「自動化推進」で仕事が消える日。同僚がリストラされた理由はボクが作ったプログラムだった

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  • author Brian Merchant : Gizmodo US
  • [原文]
  • Kaori Myatt
「自動化推進」で仕事が消える日。同僚がリストラされた理由はボクが作ったプログラムだった

AIやオートメーションで仕事が消える。

自動運転、音声応答、チャットボット、機械翻訳、人間がやっている仕事が機械に奪われてしまう世界がすぐそこまで迫っています。タクシーや宅配の運転手、コールセンターのオペレータ、ホテルの受付、ネイリストすらAIに取って代わられようとしている今、一体わたしたちはこれからどうしたらよいのでしょうか。

米ギズモードでは、『Introducing Automation』と題し、オートメーションが近未来に与える影響についての特集を組んでいます。AI化を進めた結果、自分が手がけたプログラムで同僚が職を奪われたら? 特集の中から、その心理に迫ったBrian Merchantのルポルタージュをここに全文翻訳します。コンテンツ制作のためのAIライターすら登場している時代です。

数十年後には、こんな記事も機械翻訳が翻訳するんでしょうか。


自動化を進めたら同僚がリストラされた

3次元モデルを作る会社に就職して初勤務の日に、グリフィス(仮名)は仕事場の設備がずいぶん老朽化していることに気づいた。とうぜん、仕事に使う機器なら古いより新しいほうがいい。グリフィスは工程の一部を自動化できる新しい設備を導入してはどうかと上司に提案した。するとその提案はすぐに承認され、仕事場にはやがて最新の機器が投入されていった...。そしてその2年後、20人の同僚がリストラされ職を去っていくことに。中にはずいぶん仲良くしていた人たちも含まれていた。

「馬が合った人たちが去っていくのを見るのは寂しかった」とグリフィス。自分が自動化を進めたせいでリストラにつながったと思うと、同僚の顔を思い浮かべるのも心苦しかった。自動化が進むにつれ、人員が削減されるかもしれないことには、うすうす気づいていた。「でもリストラを止める力は自分にはなかった」と苦い顔をする。

自動化とは、感情のない淡々としたプロセスである。しかし、それを始めるのも進めるのも感情ある人間だ。タスクの自動化や生産ラインの機械化プロセスは、人間が開始しなくてはならない。すると、自動化プログラムを作ったり、手に入れたりすることにより、仕事を失う者がでる。自動化を進めるのは経営者でも上層部でも中間管理層でもなく、多くの場合は平社員か開発者や技術者、ときにはインターンのことすらある。

多くの会社がそうであるように、必ずしも上からの命令で自動化が進むとは限らない。効率化を進めていたら、それが次第に自動化に展開することもあるし、まさかリストラにつながるとは夢にも思わない社員自身の手によってアイディアが高じてパイロットプログラムが立ち上がることもある。時には経営陣に指示されて平社員が行うこともある。いずれにしても、リストラにより良心の呵責にさいなまれたり、葛藤を抱いたり、リストラにつながった自動化に「加担」したことを悔やんだり、怒りの感情を持つことすらあるのだ。

同僚の仕事を奪った自動化を進めたプログラマ、技術者、エンジニアたちをインタビューしてきた。その中には、自動化を進めていくうちにリストラしなくてはならない事実に気づいたために、仕事をやめてしまった者すらいた。混乱の中にある近代的な自動化の最前線の中で、わたしはこれまで、その状況のスナップショットを撮ろうと務めてきた。これまでも、AIによってさまざまな仕事がなくなっていくことが予想されてきたし、自動化によって生活の糧をなくした人たちへの影響も確認されている。 しかし、会社や工場で実際に自動化がどう進められてきたのか、クローズアップしてきた者はあまりいなかった

そこで、わたしは現代の職場における自動化政策について検証しようと思った。またこの効率化という現象が中小企業でどう展開されてきたか、また企業という枠を超えてどう影響を与えてきたかを推し量ろうとしてきた。自動化が人々にもたらす影響を精査したいと思ったのだ。自動化に「加担」した人の中には、後悔の念や良心の呵責を長年抱え続ける者もいるのだ。中にはたいしたことのない仕事を自動化しているだけ、という人もいる。管理職から頼まれたことをやっただけ、という人も。

