火星ローバーがスマホアプリの技術を応用?重力センサーを実現

  • author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岡本玄介
火星ローバーがスマホアプリの技術を応用?重力センサーを実現
Image: NASA/JPL-Caltech

まるで火星の『冒険野郎マクガイバー』。

ビックリするようなパノラマ写真を送ってきたり、キラキラした岩を見つけたりと、火星の各地から報告を続けている探査機ローバーの「Curiosity(キュリオシティ)」先輩。今度は驚きの方法で、火星の山の姿を調査しました。

使用するのはナビゲーション機器なのですが、中身はスマートフォンに内蔵された加速度計のようなもの。これで火星の神秘的な地質について、重要な測定を行なうのです。

クレーターの中にある山

キュリオシティは現在、ゲイル・クレーターにある、マウント・シャープと呼ばれる標高5kmの山の周辺を走っています。しかしこの山が、一度埋まったクレーターが侵食で削られて出来たものなのか? それとも山が巨大な砂丘による堆積物で作られたものなのか? がわからずにいました。

キュリオシティは、山の性質を決定付けるための科学的な道具を持っていません。しかし代わりに力を測定するナビを持っているので、科学者たちは創意工夫でそれを利用したのです。

測定方法

ジョンズ・ホプキンス大学の助教授で、研究の主執筆者ケヴィン・ルイス氏が米ギズモードにこう話してくれました。

私はスマートフォンアプリで、重力を計測できるアプリがあることに気づきました。スマートフォンには加速度計があるので、制度は低いもののそれを使って計測することができるのです。

なるほど。あたかもキュリオシティをスマホのように見立て、アプリをダウンロードさせて、加速度計を使うってことなんですね。

重量測定、または局所的な重力場の変化を正確に測定することは、地表の下にある岩石について理解するのに役立ちます。物体の重力はその質量と共に増加するためです。

たとえば、アポロ17号は月の研究で重量測定実験をしました。ですがキュリオシティには重力計がなく、速度と加速度と方向の変化を測定するための、ジャイロスコープ加速度計を含むナビが装備されているのみ。

ナビは重力計ほど敏感ではありませんが、科学者たちは探査車が計測した加速度データを取得し、キュリオシティの位置情報や温度、そして機材の高さなどの潜在的な要因を加味してデータを解析しました。

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Image: NASA/JPL-Caltech

その結果は

彼らの分析結果は驚きでした。キュリオシティの下にある岩石の平均密度は、予想よりも低かったのです。これはつまり岩石が多孔質であることを意味し、予想よりも穴だらけだという意味なのです。オマケに探査車の下にある堆積物は、思ったほど深く積もっていないことも判明したのでした。

Scienceいわく、これらの情報が指し示すのは、マウント・シャープは侵食で削られたものではないってこと。すでに形成されたクレーターに、堆積物が吹き込むことによって形成されたってことを示唆しているのでした。

ライス大学の火星地質学者で助教授を務める、クリステン・シーバック女史が、米Gizmodoにこう話してくれました。

私の第一印象は、探査車に搭載された専用の調査機器ではない機材で解析をやってのけることが、とても賢いアイデアだということです

そして彼女は、岩石の多孔度が驚くほど高いと指摘しました。そしてこのゲイル・クレーターでの調査が、以前の調査結果を裏付けるものとなった反面、矛盾する結果もあると話しています。

これにより、多孔度が低い岩石が火星上でどのように振る舞うのかについて、我々は理解を深めなければならなくなりました

このような測定には、どちらのデータを利用するのかという潜在的なバイアスや、元々ソレ専用に設計されていない機器を使った測定の不確かさといった、先天的な限定要素が付きまといます。

しかしこれは科学であり、この論文はクレーターの内部で実際に何が起こっているのかを知るための新しい情報を明らかにしています。そしてほかの実験や、シミュレーション、それにデータとも一緒に考慮されるべきです。

今後の調査で裏付けを確かなものにする

加えて今後は、もっと様々な実験により多くの証拠が集まってくるでしょう。探査機「InSight」は火星の地質や熱の流れなどを調査し、着陸の場所が発表された「Mars 2020」は、地下情報を集めるために地面を貫通するレーダーで、ジェゼロ・クレーターなどを調査します。

ナビゲーションを別の用途に利用する科学的調査は、実は初めてのことではありませんが、今回のはかなり賢いやり方だったようです。

ルイス氏は次のように述べています。

この調査で好きなことのひとつは、この種の科学が私に向いているということなんです。既存のデータを使って新たな用途をマクガイバーし、新たな科学機器を生み出すことなのです

マクガイバーとは、ピンチに陥ると手近にある材料で、その場を切り抜ける道具をこしらえてしまうドラマ『冒険野郎マクガイバー』のこと。相当な知識と経験がないとマイクガイバーになるのは難しいのですが、世界中のキッズが憧れたヒーローなのです。

Source: physics buzz blog, Science

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