては成功したといいますが、それでもハエの脳とネズミの脳では雲泥の差があるのだといいます。
今後は、より短時間で複数のハエの脳を高解像度で画像化できる日も近いと考えられています。脳の特徴は個々によって異なることからも、多くのサンプルと比較することで脳の機能に関する理解がより深まることが期待されます。