それでは。職場ではどのように自動化が行われているのであろうか? どんな人が損をして、どんな人が責任を負うのか。罪悪感を持つ人は、多くが自分の手により自動化を進めた人たちである。大企業の平社員であったり、革新的なアイディアを持った社員たちである。こういった人たちが同僚が首を切られるのを目の当たりにする。しかも、会社にとって結局それほど収益性がなかったり、物質的なメリットがなかったりもするのだから始末が悪い。

ひと夏のバイトでこの道30年の職人がお払い箱

アーウィンは機械工学学科の大学2年生だった夏に、南カリフォルニアのテック企業でインターンシップを体験した。3Dプリントに非常に興味があったため、3Dプリントの技術を用いて模型作成のプロセスを合理化してほしいと依頼される。当時そのプロセスを担当していたギャリーという社員と一緒に作業にあたった。作業を進めるにつれ、ふたりは、もしこのプロジェクトがうまくいったら、ギャリーが職を追われることになることに気が付いた。

「最初にこれに気づいたとき、心臓の鼓動が早まるのを感じました。今でもはっきりと覚えています」とアーウィン。メールでのインタビューの回答だ。「神経が張り詰め、罪悪感を感じました。実は、最初にこのプロジェクトに着手したとき、どんな結果をもたらすのか、まったく気づいていなかったのです」アーウィンはこの経験について、現在ではアソシエートエディターを務めるMIT Technology Reviewに書いている。「ギャリーはプロセスと自分の役割について説明してくれました。そしてわたしは愕然としたのです。模型を作るという作業は、ギャリーの仕事そのものだったのです。30年以上のキャリアをとおして、彼はツールやパーツの模型を作ることだけに情熱を傾けてきたのです」それは彼のライフワークだったと言ってもよい。

最初ギャリーはフレンドリーでした。でもわたしのやっている作業がどういう意味を持つのか理解しだしたら、だんだん無口になっていきました。製品の開発が進むにつれ、わたしも彼と話すときにはナーバスになっていきました」アーウィンは言う。「プロジェクトの開発について伝えることは、彼にもうすぐ仕事がなくなることを伝えているも同じだったからです」 幸いなことに、プロジェクトの開発は進んだが、会社はギャリーに新しいプリンタの管理を任せた。しかし、30年も勤め上げたキャリアをそう簡単に捨てることは難しかったようで、この異動を侮辱と捉えてしまった。「ギャリーはこの新しい役割に不満そうでした。夏が終わってもわたしの罪悪感は消えることはありませんでした」

アーウィンがインターンを辞めてから、この会社はシステムを採用し、ギャリーは配置転換させられている。ギャリーの話によれば、会社はギャリーをはじめ同じプロセスに関与していた人たちに強硬な態度でつめよったとのこと。そのため結果的にギャリーは退職を決意する。現在ギャリーは他の州でカスタマーサービスというまったく別の職種に鞍替えしてしまった。アーウィンは今でもこの葛藤に悩まされている。そしてギャリーの仕事を奪ってしまったことについて、自分を責め続けているのだ。

ここでわたしはアーウィンをインターンとして雇用した会社に疑問を呈する。企業名はここでは明らかにしないが、人が職を奪われるような重要なプロジェクトに若いインターンを配置するとはなにごとか。アーウィンが技術的に未熟だからではない。若い女性のひと夏のバイトとしては、いささか荷が重すぎるのではあるまいか。

リストラを手伝うくらいなら自分が辞める

マニーは機械工学を専攻した新卒エンジニア。入社した会社でCADでの作業を自動化するよう依頼される。その自動化がうまくいけば、仲良くしている同僚の仕事がなくなることは明白だった。この依頼は彼には受け入れることができなかった。

