MicrosoftのHoloLens 2発表イベントに込められた伏線を読み解く

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  • author Sam Rutherford - Gizmodo US
  • [原文]
  • Kaori Myatt
MicrosoftのHoloLens 2発表イベントに込められた伏線を読み解く

3Dの仮想世界でついにどこでもドアが?

MWCに伴う発表イベントで、Microsoft(マイクロソフト)が新型MRヘッドセット「HoloLens 2」を発表。3Dの仮想世界で遠隔地の人たちが同時に作業できるなんて、「まるでどこでもドア!」と思ってしまったのは私だけでしょうか。

そしてどうもこのイベントには発表で見たこと以上のメッセージが隠されていたようです。米GizmodoのSam Rutherford記者のするどい観察眼で見たポイントをご覧ください。


MicrosoftがHoloLensを4年前にリリースしたとき、産業が変わるとかなんとか騒がれたものでした。でも、ホントに産業は変わったでしょうか? HoloLensは実質的には一般購入できず、その用途は一部のニッチなエンタープライズあるいは軍の潜在利用に限定されていましたし。僕にいわせれば、HoloLensは未来が明るいテクノロジーであり、いつもスゴイ先端技術としての存在感を漂わせてましたし、それはそれでスゴイんですが、どうもいまひとつふたつ、何かが足りなかったんですよね。

HoloLens 2ではそれを補っているようですし、Microsoftは時間をかけて修正を施し、近未来のエンタープライズ用ツールとしてツールをじっくり育ててきています。 そして、どうも未来への伏線として、エンタープライズの外にいる僕たちに向けたメッセージがこのイベントで見え隠れしているんです。

「イマージョン」「快適さ」「価値」を強化

まず、イベントで伝えられたメッセージにはクリアなものもありましたよね。HoloLens 2はMicrosoftが野望をもって開発してきたMR(複合現実)ヘッドセットです。これはMicrosoftに与えられた第二のチャンスでした。HoloLens 2で、Microsoftは第一世代のHololensで「没入感」「快適さ」「価値」について浴びた批判に対する答えを出してきました。

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Screenshot: Microsoft

イマージョンについては、Microsoftは視野角1度につき「1度あたり47ピクセル」を損なうことなくHoloLens 2の視野を2倍に広げているとしています。 (これは人間の目で差がわかる限界値60ppdに近づくものであります) それだけでなく、HoloLens 2にはアイトラッキングと虹彩スキャンがついたので、装着するだけで「ログイン」することができるのです。ヘッドセットをつけると視線をトラッキングするため何を見ているのかが識別できます。

帽子のように快適に

HoloLens 2のイマージョン能力の向上点は、全関節型のハンドトラッキングです。これにより、本物のようにホログラムとのインタラクションが可能となるのです。全体の操作性を向上させるために、HoloLens 2ではマイク性能も高いものにしています。これによりこちらから動いて取りに行くことなく、遠くにあるアプリやオブジェクトを呼び寄せることができるようになっています。

快適さという面でいえば、MicrosoftはHoloLens 2を作るために、いろんな人種のさまざまな人々の頭をスキャンしてほとんどの人が快適だと思える形状を計算しています。Microsoftは、HoloLens 2をふだん使う帽子のように快適に使ってもらえると強調しています。

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Screenshot: Microsoft

HoloLens 2はプラスチックとカーボン繊維製。ヘッドセットはアジャストすることなく自然に頭にフィットするとしています。発表では、MicrosoftはHoloLens 2 が旧製品と比較して3倍快適になったとも強調していますね。

産業向けのソフトウェアパッケージスイートも開発

ただし、HoloLens 2の課題は、潜在的な顧客に魅力的な価格をアピールできるかどうかということでしょう。現在、Microsoftによれば、ヘッドセットをまともに使えるようにするためには、まず3~6カ月かけてソフトウェアを開発する必要があるとしています。 過去4年間でHoloLensを導入してきた会社の経験からフィードバックを得て、Microsoftは医療、建築、その他の産業向けのソフトウェアパッケージスイートも開発してきたようです。

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Screenshot: Microsoft

テレプレゼンスで臨場感を得る

HoloLens 2は、その場にいるような臨場感である「テレプレゼンス」を提供することにより、価値を発揮します。世界中の作業員が同じ場所にいるかのような仮想環境を築くことができるわけです。 MWCのMicrosoftプレスイベントではアメリカの玩具メーカーMattel(マテル)の事例で開発中の玩具を3Dで表示させる様子を再現していましたよね。仮想環境で実際にはそこにいない遠隔地にいる人と一緒にモデルを観察して、デザインを向上させることができるわけです。Microsoftは、物体の名前を言うだけでHoloLens 2がその物体のホログラムを作ることが可能としており、それらのオブジェクトはグループ化したり、共有したり、整理することができるらしいですよ。

以前は個別のビジネスニーズに合わせてヘッドセットをカスタマイズせざるを得なかったのですが、カスタマイゼーションスイートのリリースにより、HoloLens 2のカスタマイズはより簡単にできるようになっています。建設分野では、Trimble(トリンブル)の事例に触れ、HoloLens 2のヘッドセットには安全規制に準拠した現場で安全に使えるヘルメットを組み込んでいることを紹介しています。

もちろんMicrosoftはAzureプラットフォームでクラウドに大きな投資をしてきました。そのためHoloLens 2はクラウドサーバーから簡単にホログラムを構築したり共有したりできます。

オープンエコシステムの真意

しかし、イベントの最後で、Microsoftはエンタープライズ顧客を不安にさせるような、「オープンなエコシステム」などという奇妙なことを口走っています。MicrosoftはHoloLens 2ソフトウェアの仕組みや働きを説明するなかで、HoloLensのアプリストアはあらゆるデベロッパーにオープンで、オープンなウェブブラウジングが可能で、どんなレベルのユーザーでもデベロッパーでもてアクセスできるオープンプラットフォームをベースにするとしています。

クロスプラットフォームで有名なあの『フォートナイト』を制作したEpic Games(エピックゲーム)は、HoloLens 2のアプリケーションプラットフォームがオープンであることを歓迎するとし、Epic Gamesもオープンエコシステムに積極的になるだろうとしています。

さて、「オープンエコシステム」って一体なんでしょう。どういう意味なのでしょうか。そもそも、オープンエコシステムはHoloLens 2のようなエンタープライズ向けプラットフォームのためのものではありませんし、エンタープライズ関係に一般のゲーム開発者は関係ありません。それでは「オープンエコシステム」は誰のためのものなのでしょうか?

それは…僕たち、一般の人たちのためのものなのでは…? たぶん、いつの日か、HoloLensはエンタープライズの枠を飛び出して、私たちの自宅に飛び込んでくるのではないでしょうか。「オープンエコシステム」はその伏線なのではないでしょうか。ただし、それはそんなに近い未来のことではないと思われますが…。

Microsoftの第二世代MRヘッドセットは一括払いの3000ドル(約39万円)か、月々125ドル(約1万4000円)のバンドルを利用できます。 第一世代のHoloLensから2000ドル(約22万円)も値下げしていますね。この値段では一般家庭の手はなかなか届かないでしょう。

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