ポケモンはエモ。
書き出しから変なこと言ってすみませんが、僕は生活の要所要所にエモな出来ごとがないとやって行けない人です。エモーショナル(情緒的)の「エモ」ですね。たとえば、夕日が綺麗とか、いつもと違う道を通ってみるとか、そういうのがエモです。
みなさん、最近エモ足りてますか? 僕は最近、足りていません。エモ不足です。なんですが、きのう体験したポケモンのイベントがとてもエモかった。
MRグラス越しにポケモンの世界を体験できるのですよ。すごくない!?
TOKYO.#PokémonGO#AR展望台#MediaAmbitionTokyopic.twitter.com/v7HdhxMuxz
— 川島 優志 masa kawashima (@mask303) February 21, 2019
リアルイベント、六本木で開催
2月23日(土)から〜3月3日(日)まで、東京・六本木ヒルズで、Media Ambition Tokyo(MAT)2019が開催されます。MATは2013年から毎年行なわれているアートイベントで、年に一度、この東京にメディアアート作品が集います。
その中で今年、目玉になっているのが、僕が体験してきたNianticの作品『Pokémon GO AR展望台』。Pokémon GOの世界観を現実空間に落とし込む、Nianticと株式会社ポケモン、ソフトバンクが共同で制作した、体験型の作品です。
なぜポケモンがアートの祭典に?








そもそもメディアアートとは、アート表現に新しいテクノロジーを用いた作品のこと(解釈はさまざまですが)。なかでもMATは、他のメディアアート系のイベントと比べて、アートの側面よりもテクノロジーに比重が置かれていることが特徴です。
「今はできないけど、将来こうなるといいよね(こうならなければいいよね)」と未来のテックをプレゼンテーションする作品が多く集まっています。あえて難しく言えば、“とある文脈”のなかに存在するアートではなく、テクノロジーを使って未来の社会を提案する作品群です。
そして、Pokémon GOの使命は、ポケモンの世界をAR技術で再現することです。最終的には、ゲームという体(てい)を超えて、ポケモンの世界が現実になればいいよね。って開発陣は本気で思っているわけです。だから、ゲームを開発するNianticが、MATの入口にほど近い、とても目立つ場所に展示スペースを構えるのも、うんうん。頷けます。未来のあり方を提案しているわけですからね。
語彙力が欠如するね

『Pokémon GO AR展望台』は、体験者がMicrosoftのMRグラス「HoloLens」を頭に装着し、会場に設けられた10~15畳くらいのスペースを自由に歩きます。

HoloLensは透過型のレンズを搭載します。このグラス越しに、セットの草むらや、窓の外を見ると、Pokémon GOの世界が重ね合わさった空間が広がっているわけです。
ヘッドマウント型のデバイスということもあって、見たものを画像で伝えられないのが悲しいのですが、もちろんやってきました。


あのー、本当にそこにピカチュウがいるんですよね。見上げるとアローラナッシーがいるんですよ!(語彙力)。
見つめると鳴いてくれるし、なんか常にあざとく動いている。体験する前は、「3Dモデリングされたポケモンが単純に見れるだけでしょ?」と思っていたのですが、ポケモンたちは想像以上に生きていました。
会場の六本木ヒルズ展望台は、六本木ヒルズの上層にあたる52階。そこから見える景色は言わずもがな素敵ですが、この作品では、ちゃんとPokemon GOの世界の「ジム」や「ポケストップ」まで再現されています。ジムやポケストップのオブジェクトが、窓のから見える地上の建物に重ねられているんです(最初の動画がソレ)。

あー! 夜景を構成する一部でしかなかった建物が、ジムやポケストップのオブジェクトを重ねるだけで、意味を持ち始める! これはエモい! エモい!
僕は足元に出てくるポケモンたちよりも、窓から見えるジムやポケストップに大興奮でした。
そもそもPokémon GOが面白い理由って、今まで通りすぎていたような道に何か立ち止まらせてくれるきっかけを与えることじゃないですか。現実の景色にジムやポケストップを重ね合わせるのは、その体験と同じで、景色の一部でしかないその建物を注目するきっかけになるんですよね。
テクノロジーによって、これまで非現実だった存在が、実態ではないけど要素として現実に介入してきたとき、それは非常にエモいのです。今回でいうと、そこにポケストップの実物はないけど、与える結果としてはポケストップが実物としてあってもなくても同じだよねってこと。
このお話については、誰も知らない謎のポケモン「メルタン」がPokémon GOに出現したときに深めに書いたので、ぜひ読んでみてください。
エモくなれるのは、本気で実現しようとしているから?

今回の『Pokémon GO AR展望台』は、スペースの端に設けられたマーカーを装着前に読み込み、このたった1つのマーカーを起点に、HoloLensの内蔵センサーで「今どこに立っているのか」計算しています。
仕組みとしては、会場である六本木ヒルズ展望台の3Dデータと現実の空間を同期させる、今回に合わせて作られたシステムなので、実際の『Pokémon GO』にそのまま実装できるものではありません。窓から見えるジムやポケストップも、実際のゲームの位置と同期しているわけではないそうです。
そう。言ってしまえばコンセプトなわけです。作り手が描く、「こういう世界になればいいよねー」という夢物語。でも、なんでここまで現実味をもってエモくなれたのか。
それは開発陣が、本気で実現できると思っているからじゃないかな? 2018年の夏、Nianticは「リアルワールド・プラットフォーム」というARのプラットフォームを開発していることを発表しました。
ARのプラットフォームといえば、Appleの「ARKit」や、Googleの「ARCore」が有名ですが、ARKitやARCoreが「現実空間に対して、いかに自然にオブジェクトを置くか」みたいな、視覚の体験に注力しているのに対して、リアルワールド・プラットフォームは、大勢のプレイヤーで1つの空間を共有する体験に注力したプラットフォームです。
つまり、同じ場所に行けば全員が同じポケモンと出会えるとか、そういう視覚ではない体験。リアルワールド・プラットフォームは、人間同士のグルーヴ感みたいな、目には見えない要素をARに持ち込もうとしています。
猫や犬みたいに、その場にポケモンが居て、それを複数人で「可愛い」とか言いながら共有できる。それが実物であっても、実物でなくても、僕らに与える結果は変わらないわけで。今回の展示はPokémon GOあるいはNianticが、ほんとにやりたいARの世界観なんだなと思いました。
実際のゲームで実装するにはまだまだ、時間はかかりそうですが、またポケモンの世界に一歩近づいた良い世界を見せてくれました。
2019年2月22日 22:30更新:体験中の動画を追加しました。
Source: Media Ambition Tokyo 2019, Niantic