「この自動化により誰かが職を失うことは明白でした」マニーはRedditのメッセージでインタビューに答えてくれた。マニーはアメリカに移住した第一世の移民だ。仕事に満足しなければ別の仕事を探さなくてはならない。

思った通り、マニーはこのプロジェクトを引き受けなかった。仕事自体も辞めてしまった。「そんな気分で続けられないから、プロジェクトは辞めてしまいました。でもわたしがやらなくても、きっと誰かが喜んでこの仕事を引き受けたことでしょう」

自動化の脅威。自動化は効率化を図ることを目的とするのではなく、経営者が従業員を管理するために行われるのではないだろうか。「解雇される恐れから、多くの同僚はしっかりと仕事をしていました。仕事量に対し賃金は安めでしたが、みんな激務をこなしていました」

ロボットによって技術職が失われてしまうという心理的プレッシャーは、今急激に不安を引き起こしている。自動化はすぐそこまで迫ってきており、効率化が可能ならば会社はどんどん進めるだろう。

いろんな大義名分の下に。

21世紀に入ってから、約500万の雇用が失われている。多くは自動化によって奪われた形だ。これは工場の閉鎖や数千人規模の失業につながっている。しかし、AIの台頭によって多くの職がこれからも侵食されていく可能性がある。または前述のようになんらかの形で影響を受ける可能性がある。

アメリカにおいて47パーセントの仕事がAIの影響を受けるといわれている。最近の記事によれば世界規模で8億人の雇用が失われると試算されている。企業で自動化がどう進むのか、社員はそれにどう反応しているのか、それを理解することは急務であろう。どう自動化を緩和させるか、またより公平な結果を得るためにどう身構えたらよいのか。

自動化エンジニアたちの考えもいろいろ

アメリカでは自動化エンジニアという職種が急浮上している。IT分野で今もっともアツい職業とされている。悪くないかもしれない職種だ。

エンジニアやプログラマたちは、同僚のやっている仕事を自動化しろと依頼されたら、または所属する会社が自動化すべきと気づいたら、まずフォーラムなどのコミュニティに集う。Redditでは同僚の仕事を奪う自動化についての倫理的な質問は珍しくない。マニーもまた自分の苦境をRedditに投稿している。

コメントはほとんどが同情的であり、なかには激励をとばすものもあった。マニーがやらなくてもきっと他の誰かがしていただろうし、エンジニアとは最大の効率を追求するものだから、これは仕方のないことなのだ。また別の投稿には「プログラミングを勉強しはじめたんだけど、自動化できるプログラムができそうだ。昇進やボーナスを要求すべきか」といった投稿も見られる。

自動化を進めようと思わずして、たまたま自動化につながったというケースすらある。「人生最悪の日、自分のプログラムで6人が解雇されたことを知った時」と題した投稿では、図書館で夏休みにバイトした若いプログラマの話が考えさせられる。

夏のバイトで自分に与えられたコンピュータのメンテナンス作業を効率化させようと、コンピュータを自動でアップデートしたりメンテナンスしたりするプログラムを自作したところ、結果として6人の職が失われてしまったというお話だ。

考えさせられるのは、効率化に貢献したから自分が正社員になれると思ったのに、そうではなく、会社はプログラムだけIT部署が拝借してさらに改良し、システム全体に広げて導入した点だ。また定年退職を間近に控えた女性の行なっているマニュアルタスクについて、自動化はできるけど、会社に彼女の首切りさせるくらいなら、そのまま定年まで会社には何も言わないでおくよ、という思いやりにあふれた投稿もあった。

ソフトウェアエンジニア、ヘルプデスク、ドローン技術者、たくさんの人にインタビューしてきたが、みんな似たような状況にある。ある会社では、手作業で砂糖の原料となる「てん菜(サトウダイコン)」を検査する作業を行なっていた。作業は神経を使うもので、検査針はよく故障する。

「2つの超音波トランスデューサーを使用して正確な刺し込み位置を取得し、検査針を刺し込む中心部の計算を行い、念のため監視のためのカメラも追加しました。検査中は針が静止するよう静止ボタンもつけました。簡単に言えばこれだけです」オートメーションエンジニアのボブが教えてくれた。「うまく動作しているし、今のところ一回も不具合の報告はないね」

