THE GUILD 安藤剛さんに聞く、カメラの楽しみ方:「Leicaを使うとしたら今なのではないか」

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  • author かみやまたくみ
THE GUILD 安藤剛さんに聞く、カメラの楽しみ方:「Leicaを使うとしたら今なのではないか」
Photo: 吉竹遼

冷静と情熱のあいだで楽しんでいる感じ。

現場とテクノロジーを知り尽くしたUX/UIデザイナーやエンジニアが集うクリエイティブ集団「THE GUILD」。参加メンバーの多くはWeb上で活発に活動しており、日々その斬新な視点を共有し続けています。

そんなTHE GUILDにはカメラ好きが多いらしいのです。そこで今回はメンバーのひとりで、SNSに数多くの写真や動画をアップしている安藤剛さんにどんな風にカメラを楽しんでいるのか、これからどんなカメラが欲しいのかなどを語っていただきました。

安藤剛(Go Ando)

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Photo: 吉竹遼

THE GUILD Co-Founder / UI/UX Designer

大手SIerにて大規模システムの提案・構築、海外事業開発等を歴任後、検索エンジンベンチャーの設立に参画。2012年よりMobile and Designとしてモバイルアプリを中心に企画・製作・コンサルティング・映像制作等の領域で活動中。代表作にApp Store総合1位を獲得した「Staccal」等がある。実はかなりのカメラ好き、TwitterInstagramでよく撮影した写真や動画をシェアしている。

車上荒らしで旅行写真のフィルムを失い、写真に興味をもつ

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Photo: 吉竹遼

── 安藤さんがカメラに興味をもったきっかけを教えてください。

安藤:大学の卒業旅行で1カ月半ほどアメリカ横断旅行に行ったんですが、そのときに車上荒らしにあって写真のフィルムがなくなってしまったことがあります。カメラに興味をもったのはそれがきっかけです。

ロサンゼルスに3日ほどいて、次はグランドキャニオンに行くというときに、着ているもの以外すべてなくなってしまったんです。その中でいちばん喪失感が大きかったのがフィルムでした。当時はフィルムカメラを使っていて、旅の様子を写したフィルムが3日分、なくなってしまいました。写真の残っていないその3日間は、 その後の写真が残っている期間と比べて、 思い出そうとしてもあまり鮮明に思い出せないんです。

行動経済学者のダニエル・カーネマンがひとつの問いかけをしています。

「休暇中の旅の終わりに、すべての記憶がなくなり、写真もなくなります。それでも旅に行きますか?」

旅行に行った事実は残るけれど、記憶には残らないし、写真もないと。

── 旅行する理由がなくなっちゃう気がします。

安藤:ですよね。記憶を作っていくということが人間にとって重要な営みである一方で、人の記憶というのはすごく曖昧にできていて、いかようにでも好きに変わってしまいます。写真にクリアな形で自分の経験を残していくことは、非常に重要なことだとそのとき気付きました。過去と記憶をマッピングする・ピン止めするのが写真なのかな、と思っています。

コンデジとともに始まったカメラ遍歴

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Photo: 吉竹遼

── その後はどうなったのですか?

安藤:そんなこともあって、写真を撮るということにすごく興味が湧きました。デジカメが市場に普及し始めたころで、SONYのCyber-shot DSC-P1DSC-U30といったデジカメ黎明期のコンデジを使っていました。三洋のXacti(ザクティ)という小さなアクションカムを使って、当時ハマっていたスノーボードやサーフィンでトリックなどに取り組んでいる姿を撮ったりもしていました。RicohのGR Digitalにもハマってですね、単焦点レンズの良さを知りました。

また、iPhoneが出てしばらくしてから、デジタル一眼レフを初めて買いました。NikonのD5100というカメラです。当時私は個人デベロッパーとしてアプリを作ってApp Storeで販売していたのですが、より多くの人に認知してもらうために個人であってもプロモーションをする必要がありました。ムービーを使ってプロダクトをプロモーションするという動きがアメリカで始まっていた頃だったので、自分も一眼でムービーを作ってプロモーションしてみました。

安藤:ムービー によって多くの注目を集めることができ 、私が作ったアプリはApp Storeの総合ランキング1位をとることができました。日本の企業でも動画を内製するといった取り組みが始まっていて、そのアドバイザリーのご依頼をいただいたり、映像制作のお手伝いさせていただくこともありました。これは非常に大きな経験でした。

Leica M10-Pを手にして「なんてものを買ってしまったんだろう」

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Photo: 吉竹遼

── カメラライフの中でいちばん印象に残っているカメラを教えてください。

安藤:このLeica M10-Pですね。日常生活の中では今、これをいちばん使っています。私は長い間Leica(ライカ)に憧れていて「死ぬ前に1回使いたい」というくらいの気持ちだったんです。でも去年、「Leicaを使うとしたら今なのではないか」、そう強く思 うようになり 、買ってしまいました。

── 実際使ってみてどんな風に感じましたか?

安藤:とても高価だったので、届いた瞬間「なんてものを買ってしまったんだろう」と(笑)。それでも、数枚撮ってみたらその世界観にすぐに引き込まれました。すべてのカメラにおいてそうだと思いますが、カメラが撮影して写真ができるプロセスの間にはいろんなチューニングが施されていて、そこにはクラフトマンシップが大きく影響しています。そうして実現されているLeicaの世界観や美意識に強く惹かれました。

── どうして「Leicaを使うとしたら今」と思われたのですか?

