NASAが紛失した月面サンプル用カバンを180万ドルで販売した女性、「NASAが破損させたから値段が下がった」と訴える

  • 30,559

  • author George Dvorsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • 塚本 紺
NASAが紛失した月面サンプル用カバンを180万ドルで販売した女性、「NASAが破損させたから値段が下がった」と訴える
Image: Sotheby’s
問題となっているバッグ。

NASAから盗まれたものを売って更にNASAを訴えるとは。

2017年、イリノイ州に住むNancy Lee Carlsonさんはアポロ11号ミッションで実際に使われたサンプル収納用バッグをオークションで売りました。そのときの売値は180万ドル(約1億9700万円)。そしてなんと、彼女はこのバッグを995ドル(約11万円)で手に入れたので、ビックリしてしまう利益なわけです。

ただ彼女は、このカバンを400万ドル(約4億3800万円)で売れると見込んでいました。それがなぜ180万ドルになってしまったか。彼女はNASAがカバンにダメージを加えてしまったからだと主張しています。そして、なんとNASAを訴えているのです。

ニール・アームストロングが使ったカバン

CollectSPACEの記者、Robert Pearlmanさんのレポートによると、CarlsonさんがNASAを訴えたのはなんとこれで2回目になります。1回目はCarlsonさんがカバンを自分のものとして取得する際の訴訟でした。

このカバンは、ニール・アームストロングによってアポロ11号ミッションで採取された月面の岩を収納していたもので、歴史的にも重要なもの。

貴重なカバンが一般人に渡った理由

このような歴史的な記念品がどうして一般人の手に渡ることになったのか、一度NASAが取り返したあとにまたCarlsonさんの物になったのか。CollectSPACEの記者、Pearlmanさんがその経緯を説明しています。

Carlson氏はもともと11.5インチの長さ(29センチ)の「月面サンプル帰還バッグ」を2015年2月に購入しました。これはテキサス州の連邦保安官局によるオークションでのことです。バッグは宇宙関連の物品の窃盗容疑で起訴されている美術館キュレーターによって入手されたものであり、保安官局によるとアポロミッションにおいて使われたという情報しか得られなかったCarlson氏はヒューストンのJohnson Space CenterのZiegler氏の協力の下、バッグの出自を確かめようとしました。

そこでバッグの中の残留物を検査したのですが、このプロセスでバッグの繊維が破れてしまった可能性があるとのこと。そしてこの結果Ziegler氏はこの残留している砂が、アポロ11号による最初の月面着陸ミッションの着地地点であるTranquility Baseのものであると結論付けたのです。ジップ付きのこのバッグは後に、ニール・アームストロングが1969年に月面を歩いた時に採取された最初の偶発的月面サンプルの汚染を防ぐために使われたものだと特定されます。

Carlson氏は繰り返し、バッグの返却を求めましたが、NASAの所有物からリリースされた記録がないため、NASAの公式判断としてZieger氏はそれを拒否しました。

NASAがバッグを傷めたから訴訟

NASAがカバンの返却を拒否したことで、CarlsonさんはNASAを相手にテキサスとカンザスでそれぞれ1つずつ訴訟を起こしました。2016年2月に、カンザスの裁判官によって連邦政府は誤ってオークションでバッグを売ったこと、そしてCarlsonさんが「誠実な買い手」であり、バッグの所有の権利を得ていると判断しました。そして2017年の7月20日にサザビーのオークションでバッグは販売され、Carlsonさんは181万2500ドルを手にすることになります。しかしサザビーが予想していた値段は200万から400万ドルでした。

1月18日にアメリカ政府、NASA、NASAアポロ11号キュレーターのRyan Zieglerさんに対する訴訟として提出された書類、そしてCollectSPACEの報道によると、Carlsonさんによる今回の新しい訴訟の主張は、NASAがバッグを没収している間、バッグにダメージを加えたために品物の公平な市場価格を損ねた、というものです。この騒動によって彼女の「自尊心が傷つけられ、精神的なストレスや不安」を招いたとも主張しており、失われた利益分の補償と訴訟費用に加えて彼女の精神的な苦痛に対する公平な補償も求めています。

もうひとつの衝撃的な補償

それだけではなく、訴訟ではバッグの繊維の中に絡まっていたとされる月面の物質の返還も求めています。それが不可能であればバッグから取り除かれたサンプルの価格を補償することを求めていることが訴訟書類からわかります。これはなんとも、さまざまな点で話題を呼ぶイベントとなっています。このような歴史的に意義のある品物が誤って一般人の手元に渡ったことだけでも驚きですが、2回目の訴訟ではCarlsonさんがNASAにもともとNASAの物であったバッグの損害賠償を求めている、というのは驚異的です。

またもともと彼女に渡るべきではなかった、本来であれば公共の財産として保管されるべき歴史的な遺物を使ってCarlsonさんが200万ドルも手に入れたことを考えると、ここからさらにお金を得ようとしている彼女の行動は強い不快感を呼ぶものです。

月面の物質は誰のものか

このケースの判断をする裁判官はなかなか大変な業務を任されたことになりそうです。とくにバッグの繊維に”絡まっていた”とされる月面からの物質を誰が所有しているのか、という問題の結論を出すのは非常に難しいでしょう。Neil Armstrongから受け取ったとされる月面の砂の入った小瓶の所有権を主張している女性の訴訟が現在起きていますが、それとも類似しています。NASAは当然、月面サンプルを手渡すということはしたくないでしょうが、今回の件からも分かるようにサンプルをちゃんと管理できているとも限らないわけです。

Source: CollectSPACE

    あわせて読みたい

    powered by