でも、これにより多くの季節労働者が職を失っている。ただし、検査針を差し込む作業は所詮はパートの仕事だったし、作業場は寒いから、これを好きでやっている人は誰ひとりとしていなかった。「この作業がなくなったことについては、まったく心を痛めるということないね。だいいち他にもやることはあるし、それらのタスクすべてを自動化するにはまだまだ時間がかかるから」とボブ。「僕は言われたことをやっているだけなんだけど、仕事についてはわりと決定権を持っているんだ。上司はプロセスからヒューマンファクターを取り除くと喜んでくれる。管理は徹底できるし、信頼性はずっと高いし、長期的にはコストも削減できる。すべてはコストの削減につながり、僕の給料にも影響するってわけ」

ボブの上司もマニーのケースと同じだ。「社員を自分から辞めさせるように仕向けるテクニックというものもあるんだよ。ここの管理職もそのテクニックを使って人を辞めさせているしね。もちろん、それは卑怯だと思う。汚いやり方だ。でもコストの削減につながるんですから、仕方ないですよね」

自動化を進めるならその後のことも考えよう

これらのストーリーには共通点がある。まずほとんどの職場ではオートメーションの準備ができていないこと。世の中は大企業の宣伝についつい騙されつつあるのだが、自動化はテック企業が言うほどスムーズなプロセスではない。次に、最大の効率化を求めてはいない会社であっても自動化を強いられているということ。上司が社員の影に隠れるようにして、平社員が実行ボタンを押すのを眺めるだけで、インターンにこれから首を切られるかもしれない人と机をならべて仕事をさせるなんて、ひどいと言わざるをえない。

自動化は、側から見守るだけの経営者以外の者にとっては雑然として非常に大変で、ときには苦痛すら伴うプロセスなわけである。仕事を失うというのはもちろん最悪のシナリオとはいえ、自動化に携わる人たちが同僚の失業を憂いて葛藤に悩む状況がこのプロセスを阻んでいるという事実を、まさにわたしたちは今目撃しているのである。自動化に投資が集中し、企業の収益が増えるのに比例してまともな仕事がどんどんなくなっているのだ。

このインタビューでわかったことは、大企業だけでなく中小企業であっても、強い意志を持たず、惰性で自動化を進めている場合が多いということ。

冒頭のグリフィスのケースでは、それまで社員はまず二次元で画像を作成してから、カスタムソフトウェアを使って三次元画像に変換していた。ひとつの結果を出すためには多くの時間を費やさなくてはならなかった。それまで使っていた機械は大きすぎる割にプロセスも遅かった。新卒社員として入ったばかりの単なるアシスタントだったグリフィスは、自動化と高速化を思いつきデベロッパに進言した。そして新しい設備にソフトウェアをインストールし、プロセスの自動化の一部を担うアプリケーションを管理した。

最初は誰もが新しい機械や効率的な作業ににわくわくしただろう。残務処理もあったかもしれない。「経営陣は余った人材を有効に活用しようとは思っていたようです」とグリフィス。「でも新しい仕事や役割を作り出すだけの創造性がなかった。正社員はやがてパートとなり、歩合制となったあとに、結局解雇されました」 グリフィスが自動化プログラムを導入してから5年。今でも人々が解雇されたときのショックは深く胸に突き刺さっているという。

「ひとつの仕事がなくなるということは必ずしも新しく雇用が増えることにはつながりません。労働力にとって自動化がどんな意味を持つのか、僕にはまだよくわからないでいます」とグリフィス。「一つだけ言えるのは、新しいテクノロジーが登場したなら、わたしたちはできる限りそれに順応していかなくてはならないということです」

自動化を進めた者と、進めたことにより仕事を失くした者、両方にとってこれは少しのなぐさめにもならない。

「これから5年経ったとしても、この気持ちがなくなることはないでしょう」

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