安藤コンピューテーショナルフォトグラフィー を生かしたPixel 3などをはじめとするスマートフォンのカメラは進化が著しく、小さいカメラセンサーが撮像した何枚もの画像をソフトウェアが合成して高画質な写真を撮れるようになってきています。ガラスのレンズを使い撮像する、言ってみれば“クラシカルなカメラ”に対して、コンピューテーショナルフォトグラフィーがすごい勢いで迫っていて、今はカメラにとっての過渡期のような気がしています。

技術の進展の速さの問題でカメラのあり方そのものが置き換わるのは明らかだと。そんなことを強く思ったのが去年で、Leicaを使うなら今しかないのではないか。またUXデザイナーという仕事柄、企業のブランディングの支援をさせていただくケースも多いのですが、100年ユーザーに愛され続けているLeicaというブランドを実際に使ってみることで学びたかったというのも大きな理由です。

── ということは、レンズとセンサーによって実現されてきたメーカーの世界観や意識が、今後はコンピューテショナルフォトグラフィーによって技術的に別の形で実現されていく。その流れに興味をもったということにもなりますか?

安藤:はい、そうです。コンピューテーショナルフォトグラフィー関連で今興味があるのがLightという16眼カメラです(編注:撮影後に被写界深度を変えられるなど、コンピューテーショナルフォトグラフィーが取り入れられている)。このLightには 実はLeicaも出資しています。

またHuaweiからLeicaの名を冠したスマートフォンが出ていますが、LeicaがHuaweiに何か部品を供給しているわけではないそうです。両社で共同開発をし、おそらくはLeicaのエンジニアによるチューニングが行なわれていて、コンピューテーショナルフォトグラフィーの分野においてもLeicaが過去に蓄積してきた知見や技術が時代を超えて役立てられているというのは、すごくおもしろいです。

ハードに使うα6500、Mavic AirやOsmo Pocketも持ち歩く

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Photo: 吉竹遼

── 最近いちばん使っているカメラを教えてください。

安藤:いちばん使っているのはSONY α6500です。山登りなどに持っていくのですが、撮りたいものがあったときにすぐに使いたいので、 山でもバックパックには入れず肩のストラップに装着しています。結講ぶつけたりしていて、それなりにハードに使っています。このサイズでこの軽量さでこの画質、というのがいいですね。

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Photo: 吉竹遼

安藤:DJIのドローン Mavic Airと最近出たばかりのハンディカムコーダー DJI Osmo Pocketも山登りでは常に持ち歩いています。

DJIに「カメラ」を出してほしい

── 新たに買いたい/気になっているカメラがあれば教えてください。

安藤:製品になっているものにはまだこれっていうのがないですね。でも気になっている“要素”はありますね。

以前、撮ったあとからフォーカスを決められるLytro(ライトロ)というカメラがKickstarterで売っていました。メーカーはその後解散してGoogleに吸収され、おそらく今に至ります。iPhoneやPixelで撮ったあとからフォーカスをいじれますが、まだまだユーザーがカメラ側に合わせているような状況なので、 技術的にもう少し進化して自由度が上がると一気に実用的になるんじゃないかと思っています。

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Photo: 吉竹遼

安藤:また、DJIがスウェーデンの中判カメラメーカー Hasselblad(ハッセルブラッド)を2017年に買収し、DJIの一部のドローンにハッセルブラッドのカメラが搭載されていますが、個人的な期待としてはカメラを出さないかなぁと。

── 写真用のカメラでしょうか?

安藤:一眼ですかね。最近出たOsmo Pocket、これはもう触りました?

── はい、触っています。使いやすくておもしろい製品ですよね。

安藤:私は初代Osmoを持っていて、Osmo Mobileも使ったんですが、Osmo Pocketが革命的に凄いのは使うまでのリードタイムが圧倒的に短縮されていることです。初代Osmoは撮ろうと思ってから実際に撮るまでに5分くらいかかるんですね。カバンから出す→ケースから出す→さらにiPhoneをくっつけて…と。そうなると、取り出そうかまず迷うわけです。 Osmo Pocketは取り出して2秒くらいで起動して撮れてしまう。電源をオフにするとすぐ収納できる形態に変化する点も本当によくできています。DJIがユーザー体験を強く意識して、使い始めと使い終わりを改善してくれたのはすごく嬉しいですね。

── そういったアプローチを一眼にも持ちこんだらおもしろくなる、という期待感があるということでしょうか?

安藤: もしそうなるなら、「一眼という形が正しいか」もわかりませんよね。まだ飛ばそうと思ってから5分くらいでかかってしまうドローンについても、Osmoと同じように、すぐに飛ばせるように進化するのではないかという期待がありますね。

私はよくネットで映像や写真を自分の経験をシェアするために発信しているのですが、写真や映像はコミュニケーションの手段と捉えています。今後テクノロジーが進むことによってそれがより手軽に、リアルにシェアできるようになっていくのが楽しみです。


撮るという体験を楽しみ、その体験を実現するテクノロジーに期待を馳せ、これまでも、これからもカメラを楽しんでいく。冷静に、でも熱く。それが安藤剛さんのカメラの楽しみ方なのかもしれません。

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