ヘイトと暴言に満ちたGoogle社員用匿名掲示板

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ヘイトと暴言に満ちたGoogle社員用匿名掲示板
Image: Elena Scotti/Shutterstock

匿名は常に諸刃の剣。

今年の一月、Google(グーグル)のシステム信頼性エンジニアであるLiz Fong-Jones氏が、50万ドル分の持ち株を放棄し、11年間勤務したGoogleを退社してスタートアップ企業のHoneycomb.ioに転職すると発表しました。包括性や多様性を強く訴えて来た彼女は、Googleプロダクトや労働環境の倫理に関し、Google経営陣への不満を退社理由としています。特定の出来事は明記しませんでしたが、Googleでは最近、セクハラ事件の扱いやペンタゴン(アメリカ国防総省)のAIドローンプログラムとの関わりで社員によるストライキが発生しました。

差別と偏見に満ちたコメント

匿名掲示板アプリのBlind(ブラインド)にはGoogle社員専用のプライベートチャンネルがあり、そこでは彼女の同僚が退社を“祝福”していました。以下の抜粋は、安全のために匿名を希望しているGoogle社員から米Gizmodoが受け取った何百というコメントの一部です。Fong-Jones氏の退社に関するコメントは、彼女がトランスジェンダーで有色人種であることに対する差別と偏見に満ちています。

「今週末最高のニュースだね。彼女のシンパはみんな出て行けば良いのに」

「クソみたいな人間だな」

「悪性腫瘍がやっと切除された!」

「Googleには嬉しい瞬間だね」

「オニーサン、ヤスクシトクヨってか?タダでもいらね」

「そもそも彼女はGoogleで何やってたの? SJW(ソーシャル・ジャスティス・ウォーリアー、ダイバーシティなど社会進歩的な考え方を広める人を軽蔑的に指す言葉)のリーダー?」

「そんな感じ。いなくなってせいせいした」

「Googleが人種差別やマイクロ・アグレッション(自覚なき差別)、偏屈な考えの温床だというなら、お前に安全な場所なんてどこにもないよ。お前は被害者意識が永遠に抜けない。メンタルケアが必要なんだ」

「ずっと思ってたけど、Lizって何? 彼女はトランスジェンダー? 男にしか見えないけど」

「ああ、男だったんだよ」

コメントの中には、ハラスメントやドクシング(個人情報を漏洩させること)のためのサイトに投稿された、彼女に対するさらなる攻撃が書かれたスレッドのリンクが貼られていました(現在ではBlindに投稿された彼女に関するコメントの殆どは削除されています)。

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Blindのスクリーンショット
Image: Gizmodo US
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Blindのスクリーンショット
Image: Gizmodo US

これらの暴言に対し、2月1日まで社員だったFong-Jones氏は米Gizmodoに対して以下のようにコメントしています。

「こんな人たちが私の同僚にいて、明らかに社内コミュニケーション規則に反する暴言を堂々としているのは、正直恐怖です。批判は受け止めることができますが、批判と私のジェンダーに対するヘイトはまったく別です」

匿名掲示板に集まる悪意

韓国で2014年にローンチされ、米国ではその翌年にリリースされたBlindは大企業(主にテック企業)が利用でき、社員用のメールアドレスでのみ作れるアカウントを通じて、プライベートで匿名な掲示板にアクセスできます。また、Blindには他社の社員も見ることのできる、パブリックで検索可能な掲示板も存在します。Blindによれば、データベースにはメールアドレスを保存しておらず、投稿した人間が誰かを調べられるデータもトラッキングしていないそうです。同社の企業理念によると、「職場の人間すべてに力を与え」、「黙殺されてきた意見に声を与えるために」このプラットフォームがデザインされたとのこと。しかし、年を経るごとに掲示板には悪意が集まり、社員が孤独や危険を感じるようになってきました。

(Blindの匿名メッセージを読む際に注意しなければならないのは、正社員だけでなく契約社員でも社員用メールアドレスを貰って書いていることがあり、退社した人間も掲示板に書き込むことができる点です)

Blindによると現在ユーザーは二百万人ほどで、49,200人がMicrosoft(マイクロソフト)、34,800人がAmazon(アマゾン)、13,500人がGoogle、そして10,500人がFacebook(フェイスブック)からだそうです。

