人はこうしてお酒に酔う! ハエを使った実験で脳内メカニズムがついに解明!?

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人はこうしてお酒に酔う! ハエを使った実験で脳内メカニズムがついに解明!?
Image: nurzee(Pixabay)

お酒に酔うプロセス解明で、二日酔いや依存症を解消できるかもしれません。

皆さま、今年も新年会シーズン、お疲れさまでした。アルコールが入ると気分が上がって、元気が出て、仲間との話も盛り上がります。でも、飲みすぎは禁物。うっかり飲みすぎると酩酊状態になったり、下手をすると命を危険にさらすことも。お酒にはいい面と悪い面がありますが、最新の研究で、人がお酒に酔うまでのメカニズムが解明されたようです。この研究で人間の代わりに実験台になってくれたのは、ミバエというハエの一種です。

お酒に酔うのは、神経細胞を活性化させる酵素のせい

昨年12月、カリフォルニアとフロリダにある非営利の医療研究施設「スクリプス研究所」の科学者チームは、ハエを使った「酒酔い」に関する研究を、科学誌「Journal of Molecular Biology」に掲載しました。

この研究チームはすでに、アルコールが麻酔と同じような眠気を脳に与える、という理論を発表しています。そこで今回の研究では(ちょっとむずかしい話ですが)アルコールを飲んた時や鎮静状態にある時に、体内の神経細胞内の分子経路がどのように活性化するか、を掘り下げることにしました。これに関係する重要な要素が、生物の体内に存在するPLD2(ホスホリパーゼD2)という酵素の一種です。PLD2は、神経細胞の膜や表面にある脂肪とエタノールを結合させるはたらきがあると言われています。

今回、そのメカニズムを知るための実験台に選ばれたのが、ミバエというハエの一種です。ハエは、人間と同じようにお酒を飲むと調整能力を失い、酔っぱらうことで知られています。Molecular Medicine at Scripps分子医学科の准教授、スコット・ハンセン氏は「彼らは人と同じような行動をします」と発表しています。

ハエを酔っぱらわせる実験で、謎を解く!

実験では、ハエを小さなチューブに入れ、アルコールに浸した餌を与えます。そして酔っぱらったハエの脳を調べると、その脳内ではPLD2がアルコールを通して、神経細胞内部に連鎖反応を引き起こしていることがわかりました。その一連の流れを簡単に説明すると以下のとおり:

① アルコールによってPLD2酵素が活性化

② 連鎖反応でPLD2がアルコールをPEtOH(ホスファチジルエタノール)などの代謝物質に分解。

③ 蓄積したPEtOHが神経細胞を活性化させ、脳がハイパーアクティブ(超活発)状態に。

「ハイパーアクティブ状態になると、ハエが飛び回るようになります。それが酔っぱらった状態です」とハンセン氏は説明します。さらにハンセン氏の研究チームは、脳細胞がPLD2を認識しないよう遺伝子操作したハエを使った実験も行ないました。これらのハエは、他のハエと違って、アルコールを与えても全く酔わなかったので、やはり、酒を飲んだ後の「酔い」にPLD2が大きく関連していることがわかったのです。

近い将来、二日酔いや依存症の心配もなくなる?

これまでは、アルコールが直接脳細胞に影響を与えると考えられてきたので、今回の発見は非常に興味深い、と著者は言います。正直、何がそんなに違うのか…という気もしますが、原因がはっきりすれば、対策もとれるということです。ひどい二日酔いや、急性アルコール中毒など、お酒には人に害を与える一面もあります。今回、PLD2が間接的に神経に影響を与えるのがわかったことで、PLD2の作用を止めたり、安全に相互作用する物質を作るなど、何か方法が見つかれば、アルコール依存症などの有効な治療法につながるかもしれません。

「今回の実験では、アルコール中毒について、分子レベルで新たな考え方が生まれました」とハンセン氏は言います。「ほとんどの科学者は、アルコールが脳に直接影響を与えると考えてきました。しかし、ハエの体内の酵素をブロックする実験から、これが誤りだったことがわかりました」。

今回はミバエが実験台になってくれましたが、もちろん脳の構造は人間とだいぶ違います。ですから、人が酔っぱらうメカニズムとPLD2の関連性を解明するには、もっといろいろな研究が必要でしょう。ハンセン氏の研究グループは今後、アルコールによる昏睡などの悪影響に、PLD2がどのように関係しているのか、さらに研究を続けるということです。

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