別の女性も匿名掲示板でハラスメントを受ける

Fong Jones氏が退社を発表した2週間後、Facebookでエンジニアリングマネージャを勤めていたSophie Alpert氏も、同僚からのハラスメントや社内の多様性の欠如を理由に退社を発表したとCNBCが報じています。彼女は理由を公にしませんでしたが、Facebookの社内連絡プラットフォームに書いたところ拡散しました。その中で、彼女はBlindでハラスメントを受けたと発言しているそうです。

「Facebookは多くの人にとって素晴らしい場所ですが、私には合っていません。私は、もっと多様性や包括性に力を入れている場所で時間を過ごしたい。白人の特権が存在しないなんてWorkplaceに書いたら問題になるような場所、自社の重役には白人男性が多すぎると発言しても、Blindで同僚からハラスメントを受けたり、私の性別を持ち出し、クビにすべきだなんて言われないような場所がいいです」

Alpert氏は米Gizmodoにはコメントを返しませんでした。

FacebookのスポークスパーソンであるAndy Harrison氏はこうコメントしています。

私たちはいかなる差別も許容しません。社内には社員同士のコミュニケーションや接し方に明確な規則があります。社員が嫌な体験をするのは、社員にとってもFacebookにとっても問題です。苦情はすべて調査しますが、今回の場合、問題のコメントは他社のサービスに投稿されたので、誰が投稿したかを突き止められませんでした。

Blindのスポークスパーソン、Kyle McCarthy氏は、 Alpert氏に関するBlindのプライベートチャンネルについては言及を避けましたが、「こういったことが起きたのは非常に残念です。しかし、我々はそういったことがもう起きないように努力していますし、他のソーシャルネットワークサービスでも似たような経験があったのではないでしょうか」と発言しています。

下卑たコメントも多数…

Alpert氏の一件が報道されたあと、Fong-Jones氏も彼女自身の体験をツイートしました。「この件に関してもっとハッキリと批判したい。私も@sophiebits@teamblindappでトランスフォビア/人種差別的な暴言や理屈、脅迫を受けました。でも、Blindはそれに対して何もしませんでした」。

米Gizmodoが入手したコメントはすべて過去数カ月以内の物ですが、上記の人種的、性別的な差別発言だけでなく、Googleの多様性への取り組みを批判する意見もありました。先ほども書いた通り、投稿したのが現役の社員かどうかを調べる術はありません。しかし総じて言えるのは、コメントしている人たちは社内でしか知り得ない情報を知っており、自身の職業について当たり障りのないことをパブリックで書き込んでもいます。

ユーザーの何人かは次のように嘆いています。

「オフィスの壁中にSJWのプロパガンダが飾ってあり、展示されてる美術品もすべてがSJWのプロパガンダを推進している。GoogleはSJWのプロパガンダに溺れている」

特にそういったユーザーは、Black Lives Matter(黒人の命が不平等に扱われていることを訴えた運動)のシャツや、男女両方のトイレにタンポンが用意されたことなどを批判しています。

「やりたいことは分かるけど…でもなんでそんなにタンポンが必要なんだ? ローションとかミントとか、でなきゃピーナッツバターチョコとか、他にお金をかけるべきものが他にあるんじゃないか?」

他にも、ほぼ間違いなくGoogle社員だと思われるユーザーたちが、セクハラ行為を擁護しているコメントも見受けられました。Androidの父、アンディ・ルービン氏にGoogleが9千万ドルを支払い、彼のセクハラ疑惑を隠していたことを報じたNew York Times(NYT)の記事を誰かが投稿すると、「合意の上か強制かなんて、どうやってGoogleが確かめるんだ?合意の上なら問題ないだろ」とコメントし、「吐き出すか飲み込むか?」「吐き出すか飲み込むかうがいするか」と下卑た返信が並びました。

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Blindのスクリーンショット
Screenshot: Gizmodo (Blind)

さらに、他のユーザーがルービン氏の行為に対して「腹が立つ」とコメントすれば、「お前最悪。出てけ。誰もお前なんか惜しまないよ」と返信がつきました、

別のユーザーは、誰かがNYTに情報を垂れ込んだのではと提案し、「欲に目が眩んで、NYTにもっと金をせびったに違いない」と発言しました。ちなみに、NYTは情報にお金を払いません。

またさらに他のユーザーは、「不倫とはいえ関係を持ってるんだから、口淫を強制をさせたっておかしいだろ? でたらめに聞こえるね」とコメントしています。

「自由に集まって意見を交換できる場所」のなれの果て

Blindが出てまだ間もない頃は、ハラスメントや待遇について自由に集まって意見を交換できる場所だと評判でした。実際、このアプリを通じて従業員が力を得た例もあります。2014年、大韓航空の従業員達はBlindを使い、副社長が難癖をつけて飛行機を引き返させた伝説の「ナッツ・リターン事件」への対応を匿名で議論しました。また、2017年にはSusan Fowler氏がUber内部のセクハラや腐敗した企業体質を告発し、多くの社員がBlind内で同じような体験談を話し合いました。それに対してUberはBlindの使用を禁止しましたが、Business Insiderが言論統制だと報じたことで中止しました。

Blindの多くのスレッドは待遇や社内規定、面接などについて語っており、同時に政治スコッチウィスキー隣人のうるさい性行為など仕事と無関係のものもあります。

しかし大企業、特にテック企業の間でBlindの使用が普及するにつれ、上記のようなハラスメント行為が目立つようになりました。

残念ながら、匿名のフォーラムはどんなものでもほぼ必ずハラスメントや有害な環境を作り出してしまいます。しかし、荒らし好きの人間が自由に参加できる公共の掲示板と、構成しているユーザーの殆どが同僚である掲示板では大きく違います。特に、書き込んでいる人間が自分にとって脅威と感じるようなことを書いていたら尚更です。

多様性を批判する社内メモがGoogle内で論議を呼んだ際、Blindにはメモに賛成、あるいは反対する声が投稿されました。メモを書いたJames Damore氏が解雇されると、BlindはGoogleの決定に関して各企業にアンケートを行い、Googleで働いている(いた)と思われる441人の回答者のうち約56パーセントがDamore氏の解雇に反対と回答しました。

ガイドラインはあるが…

Googleは米Gizmodoの質問に対し返答しませんでしたが、BlindのスポークスパーソンのMcCarthy氏は、同社のコンテンツ管理について語ってくれました。彼によると、すべてのユーザーがアクセスできるパブリックフォーラムでは独自に積極的に投稿をチェックしたり、ユーザーによって報告された投稿を調査し、コミュニティガイドラインに反している場合は削除します。

ガイドラインには、ハラスメントとは侮辱的、屈辱的、あるいは有害なコンテンツや、「合意なく性の対象とする」または「性的ないじめ」を含むコンテンツだと定義しています。規則としては、「ハラスメントが度を超えて悪質な攻撃となった場合は報告されるべき」だとしていますが、「ちょっと煩わしい程度なら無視すべき」だとしています。また、ヘイトスピーチや差別発言は禁止されており、定義としては、人種、国籍、宗教、障がい、性別、年齢、軍歴、性自認などを元に特定の人物やグループに対する攻撃を促すような投稿とされています。

プライベートチャンネルでは、ユーザーによる報告に頼ることになります。報告を受けたモデレータが投稿を確認して削除するかどうかを判断するわけです。また、同じコメントが複数の報告を受けた場合は自動的に削除されます(具体的に何回報告を受けたら削除されるのかは明かしませんでした)。

McCarthy氏は次のように語ります。

「Blindでいじめに遭って欲しくはないです。このアプリは特定の人を攻撃したり、他人を虐めるためのものではありません。それではコミュニティを維持していくのは無理です。職場で起こっていることにスポットライトを当てられる場であって欲しいと思います」

特定のケースに関して話すことはしませんでしたが、GoogleがBlindに対して削除要請をした可能性を問われると、BlindがGoogleから連絡を受けたとは思わないと発言しました。「コメントが削除されていたとしたら、複数報告による自動削除か、単体報告にモデレータが対応したのでしょう」だそうです。

また、システムは差別的な単語などに自動で反応します。McCarthy氏は具体的にどんな言葉かは言いませんでしたが、「LGBTQコミュニティにとって有害な言葉」も多数含まれているとのこと。

Googleを離れたFong-Jones氏は、Blindの投稿が他のGoogle社員に与える影響について懸念しています。

「昔は学校のロッカーに首吊りの縄が落書きされるなんてことがありましたが、それの現代版だと思います。ジェンダー的、あるいは人種的マイノリティの人間にとって、同僚が自分のことをそういった形で話し合っていると知るのは恐ろしいことです。それによって職場環境が劣悪になり、仕事の効率も大きく落ちてしまいます」

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